不倫相手の女性が慰謝料の支払いを拒んだときは?
請求したけれど、不倫相手の女性が拒んだときは、次に取れる手段としては訴訟でしょうか。
拒まれたら……そうですね。任意に応じてくれないわけですから。応じる人は少ないので、裁判に進みますね。
不倫相手の女性の住所が分からない場合、私が知っているケースだとその女性が保険の販売員の女性で、会社宛に内容証明を送っても良いのかと聞かれたことがありました。会社にプライベートな内容証明を送るのは、大丈夫なのでしょうか。
基本的にはやめたほうが良いですね。送達先に就業場所を選べるときはあるけれど、それはもう最終的な手段に近いです。そんなものが働いているところに来たら、当然「何をやったの?」という話になりますよね。
ダメージを受けますよね。それを狙ってあえて会社に送りたいのだという女性もいますが……。
いますね。でも、自分だったらやめたほうが良いと言います。
会社宛に内容証明を送って、今度は自分が訴えられる可能性はありますか?
ありますね。自分のプライベートに関することが分かってしまうわけだから。
なるほど……。では、相手の女性の住所が分からない場合は、どうすれば良いでしょうか。
調べます。たとえば、携帯電話の番号が分かっているのであれば、電話会社に契約者が誰なのかと探ることができれば、少し近づけるかもしれない。
弁護士会照会制度があるのでそれを使うこともあるし、あと、住んでいる市区町村が特定できているのであれば、そこの役所に行って住民基本台帳を見せてもらうこともできます。
たいてい、不倫相手の住所なんて問い詰めても絶対に夫は明かさないですよね。
住んでいるところに内容証明を送るのが基本なのですね。
不倫相手の女性に慰謝料請求の訴訟を起こす場合の流れとは
相手の女性が慰謝料なんて払わないと突っぱねた場合は訴訟に進むのですが、どんな流れになるのでしょうか?
訴状を書いて、証拠をつけて、裁判所に申し立てます。その後、第一回口頭弁論期日が開かれます。
夫の不倫相手に慰謝料請求をする訴訟で、弁護士に代理人を依頼する場合、着手金はどれくらいでしょうか。
請求した慰謝料の金額によります。慰謝料をいくら請求したかによって料率が変わってきます。
例として、慰謝料300万円の請求でお願いした場合はいかがでしょうか。
5%プラス9万円で設定している人が多いですね。弁護士費用は請求する金額によって変わるのですが、請求する金額を経済的利益と考えます。
請求する金額で、着手金と報酬は決まります。300万円以下の場合は、着手金は8%。300万円を超えて3000万以下の場合は5%プラス9万円。9万円の部分はスライド式に上がっていき、調整金としての役割があります。そして、報酬は、基本的には実際に回収できたお金をもとに計算します。
弁護士にお願いしたいのだけど依頼する費用が用立てできない人のために、「法テラス」という国がやっている機関があります。そこでは、民事の裁判について費用の建て替えをしてくれる制度があります。これを民事法律扶助制度といいます。
こちらの制度は、着手金や報酬というのは決まっているのでしょうか?
先ほど挙げた費用の体系よりは安くなっています。かつ、銀行口座からの引き落としとなりますが、月々5,000円とか1万円とか決めてもらって、分割での支払いが可能です。
法テラスの制度を利用したいとき、弁護士に手続きをお願いすることはできますか?
私は法テラスと契約している弁護士なので、私の事務所で相談したことが法テラスで相談したことと同じ扱いになります。法テラスに私が事件を持ち込んで、審査を受け、通ったら正式に依頼に進みます。
審査があるということは、落ちる可能性もあるのですね。
落ちることもあります。審査の一番大きい要件が、収入です。ひとり暮らしで手取りが月20万円くらい、これがベースですね。
法テラスの制度を利用した場合のデメリットはありますか?
デメリットは無いと思います。弁護士費用が安くなるし、普通、着手金は一括で払ってもらうのですが、分割で払える時点でかなりメリットがあると思いますね。
利用できる要件を満たせば誰でも利用できて、裁判での扱いにも差は無いのですよね。
それは当然ありません。我々はプロなので、報酬の多寡によって対応が変わることはありません。そこは安心していただきたいですね。
弁護士を調べる時、ホームページで法テラスと契約しているかどうかを確認するのがおすすめです。契約しているところは「法テラス利用可」など書いてあります。
法テラス自体でももちろんやっていて私も足を運ぶのですが、法テラスの場合は結局その日の担当の弁護士に当たります。法テラスに直接行くことも可能ですが、その場合は弁護士を選べないと思ってください。
もし「この人に相談したい」という場合は、ホームページにアクセスして法テラスを利用できるかどうかをチェックしてください。
よく分かりました。ありがとうございます。訴訟の話に戻りますが、判決が出るまでにはどれくらいかかるのでしょうか。
争うのであれば、半年や一年は普通にかかります。基本的には月に1回程度、期日が来ると考えてください。
コロナ禍で裁判所も開店休業状態だった時期があって、事件は受け付けてはいるものの裁判が開けず滞留してしまい、月1回程度の期日が1カ月半とか2カ月でしか入りません、ということもあったのですが、現在はようやく正常運転に戻りつつあります。
特に事情が無ければ、期日は月に1回程度。口頭弁論を繰り返して、たしか、証人尋問もありますよね。
最終的に本人を証人として呼んで、尋問する流れですね。でも、そこまでいく事案というのは相当込み入っているもので、多くは裁判上の和解という手続きで終わります。
3~4回目の期日あたりで裁判官から和解を勧めてくるという印象があります。
裁判所は訴訟のどの段階でも、和解の勧試というのですが、和解案を提案することができます。ちょっと証拠が弱いなというときには、「少額だけどどうですか」という話もあるし、これはひどいなという事案の場合には「もう少し出してもらえないか」と言ったりすることもあります。
被告が本人訴訟で応じるケースはたまにあります。基本的に日本は本人訴訟を認めているのですね。ドイツだったら訴訟では代理人をつけないといけない仕組みになっているけど、日本の法律の制度では本人訴訟が認められているので、別に代理人をつけなくてもいいです。
ただ、本件のような不貞行為に基づく損害賠償請求事件ですが、事案としては複雑ですよ。証拠の立て方や見極めも重要な事件なので、やはり代理人をつけたほうがスムースかなと思うし、裁判所も本人訴訟は嫌がります。
うーん、異次元主張というか、裁判のイロハをふまえない、どこからそんな話になるのだということが出てきたりして、裁判所としても迷惑なのですよね。
原告が弁護士をつけてきたら、やはり被告側もつけるのが正解ですね。
弁護士からは何とも言えないのですよ。代理人をつけたほうがいいですよって、事件を煽るようなことは職務規定上できないので。内心ではそう思っていても、口にはできないですね。相談者が決めることなので。
うーん、複雑な事案なので。この証拠でいけるでしょ、と言う人がいるけれど、我々から見れば足りないなということもあります。本人にとってはダイヤモンドに見えるかもしれないけど、我々からすると石ころかな、とか。
逆ももちろんあって、「こんなのでいいのでしょうか」と持ってきたものが「良いのあるじゃないですか」となるときもあります。
つまりは、自分で判断しないということですね。それは誰が見るかによって評価が変わるものだから。自分にとって価値があるかないか、その事案にとって必要なものかどうかというのは、自分で決めないで、まず見てもらう。
そう。一般の方には申し訳ないけれど、見立てが全然違うのです。そうでなければ、弁護士がいる必要が無くなってしまいます。