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セルフプレジャーって何? オナニーのやりすぎは体に悪いって本当?

宋美玄(産婦人科医・医学博士)

耳にしたことはある言葉、「セルフプレジャー」。そもそも何のことなのでしょうか? 産婦人科医・医学博士の宋美玄先生にセルフプレジャーとは何か、得られる効果について伺ってみました。

「セルフプレジャー」という言葉を耳にしたことはありますか。セルフプレジャーとは、オナニー、マスターベーションなどと言い換えられる、いわゆる1人エッチのこと。

セルフプレジャーは男性だけがするものというイメージがあるかもしれませんが、じつは男女問わず行う、ごく普通の行為なのです。

セルフプレジャーって何のこと?

セルフプレジャーとは「1人で行う性的行為」を示す言葉です。1人エッチ、SOLO SEX、オナニー、マスターベーションと呼ばれることもありますが、オナニーやマスターベーションという呼び方には、どこか卑猥なイメージがつきまとうことも。

そこで昨今、それらに代わって使われるようになったのが、この「セルフプレジャー」という言葉です。

セルフプレジャーには、性的快感を得て、自分自身を癒やせるということ以外にも、さまざまなメリットがあるといわれています。今回はそんなセルフプレジャーのメリットや頻度、注意点を紹介していきましょう。

女性がセルフプレジャーするっておかしい?

セルフプレジャーは「男性がするもので、女性はしない」という印象を持っている人も多いのではないでしょうか。

たしかに日本では、「男性には性欲があり、多かれ少なかれセルフプレジャーをするもの」という理解が一般的ですが、女性についても同じように考えている人は少ないでしょう。

ここ最近は少しずつ変化しつつあるとはいえ、女性が自分自身の性欲について友だち同士で話す機会は決して多くありません。それどころか、性的な表現、つまりエロを感じさせるものに触れること自体に、罪悪感を覚えてしまう女性もいるでしょう。

そうした状況から、女性がセルフプレジャーをすることに否定的な感情を持つ人がいるのはしかたのないことです。

しかし、女性がセルフプレジャーをすることは恥ずかしいことや、はしたないことではありません。むしろ、女性も積極的にしたほうがよいのです。なぜなら、セルフプレジャーをすることで、女性器への向き合い方が変化することがあるからです。

自分の性器について知るためのよい機会

日常的に自分で目にすることのできる男性のペニスとは異なり、女性の外性器はわざわざ見ようとしないと見えない位置にあります。加えて、形状も複雑です。

そもそも女性器を見たり、触れたりすることは、タブー視される傾向にあります。そのせいで、自分の性器のことがまったくわかっていないという女性も少なくありません。

けれども「大切な自分の体の一部なのに、よくわかっていない」というのは不思議なことです。女性器は髪や肌、爪などと同様に「自分のもの」として、女性自身が管理するはずのものです。

セルフプレジャーをするときは、自分の性器を見たり、触ったり、どこを触るとどんな反応が生じるのかを自然と観察することになります。定期的にセルフプレジャーを行うことで、自分の体の一部として性器に興味を持つことにつながります。

セルフプレジャーが美容や健康にいいって本当? 得られる効果とは

さて、セルフプレジャーにはそれ以外にも「キレイになれる」「元気になれる」といった美容や健康に良い効果があるといわれることがありますが、本当でしょうか。セルフプレジャーによって得られる主な効果を紹介していきましょう。

(1)自分の感じやすいポイントを把握できる

セルフプレジャーによって自分の性器を刺激すると、感じやすいポイントを把握しやすくなります。どんな場所を、どんな方法で、どれくらいの強さで刺激すると一番気持ちいいのかを知ることは、パートナーとのセックスをよりよいものにし、お互いの満足度を高めるためにも重要なことといえます。

(2)オーガズムに達しやすくなる

オーガズムとは、セックスにおける性反応の絶頂のことです。アダルトコンテンツなどでは、女性が毎回オーガズムに達しているような姿が描かれていることがありますが、女性にとってオーガズムを得ることは、そう簡単ではないことが多いようです。

女性がオーガズムに達するには、性経験の積み重ねが必要な場合が少なくありません。10代からセルフプレジャーを楽しんでいた人のほうがオーガズムに達しやすくなるという報告もあるように、「気持ちよい」という感覚を繰り返し得て、徐々に達しやすくなっていくもの、それが女性にとってのオーガズムだといわれています[*2]。

(3)リラックスや入眠効果を感じられる

セルフプレジャーをするとリラックスでき、よく眠れると考えている女性もいるようです。

じつは、オーガズムに達した後には入眠作用があることが知られています。オーガズムに達すると、さまざまなホルモンの分泌や自律神経の作用などにより、幸福感で心身が満たされ、リラックスした状態になります。その結果、眠くなる(寝付きやすくなる)ことがあるようです。

医学的には、セルフプレジャーをするとキレイになる、元気になるといった効果はみられていません。しかし、1人の時間を充実させ、リラックスしやすくなることは、心身によい影響を与えるでしょう。

セルフプレジャーの平均的な頻度とは

成人男女を対象としたセックスに関する大規模な調査『ジェクス ジャパン・セックスサーベイ2020』によると、女性の約6割がセルフプレジャーの経験があり、週1回以上の頻度でセルフプレジャーをする女性も1割以上います[*1]。

セルフプレジャーの頻度については年代が若いほど高い傾向にあるようで、20代と30代では週1回以上している人が2割を超えています。平均的な頻度についてはわかりませんでしたが、若い女性ではセルフプレジャーへの理解が進み、「5人に1人以上は毎週している」ことが、データから見えてきました[*1]。

セルフプレジャー(オナニー)のやり方

セルフプレジャー(オナニー)とは自分の気持ちの良い部位を刺激すること。基本的にはどう行えばいいのかを解説します。

指でクリトリスやGスポットを刺激する

初心者の場合、指でクリトリスを刺激する方法がやりやすいでしょう。まずは手を洗って清潔にし、クリトリスを上下にさすったり円を描くようにしながらやさしくなでるように触れます。

膣から潤滑液が分泌され、すべりが良くなったら膣内を刺激するのも良いでしょう。こちらも指やセルフプレジャーグッズを使ってやさしく刺激します。

膣に指を入れ、おなか側をぐっと押すと快感が得られることがあります。それはGポットと言い、女性がオーガズムを感じやすい部位だと言われています。

まずはゆっくりと自分が気持ちいいと感じる箇所を探してみると良いでしょう。ただし、初めは強く刺激しすぎないことを心掛けるようにしてください。

セルフプレジャーグッズの種類。初心者にはどのアイテムがおすすめ?

セルフプレジャーグッズも多種多様。どんなアイテムがあるのでしょうか? また、初心者には何がおすすめなのかも併せて紹介します。

ローターとバイブレーターの違い

セルフプレジャーグッズの中でも耳にすることが多いローターとバイブレーター。ローターはクリトリスに当て、振動させて使うことが多いアイテムです。一方でバイブレーターは振動の他に、膣内への挿入を楽しむこともできます。

初心者はローターがおすすめ

初めての場合はローターを使うと良いでしょう。優しい振動でクリトリスを刺激すると快感を得やすいですよ。また、潤滑液で濡れても良いように防水加工されているものを選ぶのがおすすめです。

オナニーをするときの注意点

セルフプレジャーをするときには、頻度や回数ではなく、以下のようなことに注意しながら行いましょう。

(1)手は必ず清潔に

性器を触る手を清潔にしておくことは、非常に重要です。特に女性は尿道口と腟や肛門との距離が近いため、汚い手で性器を触ると大腸菌などの雑菌が尿道や腟に入り込み、膀胱炎や細菌性腟炎になることがあります。

セルフプレジャーは、必ず手を洗って清潔にしてから行いましょう。

(2)セルフプレジャーグッズの衛生面にも注意

セルフプレジャーの際にバイブレーターやローターといったセルフプレジャーグッズを使用する場合、それらもきちんと清潔にしておきましょう。

バイブレーターの場合は、コンドームをかぶせて使用するのも一つの方法です。使い終わったら、よく洗って清潔にして保管するなど、衛生面に気を付けてセックストイを使用することが大切です。

(3)強すぎる刺激や長時間の刺激を加えない

強すぎる刺激や長時間の刺激により性器が傷ついたり、摩擦で性器に痛みが生じたりすることにも注意が必要です。

女性が性的興奮を感じるのに、激しい刺激はむしろ逆効果だといわれています。ソフトな刺激を一定のリズムで淡々と加え、性反応を引き出していきましょう。

なお、人によっては生理中にムラムラしてセルフプレジャーをしたくなるという人もいます。生理中にセルフプレジャーをすること自体に問題はありませんが、周囲を経血で汚さないような配慮は必要です。

普段はバイブレーターを腟に挿入している人も、生理中はクリトリスへの刺激だけにとどめたり、生理用ナプキンの上から強めにバイブレーターを当てるだけにしたりなど、経血が漏れないようにするのがよいでしょう。

オナニーのしすぎって体に悪い?

先述した『ジェクス ジャパン・セックスサーベイ2020』でも、毎日セルフプレジャーをしていると答えた人が男性では7.9%、女性では1.2%いました[*1]。

毎日となると、セルフプレジャーの頻度として適切なのかどうか、気になる人がいるかもしれません。「セルフプレジャーのしすぎは体に悪い」などと言われることもありますが、本当のところはどうなのでしょうか。

結論から言うと、セルフプレジャーを毎日することによるデメリットは、とくにないといえます。セルフプレジャーは自分1人で、誰も傷つけることなく、妊娠や性感染症の心配もない性行為です。それを毎日したからといって、何かデメリットがあるとは考えられません。

むしろ、セルフプレジャーをすると性欲が満たされ、リラックス効果ももたらされて、パートナーとのセックスライフにもよい影響があるといわれています。

セルフプレジャーは恥ずかしいことではない

セルフプレジャーは決して恥ずかしいことでも、性欲の強い人だけがすることでもありません。自分の性欲を自分で満たすことができ、喜びや安心感につながります。自分のペースで楽しみましょう。

(監修:宋美玄、取材・文:山本尚恵)

※画像はイメージです

参考資料

[*1] ジェクス ジャパンセックスサーベイ2020 調査結果報告書 p36
https://www.jfpa.or.jp/pdf/sexservey2020/report.pdf
[*2] 宋美玄・著「女医が教える 本当に気持ちのいいセックス いいトコどり!」p107

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