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ユーザー発想の意外な使い方も! 小林製薬「ナイトミン 耳ほぐタイム」がバズったわけ

#バズりの裏側

マイナビウーマン編集部

ついつい気になってしまう「バズり商品」。手に入れるために何件もお店を回った、運良く見かけて何個も買ってしまった……そんな経験をしたことがある人も多いのでは? そんなヒット商品は、どんな経緯で生まれたのでしょうか。「ヒット間違いなし!」と自信を持って世に送り出され、順当にバズったのか、それともひょんなきっかけがあったのか……製品の開発担当者やPR担当者にお話を伺います。

ここ数年、睡眠に着目したアイテムが定期的に話題になっていますよね。睡眠の質を向上させる乳酸菌飲料や寝落ちできるアロマスプレーなどのバズり製品は、在庫切れが長く続くものも珍しくなく、それほど多くの人が睡眠に関して悩みを抱えているのでしょう。

小林製薬から2021年秋に発売された「ナイトミン 耳ほぐタイム」もそんな「睡眠バズり商品」のひとつ。度々SNSで話題を呼んでいるこちらの商品、使ったことがある読者も多いのでは?

オンライン事前販売時からSNSなどで話題になり、店頭発売開始はすぐにヒットしたという「ナイトミン 耳ほぐタイム」の“バズりの裏側”について、日用品事業部 製品開発担当の松村美香さんに伺いました。

「赤ちゃんの耳って寝る時はあったかいよね」チームの会話から企画がスタート

快適な睡眠をサポートする製品を展開するブランド「ナイトミン」は、2017年に第一弾製品「鼻呼吸テープ」が発売され、「耳ほぐタイム」はそれに続く製品として開発されました。

耳を温めて眠りをサポートするという新発想の「ナイトミン 耳ほぐタイム」は小林製薬らしい製品といえますが、どのように生まれたのでしょうか。松村さんに聞いてみると、きっかけはチーム内の会話からだったそうです。

「睡眠に悩んでいる人が多いという調査結果から、睡眠関連の製品をつくろう! という社内の動きがあり、『ナイトミン』シリーズがスタートしました。小林製薬では消費者の生活実態から企画をすることが多いのですが、『耳ほぐタイム』もまさにそんな商品。企画チームで話しているとき、“赤ちゃんの耳って寝る時にあったかいよね”という話題になったんです。耳を温めたら気持ち良さそうということに加え、耳は副交感神経が集まっている場所……そんな会話から開発が始まりました」

働く時間が増えるにつれて、睡眠に悩みを持つ人も増え続けている実態がある中、ストレス対策として自律神経に関する情報、製品に消費者の関心が高まっています。「ナイトミン 耳ほぐタイム」の発売はちょうどコロナ禍。テレワークなどでオン・オフの切り替えが難しいことに悩む人が増えていた時期でもありました。

企画当初は20代~40代の女性に加えて、仕事でストレスを抱えやすい管理職の男性もペルソナとして想定していたそうですが、蓋を開けてみたら女性の購入層が多かったんだとか。たしかに、SNSでバズった投稿を見ると投稿者は大人の女性が多いようです。

これについて松村さんに聞いてみると、「20代~40代の女性は仕事も子育ても忙しく、ストレスを抱えやすい世代です。また、リラックスアイテムを使用するのは女性の方が多い傾向があり、手軽に使える『耳ほぐタイム』がまさにその層に受け入れていただいたのだと思います」と回答。眠るときに耳につけるだけという手軽さもポイントなのかもしれません。

開発に4年。耳の形状に関するデータを一から集めた

独自の発想から生まれたユニークな製品であるがゆえに、「ナイトミン 耳ほぐタイム」発売までには4年の開発期間があったと松村さんは語ります。

まず、苦労したのはイヤーピースの形状。耳の形に関するデータは社内に無く、一から地道にデータを集めていったそう。耳の形は人によって異なるため、男女さまざまな世代で100名以上の社員に試作品をはめてもらい、調整したのだとか。

「ナイトミン 耳ほぐタイム」はイヤホンのようにフィットする、痛くないだけではなく、熱がちゃんと伝わらなければいけません。耳をメジャーで測らせてもらうなど、体力勝負な場面もあったそうです。

そして、「ナイトミン 耳ほぐタイム」の心地良さの決め手となる発熱体も何度も試作を重ねてできたものだそう。

「発熱体自体は既存製品の『桐灰カイロ』から発熱技術を転用できたのですが、耳にいれるとなると違う工夫が必要でした。『耳ほぐタイム』の発熱体はカイロよりも小さいため、最初は持続時間が10分ぐらいしか持たないのでは……という仕上がりで。でも、お客様のデータから寝つくまでに20分くらい必要そうということが分かっており、寝つきの悪い人に使ってほしい商品なので、やっぱりもう少し伸ばしたいところ。ということで、一年で50回ほど試作を繰り返しました

発熱の時間と温度の安定性を調整し、なんとか20分まで発熱時間を延ばすことができたそう。ぬるすぎると心地良い温かさを感じられず、熱すぎると危ない……耳に入れるという製品特性から、温度調整も難しかったようです。

耳を温めるとなると、現在のイヤホン型ではなく、耳当てのように耳全体を覆う形状は考えなかったのかと聞いてみると、最初に検討したこともあったそう。

しかし、「全体を覆うと温かくなりすぎてしまうので、現在の形になりました。耳に入れる形にすることで耳の中心をピンポイントで温めることができますし、耳栓として防音効果も出ます。当時の開発メンバーで寝る時に音が気になる人や、実際に耳栓を使っている人がいたのも参考になりました」と松村さんは回答。

最近、住居の騒音トラブルも話題になることが増えていますが、そんな中での悩みが製品開発に取り入れられているようです。

企画チームも想定外の「バズ」。意外な使い方も話題に

発売時どころか、ECサイトでの先行発売時からSNSを中心にバズが起こっていた「ナイトミン 耳ほぐタイム」。こんなにも話題になるとは企画チームとしても想定外だったそうです。

「店頭で売っているのを見て試してくださる方が増えるケースは多いのですが、店頭で売る前から話題にしていただけたのは予想外でびっくりしました(笑)。SNSから話題になる製品は社内でも少なく、耳ほぐタイムが成功事例の第一歩になったと思います」

話題になったポイントを聞いてみると、「まず、耳を温める初めての体験が挙げられると思います。耳を温めることに特化した製品ってなかなかありませんが、でも『なんか気持ち良さそう』とイメージが湧きますよね。また、新しいものを試してみたい、そして小林製薬っぽくて面白いという点も合わさって、このように話題にしていただけたのではないでしょうか」との答えが返ってきました。

発売前から発売直後にSNSを中心に話題になっていただけではなく、発売から時間が経ってからも定期的にバズが巻き起こるのが「ナイトミン 耳ほぐタイム」。眠りをサポートするだけではなく、低気圧で不快(雨音がうるさい等)に感じる時に愛用しているユーザーもいるんだとか。

「お客様からは『リラックスできた』『気持ち良かった』『いつもはなかなか寝つけなくて困っていたが、こてんと寝ることができた』などうれしいお声をいただいています。毎日使っている方もいれば、週末のご褒美として使っていただいているという声も。ストレスを抱えて眠りに悩みを抱えている方にリラックスしてもらえたらうれしいです」

耳の形は人それぞれということで、ユーザーの声を元に今後の展開を検討しているそう。「不眠に悩む方々のさまざまなお声を聞きながらアプローチを考えているのでお楽しみに!」と笑顔で語ってくれた松村さん。今後はどんな製品が出てくるのでしょうか。

いつも消費者があっと驚くような新感覚のアイテムを展開している小林製薬。今後も目が離せません。

(撮影:田中大介、取材・文:錦織絵梨奈/マイナビウーマン編集部)

※この記事は2023年06月17日に公開されたものです

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