1回の授乳時間の目安
十分飲ませたと思ったのに授乳をやめたとたんに泣き出してしまったり、逆にまだ少ししか飲んでいないのに飲みたがらなくなったりすると、どれぐらいの時間飲ませればいいのか悩むこともあると思います。
赤ちゃんが満足するまで飲ませようとすると何十分もかかるという場合は、「うちの子はなぜこんなに授乳に時間がかかるのか?」とイライラし、授乳が負担になってしまうこともあるでしょう。
では、一回の授乳時間に目安はあるのでしょうか? 一般的な目安と、それを超えたり短い場合の考え方についてお伝えします。
十分な量を飲ませるための授乳時間とは
授乳にかかる時間には個人差があるので一概には言えませんが、「平均で15~20分はかかる」という研究結果があります[*1]。
ただし、これはあくまでも平均値なので、これより短い子もいれば、それ以上長い時間をかけて飲む赤ちゃんもいます。平均値から外れているからといって異常というわけではないので心配しないでください。
生後2ヶ月~3ヶ月頃になると、多くの赤ちゃんは上手におっぱいを吸えるようになってきます。胃などの消化器官も発達して、一度に飲める量も増えます。この頃からは、平均的に左右それぞれで15分ほどかかるとされています。
授乳時間は決めた方がいい?
平均より長すぎたり短すぎると、赤ちゃんが泣いたりぐずったとしてもある程度時間を決めて授乳した方がいいのか?と悩む方もいると思います。
しかし、これはおすすめできません。
というのも、5分や10分ずつといった時間で区切った授乳をしていると、「母乳を十分に飲みとれない」ことがあるためです。十分な量を吸える時間には個人差があるので、まだ飲みとれていないのに終了してしまうと必要な栄養を十分得ることができなくなります。
また、十分な量を飲まれていないまま授乳を終えてしまうと、母乳がうっ滞(乳房の中に母乳が溜まっている状態)してしまい、ママの体にも悪影響を及ぼす可能性があります。
おすすめは「片方で満足してから、もう片方へ替える」
授乳は時間で区切らず、「片方の乳房で満足するまで授乳してから、もう片方の乳房に替える方法」をとることがすすめられます。そうすることで、徐々に赤ちゃんとママの乳房に合った授乳パターンができてくるでしょう。
特に、生後3~4ヶ月頃になると満腹中枢ができてくるので、赤ちゃんは自分の意志でやめるタイミングをつかむことができるようになってきます。
乳頭痛や乳頭損傷を予防するという理由で、1回の授乳時間の長さを制限し、左右の乳房を短時間で交代して飲ませるという方法もありますが、こちらもあまりおすすめはできません。乳頭トラブルの予防としてもっとも重要なのは適切なポジショニングとラッチオン、授乳姿勢と吸着(乳首への吸いつき方)であり、授乳の長さではないので、このような理由で制限する必要性もないでしょう[*2]。
授乳時間が長すぎるときの原因と対策
授乳時間は制限しない方がいいと言われても、毎回の時間が長すぎて授乳が負担ということがあります。
授乳時間が長い場合の考えられる要因とその対処法についてお伝えします。
授乳時間が長くなるのはなぜ?
授乳時間が長すぎると、授乳だけに何時間もとられてしまい、体も疲れることで負担になってしまいます。実際に、「1回の授乳に毎回1時間ほどとられてしまう」という悩みを抱えるママもいます。授乳にかかる時間が一般的な時間を大幅に超えて長くなってしまうのには、どのような要因があるのでしょうか?
・ポジショニングとラッチオンの問題
ひとつには、適切な授乳姿勢(ポジショニング)と吸着(ラッチオン)ができていないことで、十分に母乳を飲みとれていない可能性があります。
ポジショニングやラッチオンが正しくないと、スムーズに飲めないことから授乳時間が長くなってしまう場合があります。
★ポジショニングやラッチオンについてはこちらの記事をご覧ください↓

【助産師解説】写真で学ぶ授乳姿勢!パターン別授乳姿勢と4つのポイント
https://woman.mynavi.jp/kosodate/articles/3509授乳姿勢が正しくないと赤ちゃんがうまく飲めないだけでなく、乳腺炎などのリスクも高くなります。主な6つのポジショニングとNGパターン、正しい姿勢をとれているかを確認できる4つのチェックポイントをお伝えします。
・スキンシップ、遊び飲みの場合も
この他、飲み方の問題とは関係なく、ただ単にママとのスキンシップを楽しんでいたり、遊び飲みをしている可能性もあります。
赤ちゃんは、周りのことに興味を持ち始める生後3~4ヶ月頃から遊び飲みを始めることがあります。遊び飲みをすると、飲むことに集中せずキョロキョロと周りを見渡したり、乳房を触って遊んだり、急にのけぞってみたりするので、なかなか授乳が進みません。
また、赤ちゃんによっては、母乳をどれだけあげても授乳をやめたら泣くこともあります。生後2~3週頃、生後6週頃、生後3ヶ月頃に見られることが多いようですが、このような場合は一時的に授乳時間が長くなることがあります。
・「授乳時間が長い」ときの見分け方と対処法は?
授乳時間が長くて負担なときは、まずポジショニングとラッチオンが適切か確かめ、正しい方法で飲ませるよう努めましょう。
飲ませ方に問題がなければ、適度な時間で授乳を切り上げて赤ちゃんの様子を見てください。排泄の回数や量、体重の増え方に問題がなければ、飲む量が足りなくて吸い続けるわけではなく、スキンシップを楽しんでいたいなどの違う理由があると考えられます。ぐずるときは抱っこしたり、あやしたりして対応してみてください。
また、遊び飲みがひどくて授乳時間が長引いてしまうときは、できるだけ遊び飲みをしない環境を作り、それでもダメなときは一度、授乳を切り上げてしまいましょう。本当にお腹がすいたときは集中して飲むので、タイミングをみて再チャレンジしてください。
授乳時間が短すぎるときの原因と対策
逆に、授乳が早く終わってしまって飲めているのかが心配という場合もあるでしょう。
授乳時間が短いけど大丈夫?
授乳時間が極端に短いのにはどのような要因があるのでしょうか? こちらのケースでは栄養不足などの問題が気がかりになるので、より心配かもしれません。
・疲れてしまい、長い時間飲めない
授乳時間が短い要因としては、まだ体力がなく、すぐに疲れて寝てしまうという可能性が考えられます。上手に飲めないときも疲れやすいので、飲み切れていなくても途中で寝てしまうことがあります。
・短い時間で十分に飲めている
ただ、授乳時間が短くても、十分な量を飲んでいることもあります。勢いよくごくごく飲んで短時間で満足している可能性もあるので、授乳時間が短いから飲み切れていないと安易に決めつけることはできません。
・「授乳時間が短い」ときの見分け方と対処法は?
授乳時間が短くても、赤ちゃんの体重増加が適切で乳房トラブルがなければ特に問題はないでしょう。
ただ、乳汁を十分に飲みとっていない場合は乳房トラブルにつながる可能性があるので注意が必要です。授乳後も母乳が溜まっている・赤ちゃんの排泄の回数が少ないなど、十分な量を飲ませられていないと感じるときは、次の授乳までの間隔を短くするなどして対応しましょう。
授乳後も乳房が張っているようであれば、軽く搾乳して「乳汁うっ滞」を予防することも必要な場合もあります。このとき、搾りすぎるとむしろ乳房が張りやすくなってしまうので、溜まった感じがなくなったらやめるようにしてください。
赤ちゃんがうまく飲めなくて疲れてしまっている可能性もあるので、ポジショニングやラッチオンの再確認も行いましょう。毎回十分な量を飲めていないと、栄養不足により発育に影響を及ぼす可能性があります。赤ちゃんの状態をよく観察し、気になることがあればすぐに医療機関に相談してください。
まとめ
授乳時間には個人差があるので、1回に何分が適切という決まりはありません。15~20分くらいが目安と考えられますが、時間にとらわれず、赤ちゃんが満足いくまで飲ませることを基本としましょう。
そうすることで、徐々にママの乳房と赤ちゃんの飲むペースに合った授乳パターンができてくるはずです。
授乳時間が極端に長すぎたり短いときは、ポジショニングとラッチオン(授乳姿勢・くわえさせ方)が適切でない可能性もあるので、正しい方法を確認してみましょう。母乳の状態や飲ませ方とは関係なく、ただ赤ちゃんのペースや気分の問題という場合もあるので、体重増加が適切で乳房トラブルもなければあまり心配することはありません。
いろいろ工夫しながら、赤ちゃんとママに負担のない授乳ペースを作っていってくださいね。

HP:https://sumire-josanin.com/
(文・構成:マイナビウーマン編集部、監修・解説:坂田陽子先生)
※画像はイメージです
[*1]ILCA(2014) Clinical guidelines for the establishment of exclusive breastfeeding P19
[*2]Enkin M.,Keise MJNC.,Renfrew M.,etl.(2000).A guide to effective care in pregnancy and childbirth,3rd ed.Oxford University Press.
※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、助産師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます