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【栄養学講座】第9回:酸化によって受けるダメージとは? 妊娠力を高める2つの“抗酸化”習慣

細川モモ

結婚の予定はないけれど年齢的に出産のリミットも近づいてきている。この先、結婚して子どもがほしいと思ったときに「産めるカラダ」でいるために、今からできることはやっておきたい。そんな働くアラサー女性に向けて、予防医療コンサルタントの細川モモさんによる、産めるカラダを維持するために今から知っておきたい栄養学を全10回でお届けします!

安眠のホルモンが妊娠力を守る!?

現代は第一子の出産年齢が30歳を超えていますし、働く女性はストレスがあって当たり前。では、一体どうやって身体の酸化を最小限にすればよいのでしょうか。体内の抗酸化酵素が減ってしまうことをカバーするために食材に含まれる抗酸化物質を取り入れることが一案です。たとえば、トマトのリコピン緑茶のカテキン鮭のアスタキサンチンなどが抗酸化物質の代表格であり、食材の色素や香りに多く含まれています。ですので、“1食につき5色の食卓を心がける”ことが対策になります。

さらにマイナビウーマン世代に注目してほしいのは、実際に不妊治療の場でも注目を集めている“メラトニン”です。メラトニンは別名「安眠のホルモン」と呼ばれており、時差ぼけの解消や不眠症の治療に欠かせないホルモンの一種です。実は、卵胞液中には血中濃度の2倍ものメラトニンが存在していて、卵胞の発育に比例して増加することがわかっています(※3)。その理由が、卵子の酸化対策であり、メラトニンは強力な抗酸化力で卵子の質を守っていることが解明されてきました。実際にメラトニンを投与すると卵胞内の酸化ストレスが抑制され、卵質が改善し、妊娠力の向上に繋がったという研究報告があります(※4)。

メラトニンをしっかり分泌しようと思ったら肉・魚・卵・大豆・乳製品(ヨーグルトやチーズ)といった良質たんぱく質の摂取が欠かせません。なぜならメラトニンの材料となるトリプトファンは人の身体では作り出せないからです。ところが、働く女性のたんぱく質不足率は約90%と高く、多くの女性が足りていません(※4)。“1食あたり片手ひと盛りのたんぱく質摂取”は妊娠を意識している女性には心がけていただきたいことです。

ただし、メラトニンを十分に得るためには、食べているだけでは不十分なのです。なぜなら、メラトニンにはほかにも体内時計を調整するという役割があり、夜に向けて暗くなると分泌量が増えて安眠を促します。それに対し、朝起きて光を取り込むと分泌されるのがメラトニンというハッピーホルモンであり、朝を司るセロトニンと夜を司るメラトニンの2つのホルモンで体内時計を回しています。実は、メラトニンはセロトニンから合成されるため、朝起きて日の光を浴び、十分にセロトニンを分泌することがセロトニンの充足に繋がります。とどのつまり、良質たんぱく質を食べる朝日をしっかり浴びて夜は間接照明にしてメラトニン分泌を促す、この2つの生活習慣が妊娠力を高めることに繋がります。

“子宝のビタミン”で妊娠力をキープ!

受精卵を迎える準備をする黄体期に異常が生じることで不妊症リスクが高まる“黄体機能不全”には、活性酸素による酸化異常が関わっていることを冒頭で説明しましたが、主な要因は血流が低下してしまうことと考えられています。そこで、注目を集めているのが不妊症だったラットが妊娠に成功したことから発見されたビタミン、ビタミンEです。ビタミンEの正式名称であるトコフェノールは“子宝のビタミン”とも呼ばれており、妊娠に欠かせないビタミンといえます。

その主な理由がビタミンEによる血流改善効果です。実際にビタミンEを黄体機能不全の患者に排卵後に投与した結果(600mg/day)14例中13例で黄体血流が改善されたことが報告されています(※5)。

ビタミンEはイクラやたらこ、明太子、鮎などに豊富に含まれていて、働く女性が取り入れやすい食材ではアーモンドに豊富に含まれています。

仕事のストレスによって妊娠力を低下させないためには、朝日をたっぷり浴びて夜は間接照明にし、食生活ではカラフルな食卓+片手ひと盛りのたんぱく質+おやつにアーモンドを意識しましょう。

◆今回のモモポイント!

加齢とストレスによる酸化ダメージは3食の食生活でカバーしましょう!

(※1)Tamura H, Takasaki A, Miwa I, Taniguchi K, Maekawa R, Asada H, Taketani T, Matsuoka A, Yamagata Y, Shimamura K, Morioka H, Ishikawa H, Russel JR, Sugino N. Oxidative stress impairs oocyte quality and melatonin protects oocytes from free radical damage and improves fertilization rate. J Pineal Res 2008 ; 44 : 280―287
(※2)Tamura H, Takasaki A, Taniguchi K, Matsuoka A, Shimamura K, Sugino N. Changes in blood flow impedance of the human corpus luteum throughout the luteal phase and during early pregnancy. Fertil Steril 2008(in press)
(※3)Nakamura Y, Tamura H, Takayama H, Kato H. Increased endogenous level of melatonin in preovulatory human follicles does not directly influence progesterone production. Fertil Steril 2003 ; 80 : 1012―1016 Tamura H, Nakamura Y, Takiguchi S, Kashida S, Yamagata
(※4)日産婦誌60巻 9 号「生殖機能調節における活性酸素の役割」山口大学 杉野法広
(※5)「働き女子1,000名白書」/出典:「Will consious Marunouchi『まるのうち保健室』調査」Copyright(C)2015三菱地所株式会社・一般社団法人ラブテリAll Rights Reserved.

(文:細川モモ、構成:マイナビウーマン編集部)

※画像はイメージです

※この記事は 総合医学情報誌「MMJ(The Mainichi Medical Journal)」編集部による内容チェックに基づき、マイナビウーマン編集部が加筆・修正などのうえ、掲載しました(2018.08.09)

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください

※この記事は2016年07月14日に公開されたものです

細川モモ

予防医療コンサルタント。両親のガン闘病をきっかけに予防医療を普及させるべく、米国で栄養学を学ぶ。医療と食の専門家による予防医療プロジェクト「ラブテリ トーキョー&ニューヨーク」を日本とNYに発足。2011〜2015 ミス・ユニバース・ジャパン ビューティーキャンプ講師を努める傍ら、卵巣年齢共同研究PJ、妊婦栄養研究PJといった共同研究を進める。働く女子1,400名が参加した「まるのうち保健室」を三菱地所とともに立ち上げ、日本初となる「働き女子1,000名白書」を発表。近著に、働く女性のプチ不調、お悩み別レシピ本『細川モモの美人食堂』などがある。また、4月7日(木)に、新刊『美人の食卓は1日2000kcal—人生をキラキラさせる“足し算”ダイエット 』が発売された。



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