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他人事じゃない! 損しないために30代からやっておきたい「遺産相続のワザ」

【特集】知らないと危ないお金のはなし

石倉博子

わたしたちを取り巻くお金事情は、どんどん変わっています。いつの間にか高くなっている電気代、なぜか支払いが増えている税金……知っておかないと危ないこと。逆に、来年からスタートする新しい投資制度、ちゃんと活用すればお得なポイ活……知っていれば得すること。実は、知っているor知らないでは、お財布事情は大きく変わってくるんです。夏にお金を使い過ぎたという人も多いはず。これを機にお金のこと、ちゃんと勉強してみませんか?

生前贈与はどうやって行う?

ここまで読んで、「うちは生前贈与が必要そう」と思った方もいらっしゃると思います。次に具体的な生前贈与のやり方や注意点についてお伝えします。

暦年贈与の非課税枠を使う

よく知られているのが「暦年贈与」です。贈与税は基礎控除によって年間110万円までは税金がかかりません1人につき年間110万円なので、贈与を受ける子や孫が多ければそれだけたくさんの財産を非課税で次世代に渡すことができます。たとえば、3人に毎年110万円ずつの贈与を10年間続ければ、3300万円の財産を移転できます。これによって、相続財産が基礎控除以内に収まれば、贈与税も相続税も払わなくて済みます。

暦年贈与の非課税枠を使う場合の注意点

注意しなければならないのが「定期贈与」とみなされることです。最初から多額の財産を移転する目的で定期的に贈与しているとみなされると、贈与税が発生します。そのため、定期贈与とみなされないためには、贈与契約書を作成する、贈与の額を不揃いにする、贈与の時期をずらすなどの対策を取るといいでしょう。

もう一つの注意すべき点は、前出の「生前贈与加算」です。相続開始前3年以内(2024年から7年以内※)に受けた贈与財産は、相続財産に加算する決まりがあり、これには基礎控除110万円以内の贈与も含みます。該当すると相続対策のつもりが相続対策ではなくなってしまいます。相続対策として多くの財産を相続財産から移転するには、長期にわたって贈与をする必要があり、親が元気なうちに始めれば、それが可能となります

※延長した期間(4年間)に受けた贈与については、総額100万円までは相続財産に加算しない経過措置がとられています。

<暦年贈与の注意点>
・定期贈与とみなされる場合がある
・生前贈与加算の対象となる場合がある

相続時精算課税制度を使う

もう一つの方法として、「相続時精算課税制度」があります。60歳以上の父母や祖父母(贈与者)が18歳以上の子や孫(受贈者)に贈与する場合に、累計2500万円までは贈与税がかからずに贈与ができる制度です。ただし贈与者が亡くなった場合には、この制度を利用して贈与したすべての財産が相続財産に加算されます。わかりやすく言うと、贈与時の課税を相続時に繰り延べる制度です。

贈与税を払わなくても、相続税を払うことになるのでは、何の意味もないと思うかもしれませんが、この制度を利用して贈与した財産を相続財産に加算しても、相続税の基礎控除以内に収まれば、贈与税も相続税も支払わずに済むのです。

2024年11日から相続時精算課税制度にも年間110万円の基礎控除が設けられます。これまで、この制度を利用すると、どんなに少額であっても贈与のたびに申告をする必要がありましたが、110万円以下は申告不要となりました。また、相続時精算課税の基礎控除110万円は、相続時でも相続財産には加算されません。

相続時精算課税制度の注意点

相続時精算課税は一度選択すると、暦年贈与に戻ることはできません。また、小規模宅地等の特例を利用することができなくなります。小規模宅地等の特例とは、一定の要件を満たした土地を配偶者か同居親族が相続した場合、相続税評価額を最大80%減額できる制度です。たとえば、評価額が2000万円の土地なら400万円になります。そのため、贈与者と受贈者が同居している宅地を生前に贈与するよりも、相続時に小規模宅地等の特例を使って相続した方が大幅に節税できる可能性が高くなります。不動産を贈与する予定がなければ気にする必要はありません。

<相続時精算課税制度の注意点>
・相続時精算課税は一度選択すると、暦年贈与に戻ることができない
・小規模宅地等の特例を利用できない

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