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他人事じゃない! 損しないために30代からやっておきたい「遺産相続のワザ」

【特集】知らないと危ないお金のはなし

石倉博子

わたしたちを取り巻くお金事情は、どんどん変わっています。いつの間にか高くなっている電気代、なぜか支払いが増えている税金……知っておかないと危ないこと。逆に、来年からスタートする新しい投資制度、ちゃんと活用すればお得なポイ活……知っていれば得すること。実は、知っているor知らないでは、お財布事情は大きく変わってくるんです。夏にお金を使い過ぎたという人も多いはず。これを機にお金のこと、ちゃんと勉強してみませんか?

20代、30代は、仕事にプライベートにやりたいことがたくさんあって、毎日が急ピッチに過ぎていく年代だと思います。そんな人たちに「遺産相続について考えてみませんか?」と言っても、「はあ?」となるのがオチのような気もします。「そんなのまだまだ先」「うちは資産家じゃないから関係ない」と思っている人もいると思います。

でも実は、普通のサラリーマン家庭でも、東京など大都市近郊にご実家がある方は、不動産を含むと相続税対策が必要になる可能性は高く、意外と他人事ではないのです。

また、遺産相続について考えることは相続税対策だけではありません。人生100年時代、親の遺産を相続する時、自分の年齢が70歳や80歳だったら、もらった財産をあまり活用できないと思いませんか? それよりも、生きているうちに贈与の形で、人生でお金がかかる時期に受け取った方がうれしいのではないでしょうか。この場合、相続税に悩む資産家だけの話ではなくなります。

「うちの親はまだまだ元気だから」という20代・30代の方にこそ、今回の遺産相続の話を聞いてほしいと思っています。

相続税と贈与税どっちが重い?

いきなりですが、ここでクイズです。「相続税と贈与税どっちが重いと思いますか?

実は相続税も贈与税も、最高税率はどちらも55と同じなんです。ただ相続税は6億円を超えた場合に55%の税率がかかるのに対し、贈与税は3,000万円や4,500万円を超えると最高税率55%が適用されるという違いがあります。

出所:国税庁「No.4155 相続税の税率」「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」をもとに筆者作成

※特例税率は、直系尊属(父母や祖父母など)から贈与により取得した財産に係る贈与税の計算に使用します。それ以外は一般税率で計算します。

そのため、単純に考えると贈与税の方が重いように思われます。しかし、相続税は亡くなった後、1回きり、すべての財産にかかるため、金額が大きくなります。一方、贈与は何回でもできます。贈与した金額だけにかかるので、手渡した財産が少なければ税金も少なく済みます。このように単純に比較できないというのが答えです。

ただし、相続税と贈与税の仕組みを知って上手に組み合わせると、どちらも軽くすることができます。これが遺産相続のワザです。

相続税がかかりそうだったら、数回に分けて生前に贈与をして、相続財産を減らしておく。これが相続対策として有効ということはなんとなく分かると思います。しかしこれには、タイミングの問題があります。

相続開始の直前(亡くなる3年以内)に財産を贈与すると、それは贈与ではなく相続税の課税対象になるのです。これを「生前贈与加算」といいます。202411日から、この生前贈与加算の3年が7年に延長されます。「親がもっと高齢になってから考えよう」では遅い理由がこれなのです。相続対策は早くから始めることでできることがたくさんあります。先述したように、贈与は何回でもできるからです。親が元気なうちに相続について考えておきましょう。

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