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【妊娠出産のウソ&ホント】赤ちゃんとペットが一緒に過ごしちゃダメってホント?

尾西芳子(産婦人科専門医)

ヨダヒロコ/六識

将来妊娠したい、したくないに関わらず、妊娠・出産は未知の世界。出産未経験の女性たちが感じている妊娠・出産にまつわる素朴なギモンについて、産婦人科専門医の尾西芳子先生がわかりやすく教えてくれます。ウソかホントかわからない情報に惑わされずに、正しい知識を身につけましょう!

ペットを飼っている人が妊娠をすると、「おなかの赤ちゃんに悪いから、飼うのをやめなさい」と言われることがあります。でも、すでに犬や猫と家族のように暮らしている人たちにとって、妊娠したからといってペットを手放すことはできないもの。本当にペットは赤ちゃんに悪影響があるのでしょうか? 今回は、ペットにまつわるウソ&ホントに迫りました。

本日の「ソボクな疑問」

Q.赤ちゃんとペット(犬・猫)が一緒に過ごしちゃダメってホント? 

<読者の声>

・感染などが怖いので、赤ちゃんとは離すほうがいい。(24歳/医療・福祉/専門職)
・やっぱり動物なので、ばい菌は気になる。ある程度の年齢になるまでは動物に触れさせないほうがいいかもしれない。(25歳/食品・飲料/専門職)
・赤ちゃんのころからペットがいると、アレルギーになりにくいと聞いたことがあります。(31歳/情報・IT/営業職)
・新生児の間は猫とは一緒じゃないほうがいいと聞きましたが本当ですか?(32歳/学校・教育関連/事務系専門職)

尾西先生のアンサーは!?

答えは……
う~んです!

赤ちゃんの情操教育という意味ではプラスの効果があります。まず、ペットと一緒に過ごすことのメリットですが、小さいうちからペットを育てると、いろんなものを愛しむ心が育ちます。またお世話をすることで、義務感・責任感が生まれ、注意力・観察力も養われます。そして自分より先に亡くなってしまうことから、世の中には自分の力ではどうしようもないことがあるのだと、死ぬことや生きることの意味について、自然と学ぶことができます。

一方で、衛生面を考えると感染症の問題があります。犬は犬回虫やフィラリア、猫はトキソプラズマといった寄生虫を持っている場合があるほか、体についているノミやダニを介して細菌感染につながることがあります。

また、ペットの唾液腺や汗腺、皮脂腺から作られるタンパク質が犬アレルギーや猫アレルギーを引き起こすとも言われています。ただそれとは反対に、「アレルギーになりにくい」というアメリカの報告も。妊娠中や出産後すぐからペットと触れ合っていると、花粉症をはじめとするさまざまなアレルギーにかかりにくくなるとのこと。もともと人間は抗原に対して攻撃するようにできているのですが、小さいころから触れ合っていると、ペットの抗原を悪い物だと認識しなくなり、結果、さまざまな抗原に対しても過剰に反応しなくなるのだそうです。

「新生児の間は猫とは一緒じゃないほうがいい」という声については、おそらくトキソプラズマのことを言っているのだと思います。免疫力の弱い新生児がかかると重症になる危険がありますが、むしろ妊娠中のほうが注意が必要です。妊娠中にトキソプラズマに初感染すると、胎盤を通して赤ちゃんに感染してしまい、いろいろな病気の原因になってしまう可能性があるからです。ただ、一度かかっていれば基本的に再感染はしないと言われており、妊娠前から猫を飼っている人はご安心を。と言うのは、オーシストと言われる感染性を持つ形態のトキソプラズマは猫の糞から排泄されますが、これが排泄されるのは感染したあとの1~3週間のごく限られた期間だけです。つまり3週間以上家の中で飼っていれば感染の機会はないので安全と考えられます。ただし、生肉やネズミにもトキソプラズマがいて、食べると感染の危険があるため、そういったものを猫が食べないようにしてください。また生水や土などにもトキソプラズマはいるので、妊娠中は「土いじりをしない」、「キレイに洗っていない野菜を食べない」、「火の通っていない肉を食べない」ようにしてください。

さらに、日本の飼い猫のトキソプラズマ陽性率は1%程度ととても低いので、今飼っている猫を手放すようなことはせず、心配な方は動物病院で血液検査をしてみてください。陽性の場合はすでにその猫は一度かかったことがあるので抗体を持っており、感染源となる可能性は低くなります。逆に陰性の場合、10日後に再度調べて陰性であれば感染した経験がまったくないと判断します。その場合は、飼い猫を外に出したり生肉を与えないようにしましょう。再検査で陽性と出た場合は、最近感染した可能性があるので妊婦には危険な状態と判断します。その際は医師の指示に従いましょう。

このような理由で、妊娠する前から飼っているペットであれば、そこまで感染症を心配する必要はありません。動物病院などで予防接種や寄生虫のチェックなどもしてもらっているでしょうから、安心して飼い続けていいと思います。ただし、ノミやダニはキレイに洗っていても3日で元に戻るそうなので、舐めたりキスしたりなど、赤ちゃんと接触させすぎないことも心がけておいたほうがいいですね。

さまざまな要因を考えると、妊娠中や産後すぐにペットを飼いはじめるのは避けたほうがいいでしょう。将来ペットを飼いたいと思っているのであれば、妊娠する前か、子どもの免疫力が高まる4、5歳になるまで待つのが安心ですね。

(取材協力:尾西芳子、文:ヨダヒロコ、撮影:masaco)

※画像はイメージです

※この記事は 総合医学情報誌「MMJ(The Mainichi Medical Journal)」編集部による内容チェックに基づき、マイナビウーマン編集部が加筆・修正などのうえ、掲載しました(2018.07.19)

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください

※次回の更新は7月23日(土)です。お楽しみに!

※この記事は2016年07月16日に公開されたものです

尾西芳子(産婦人科専門医)

高輪台レディースクリニック副院長

日本産科婦人科学会会員
日本女性医学学会会員(専門医)
日本産婦人科乳腺学会会員

神戸大学国際文化学部卒業後、山口大学医学部学士編入学。慈恵医大病院、日本赤十字社医療センター、済生会中津病院の勤務を経て、都内の産婦人科クリニック勤務。2017年7月、高輪台にて開業。

妊娠・出産から、婦人科がんの手術、不妊治療と広く学び「どんな小さな不調でも相談に来てほしい」と女性のすべての悩みに応えることのできる女性のかかりつけ医を目指す。モデルの経験を活かし、美と健康に関する知識も豊富。Webの連載をはじめ、TV、雑誌、講演会で活躍中。

オフィシャルブログ
http://ameblo.jp/yoshiko-onishi/

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ヨダヒロコ/六識

女性向けライフスタイル情報誌&Webサイトの編集者を経て、 2013年に制作プロダクション「六識」をスタート。「働く女性が笑顔でいられる生き方を応援したい」という想いで、グルメや美容、マネー、恋愛・結婚をテーマにした記事の構成~執筆を行う。2児の母として、時短グッズの情報収集に余念がない。仕事・家事・育児に追われる日々の中、月に一度のネイルが癒しに。

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