「販売」と「発売」の違いは? 意味や使い分けを解説
「販売」と「発売」の違いとは?
前述の通り、「販売」とは、業務として顧客に品物を売ること。そして「発売」とは、ある商品を市場へ新規に売り出したり、既存商品を販促として売り出したりすることだと分かりました。
ここでは両者の違いをもう少し掘り下げてみましょう。
「販」と「発」の漢字が持つ意味の違い
販売の「販」には、次のような意味があります。
【販】ハン・ホン・ひさ-ぐ
ものを仕入れて売る。あきなう。ひさぐ。
(『例解新漢和辞典』三省堂)
発売の「発」には、次のような意味があります。
【発】ハツ・ホツ・た-つ
(1)矢を放つ。鉄砲などをうつ。
(2)外に出る。外に出す。
(3)出かける。動き出す。たつ。
(4)新しくはじまる。はじめる。生じる。おこす。おこる。
(5)のびる。盛んになる。成長する。
(6)かくれているものを外に出す。明らかにする。ひらく。あばく。洗われる
(7)弾丸などをかぞえることば。
(『例解新漢和辞典』三省堂)
上記からも分かるように、「販売」の「販」は、「売る」という意味です。
一方、「発売」の「発」は、上記の(4)「新しくはじまる。はじめる」という意味で、「売る」という意味はありません。
「売」という漢字と合わせて熟語になることで、「売り始める。新しく売り出す」という意味を表します。
したがって、「販売」は「売ること」であり、「発売」は「新しく売り始めること」です。
「販売」は継続的、「発売」は間断的
「販売業」という言葉があるように、「販売」は業務として継続的に行うことです。
例えば、「味噌作りと販売一筋、40年」というように、長い期間を通じて行う行為です。
一方、販売業務の一環として行うのが「発売」です。
新商品の売り出しや販促キャンペーン、季節のセールなど、売り出した瞬間やその期間に限り、間断的に使われる言葉です。
新商品を「発売」したり、すでに売っている商品の価格を下げて「大売り出し」「セール」として「発売」したりします。
商品によっては、新しく売り出した時に「新発売」という形で一度だけ使われることもあります。
つまり、「販売」はお客さんに売ることそのものの行為、「発売」は商品が市場へ売り出される瞬間やその期間という、それぞれ異なるニュアンスを持っているといえます。
「販売」と「発売」の用例
下記の図は、どんな場合に「販売」「発売」の言葉を使えるかを考察したものです。
良書を「~」する | 「~」が10日遅れる | 「~」を促進する | 「~」競争 | |
発売 | ○ | ○ | ― | ― |
販売 | ○ | ― | ○ | ○ |
(『現代国語例解辞典』小学館)
ここで挙げた用例の中では、「良書を販売する・発売する」はどちらも成立しますが、それ以外ではどちらか片方しか使えません。
例えば、「発売が10日遅れる」とは言いますが、「販売が10日遅れる」とは言いません。前述した通り、販売は継続的に行うものだからです。
また、「販売を促進する」とは言いますが、「発売を促進する」とは言いません。「販売」を促進する方法が、大売り出しなどの「発売」そのものだからです。