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他人事じゃない! 損しないために30代からやっておきたい「遺産相続のワザ」

【特集】知らないと危ないお金のはなし

石倉博子

わたしたちを取り巻くお金事情は、どんどん変わっています。いつの間にか高くなっている電気代、なぜか支払いが増えている税金……知っておかないと危ないこと。逆に、来年からスタートする新しい投資制度、ちゃんと活用すればお得なポイ活……知っていれば得すること。実は、知っているor知らないでは、お財布事情は大きく変わってくるんです。夏にお金を使い過ぎたという人も多いはず。これを機にお金のこと、ちゃんと勉強してみませんか?

将来損しないために今から始めておいた方が良いこと

ここまで、生前贈与と相続についてお話してきて、まだまだ先のことだと思っていた相続問題が、他人事ではないと思われた方もいたのではないでしょうか? ここからは、将来損しないために、20代・30代から始めておいた方がいいことをご紹介します。

1、親の資産が多いケース

生前贈与として有効な「暦年贈与」の基礎控除110万円以内での贈与は、贈与者(親)が亡くなって相続が発生すると、そこから3年(2024年から7年)以内に行った贈与が相続財産に加算されてしまうため、相続対策として無効になることがあります。

そのため、「親の相続なんてまだまだ先」と思える30歳ごろから、親の資産を譲り受けることを始めておけば、長期にわたった贈与が可能になり、結果的に多くの資産の贈与税を払うことなく移転することができます

たとえば、あなたが30歳で、あなたの親が60歳だとします。来年から毎年110万円の贈与を受け、30年後の90歳で親が亡くなったとすると、生前贈与加算の7年を引いた23年分の2530万円は贈与税も相続税もかかりません。さらに、この2530万円が親の財産から減ることで、相続税も減らすことができます。相続税は相続人(この場合あなた)が払う税金なので、将来の自分のためにもなります。

2、相続税を払うほどの資産はないケース

親の資産が相続税を払うほど多くはないけれど、子どもにまとまったお金を贈与したいという場合は「相続時精算課税制度」が有効です。相続時精算課税は相続財産の前渡しといえるもので、遠い将来に遺産として受け取るのではなく、本当にお金を必要としている時期に受け取りたいという要望を叶えることができます。また、2500万円まで贈与税がかからないので、まとまった金額を贈与することができます。そして、この制度を使って贈与されたすべての財産は相続時に相続財産にカウントされますが、相続税の基礎控除以内に収まれば、相続税は課税されません。そのため、この制度を使うなら、財産が基礎控除を超えないことが重要です。

どうせ受け取るなら、これから増々お金が必要になってくる30歳ごろに受け取りたいと思う人は多いでしょう。「相続時精算課税制度」を利用すれば、そうした希望を条件によっては贈与税も相続税も払わずに実現できる可能性があります。

今の自分と将来の自分が得するために対策しよう

今回お伝えしたことは、現行の制度に則ったアドバイスであり、今後の税制改正によっては、有効でなくなる可能性も出てきます。特に、「相続時精算課税制度」は一度選択したら「暦年贈与」に戻ることができないため、慎重に検討する必要があります。相続はまだまだ先であることが見込まれるなら、「暦年贈与」で進めて、そろそろとなった時に「相続時精算課税制度」に切り替えてもいいでしょう。

「相続なんて早すぎる」「まだ考えたくない」と思っていた人も、少し相続に関心を持っていただけたでしょうか? 今の自分と将来の自分が得するために、早いうちから対策しておくと安心でしょう。

(文:石倉博子、イラスト:若林夏)

※この記事は2023年11月03日に公開されたものです

石倉博子

1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®認定者

“お金について無知であることはリスクとなる”という私自身の経験と信念から、子育て期間中にFP資格を取得。実生活における“お金の教養”の重要性を感じ、生活者目線で、分かりやすく伝えることを目的として記事を執筆中。

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