【助産師解説】乳腺炎を予防するための4つの心得

【助産師解説】乳腺炎を予防するための4つの心得

乳腺炎は全授乳期間で24~33%の頻度で起こると報告されています[*1]。授乳期間中はいつでも起こる可能性があるため、予防が大切です。知っておきたい乳腺炎になるきっかけと、予防につながる授乳や生活のポイントについて助産師がお伝えします。


予防のために!乳腺炎の種類や要因について知ろう

予防するには、まずなぜ乳腺炎になるのか、その原因やきっかけについて知っておく必要がありますよね。乳腺炎の種類と、発症の主な4つの要因についてお伝えします。

乳腺炎には大きく2つの種類がある

母乳が通る乳管が詰まることが原因で、乳房が炎症を起こした状態を、乳腺炎と言います。乳腺炎は、炎症を起こす原因によって「うっ滞性乳腺炎」と「化膿性乳腺炎」の2つに大別されます。

<うっ滞性乳腺炎>

比較的多く見られる乳腺炎の症状です、

うっ滞性乳腺炎は、母乳が長い間排出されず乳管・乳腺内にたまってしまうことで発症します。
母乳が作られる量と赤ちゃんに吸われる量に差があると、飲み残された母乳が乳管・乳腺内にたまって乳腺炎を起こしやすいため、赤ちゃんがまだ上手に飲めず、授乳ペースもしっかり定まらない授乳したての頃(出産後3週間以内)や急激な断乳後に起こりやすいです。

うっ滞性乳腺炎になると、乳房の腫れや痛み、赤み、熱感やしこりなどの症状が見られます。

<化膿性乳腺炎>

母乳が乳房内に長時間溜まっていると、細菌が増殖しやすい環境ができてしまいます。赤ちゃんの口の中やママの皮膚にいる常在菌が入り込み、乳管や乳腺組織内に感染することで起こる乳腺炎です。乳頭に傷ができていると発症しやすいです。

化膿性乳腺炎もうっ滞性乳腺炎同様に乳房の腫れや痛みが出ますが、この他、悪寒やインフルエンザ様の体の痛みをともなう高熱が出るのが特徴です。また、ひどくなると膿が多くたまる乳腺膿瘍(にゅうせんのうよう)という状態になることもあります。この場合は、皮膚を切開して膿を出す手術が必要になります。

乳腺炎を引き起こす主な5つの要因

長期間母乳が排出されずに乳房内にたまっていたり、傷や疲労があると乳腺炎になりやすいことは簡単に説明しましたが、ここからは母乳がたまりやすい状況など、乳腺炎を引き起こしやすいきっかけについてより具体的に見ていきましょう。
乳腺炎になりやすい状況には、主に以下の5つがあげられます。

1.飲み残しなどによる母乳の滞り

授乳ポジションや吸着が適切でないことで赤ちゃんが飲み切れてない、母乳の分泌が多すぎる(作られる量と飲まれる量のバランスが合っていない)などの理由で排出されない母乳が多くなると、乳腺内にたまって乳汁うっ滞を起こし、ひいてはうっ滞性乳腺炎を引き起こす可能性があります。

また、急な断乳や仕事復帰、離乳食の開始などさまざまな理由でいきなり授乳の間隔が開いたり、授乳回数が少なくなった場合も、適切に対処しないとうっ滞性乳腺炎のリスクが高くなります。

2.乳房の圧迫

長時間同じ部位をきついブラジャーや抱っこひもなどで圧迫した場合にも、圧迫された部位が乳汁うっ滞を起こしやすいので、これが長く続くと乳腺炎になる可能性が高まります。

3.白斑

乳頭にできる白いニキビのようなものを白斑と言いますが、これは母乳の出口である乳口がふさがれて母乳が詰まってしまったときにできます。そして、これができた状態を乳口炎と言います。乳口炎になると白斑によって母乳の出口が塞がれてしまうので、乳汁うっ滞が起こって乳腺炎の要因となります。

4.乳頭の傷

乳頭に傷があると、そこから細菌が入り込みやすくなるため、化膿性乳腺炎になるリスクが高くなります。

5.疲労や体調不良

ストレスがあると、母乳を作るホルモンであるプロラクチンは増えるため乳汁産生は増加しますが、射乳反射を促すオキシトシンの分泌は低下するので、乳汁の排出が上手くいかず、乳房に乳汁が溜まりやすくなります。そのため、疲れや体調不良があるときも乳腺炎になりやすいです。

なお、甘いものや脂肪分の多いものを食べすぎると乳腺炎になりやすいという話を耳にすることもあるかもしれませんが、特定の食事内容で乳腺炎になるという医学的根拠はありません。適量であれば心配せずに何でも食べて大丈夫です。

ただ、健康な身体から十分な母乳は作られるので、栄養バランスを考えた食事をとるよう意識することは大切です。特に、授乳期間に限らず嗜好品の食べすぎは良くないので、適量を上手にとり入れてください。

乳腺炎を予防ために心がけたい4つのこと

乳腺炎を予防するためには、母乳を滞らせないこと、滞りを早いうちに解消することが重要となります。たとえ乳汁うっ滞を起こしたとしても、早期に対処すれば乳腺炎への進行を防ぐことができます。乳腺炎を予防するための4つのポイントを見ていきましょう。

適切なポジショニング(授乳姿勢)とラッチオン(吸着)を心がける

授乳姿勢が悪かったり赤ちゃんの吸着が適切でないと、上手に母乳を飲めないので飲み残しが多くなりやすいです。また、正しく吸着されないと乳頭に傷もつきやすく、それも乳腺炎のリスクとなります。授乳の際は正しいポジショニングを心がけ、乳首の先だけでなく乳房までしっかりくわえさせましょう。

【助産師解説】写真で学ぶ授乳姿勢!パターン別授乳姿勢と4つのポイント

https://woman.mynavi.jp/kosodate/articles/3509

授乳姿勢が正しくないと赤ちゃんがうまく飲めないだけでなく、乳腺炎などのリスクも高くなります。主な6つのポジショニングとNGパターン、正しい姿勢をとれているかを確認できる4つのチェックポイントをお伝えします。

基本の横抱きだけでなく、添い乳や脇抱き、レイバックなど、さまざまな授乳姿勢をローテーションで行うよう心がけると、いろんな乳腺をまんべんなく吸わせることができます。また、乳房の一部にすでにしこりや痛みがあるときは、その部分が赤ちゃんの下あごにくるようくわえさせましょう。乳汁うっ滞を起こした乳腺が吸われやすくなり、母乳の詰まりが解消されやすくなります。

授乳時間と回数は赤ちゃんのペースに合わせる

目安とされる授乳時間や回数にとらわれすぎると、まだ飲んでいる途中なのにおっぱいを変えたり、授乳をやめてしまう可能性があり、そうなると飲み残しができてしまいます。授乳時間や回数には個人差があるので、目安の時間ばかりを気にすると赤ちゃんとママにもっとも良いペースが作られにくく、トラブルも起こりやすくなります。赤ちゃんがほしがるだけあげるを基本とし、ちょうどいい授乳のペースを作っていきましょう。

すでに乳管の詰まりや痛みが見られるときは、できるだけ授乳回数を増やして詰まった母乳の早い排出につなげることも大切です。

乳首を清浄綿などで拭かない

乳輪にはモントゴメリー腺という皮脂が分泌されている部分があるのですが、これは皮膚を弱酸性に保ち、細菌の増殖を抑えて乳首や乳輪を保護・保湿するという働きをしています。清浄綿で拭くと大事な皮脂もふき取ってしまい、乳首や乳輪が乾燥して傷や痛みを引き起こしやすくなります。[*1] 乳首の傷は、細菌感染による化膿性乳腺炎のリスクを高めるので、不必要に乳頭を拭くことのないよう注意しましょう。

飲み残しがあるときは適度に搾乳する

まだ授乳ペースが定まらなかったり、なんらかの理由で授乳間隔が開いてしまった場合や、飲み残しができてしまった場合はそのままにせず、授乳をしたり、搾乳して母乳を排出しましょう。このとき、搾りすぎると逆に母乳の分泌を促して赤ちゃんが飲む量とのバランスが悪くなる可能性があるので、おっぱいの張りが治まるくらいでやめましょう。

まとめ

乳腺炎は、授乳中のママなら誰でも経験する可能性がある、比較的よく見られる症状です。一度なってしまうと再発しやすいので、常に予防を心がけることが重要となります。特に、初産婦さんは急性うっ滞性乳腺炎になりやすいので十分注意しましょう。もっとも大切なのは、適切なポジショニングとラッチオン。正しくできないと飲み残しが多くなったり、乳首に傷がつきやすくなります。授乳のペースが定まるまでは、おっぱいが張りすぎたら適度に搾乳するなどして乳汁うっ滞を予防するよう努めましょう。また、疲れや体調不良があると悪化しやすくなるので、精神的にも身体的にも無理しすぎないことが大切です。

この記事を解説してくれた先生
坂田 陽子先生
看護師、助産師、国際認定ラクテーションコンサルタント。 葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院のNICU・産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。その後、都内の産婦人科病院で師長を経験。現在は東京で「すみれ出張助産院」を開業している。
HP:https://sumire-josanin.com/

(文・構成:マイナビウーマン編集部、監修・解説:坂田陽子先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]水野克己ほか「乳育児支援講座」(南山堂)p.205
水野克己著「これでナットク母乳育児」(へるす出版)

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、助産師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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