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負担になるものを手放す選択。藤原史織の人生の歩み方

マイナビウーマン編集部

マイナビウーマンのコア読者は“28歳”の働く未婚女性。今後のキャリア、これからどうしよう。結婚、出産は? 30歳を目前にして一番悩みが深まる年齢。そんな28歳の女性たちに向けて、さまざまな人生を歩む28人にインタビュー。取材を通していろんな「人生の選択肢」を届ける特集です。

取材・文:鈴木美耶(マイナビウーマン編集部)
撮影:洞澤佐智子

“Favolosa!”

正しい読み方すら分からないけど、彼女のブログはいつもこのあいさつから始まる。どうやらイタリア語で「素晴らしい」という意味らしい。

2020年4月、ブルゾンちえみ改め藤原史織に活動名を変えた彼女は、今何をしているのだろう。テレビからはすっかり姿を消したが、芸能界とは距離を取っているのだろうか? インタビュー前、なんだかネガティブなイメージが先行していた。

「私からは、彼女の今が“Favolosa”には見えないけど……」

ということで、「ブルゾンちえみではなく、藤原史織の人生を選んで幸せなの?」と単刀直入に聞いてみることにした。

「どこ目指してるの?」って声をもう聞きたくない

「藤原史織は本名だし今はもう慣れたんですけど、変更した当初は私自身も不思議な感じがしていました。『史織』ってどこか繊細なイメージないですか? 反対に『ブルゾンちえみ』ってすごくキャッチーで気に入っていたし、アイデンティティにもなっていました」

“ブルゾンちえみ”という名前は、もう聞きたくもないかもしれない。そんなふうに勝手な想像をしていたけれど、意外なことに今でもとても気に入っているようだった。

「だけど、活動を一旦更地に戻したかったんです。自分自身の区切りでもあるし、もう芸人・ブルゾンちえみではないということも伝えたかったので。

私の中で芸人さんって、いろんなことをする人だと思っていたのですが、今まで芸人さんがしてこなかった新しいことに挑戦すると『どこ目指してるの?』とか『もうお笑いはやらないの?』っていう声が出てきたんですよね。

そんな声を聞くと『そう思っている人が他にもたくさんいるのかな?』『ネタを作ることは好きだけど、それをテレビで披露しないとお笑い芸人してますってことにならないのかな?』『じゃあ、何をしたらお笑い芸人をやってるってことになるの?』と、自分がしたいことと世間が求めるものに乖離を感じてしまいました。

そんな歪みを感じながらだましだまし毎日を過ごしていると、少しずつ自分を見失っていき、自己肯定感や自信が底をついてしまって」

苦しそうに紡ぎ出す言葉からは、深く深く悩み続けた彼女の日々が感じられた。そんな時、ある人の一言が背中を押してくれたのだそう。

「このままじゃ芸人を続けるのは難しいと思っていた時に、偶然サンドウィッチマンの伊達さんとお話しするタイミングがありました。悩みをポロッとこぼしたら『単独ライブとかしてみたらいいよ』と言っていただいて。

たしかにブルゾンちえみになってから単独ライブはしたことがなかったですし、『これをやり切れば、またテレビでも頑張れるかもしれない』と、藁にもすがる思いで賭けてみることにしたんです。

正直しんどかったですけど自分自身納得できるものが作れたから、世間に評価されなくてもいいと思えました。結果、自分が面白いと思えるものを作る楽しさに気付き、それが自信にもつながった。『私、まだやれる』って」

“まだやれる”そう気付いたと話す彼女が、芸人を辞める選択を下したのはどうしてなのだろう。続けるという道は、なかったのだろうか。

「『やれる』って思ったのと時を同じくして、私の心は悩みで満タンになっていることにも気が付きました。

ここ何年か日記を付けているのですが、読み返すと一年前からずーっとお笑い芸人として求められるお仕事が、自分には合っていないんじゃないかと悩んでいて。

また来年の自分も同じことを悩んでいるんだろうなと想像した時に、何も進んでないじゃん! いつまで同じことで悩むつもり!? と強く思ったんです。

それで、芸人・ブルゾンちえみをやめる選択をしました」

「みんなそうなんだから、あなたもそうしなさい」って言葉が大っ嫌い

彼女は今年30歳を迎える。節目の年齢とはいえ、新しい道に切り替えチャレンジすることに躊躇はなかったのだろうか。

30歳、世間的には女性が安定を求めだす年齢でもあるように思うのだが。

「たしかに周りは結婚していくかもしれないし、子どももできるかもしれない。でも、人と比べても仕方がない。自分の中での優先順位が今一番のものに、一生懸命になればいいんです。

昔からそうなんですが、人と比べるってことを全然しなくって。私のやっていた陸上で例えると、いつも一位じゃなくて自己新記録を出すことだけを考えてるんですよ。

だから、一番言われたくないのが『みんなそうなんだから、あなたもそうしなさい』って言葉。それって、全く理由になってないですよね? 『じゃあ、みんながう〇こを食べたら、あなたも食べるんですか?』って感じです(笑)」

彼女の究極的な表現に思わず笑ってしまう。チャレンジする上で、性別や年齢、周囲の目なんて躊躇する要因にはならないと、誰よりも説得力のある言葉で伝えてくれた。

“負担になるものを手放す”という選択も正解

周りと比べない彼女が見つけた新しい道とはイタリア留学だった。なぜイタリア? とは私も最初に抱いた疑問だったが。

「私がイタリアに行くことを『いろいろ辞めて行くんですから、さぞかしイタリアに行きたい明確な理由があるんですよね?』というふうに思われる方もいるのですが、単純にここに住んでみたい! と思ったというシンプルなものなんです。

私は生粋の日本人らしく、時間は守る・空気を読むっていうのが染み付いちゃっているんですが、イタリア人ってそういう意味では真逆なところがあるんですよね。そんなラフな部分もありつつ、実は日本人のように職人気質なところもあったりする。彼らのそんな部分に魅力を感じて留学を決めました。理由なんてそんなものです」

何かを手放して新しいチェレンジをする時に求められがちなのが、“それを選択するもっともらしい理由”。でも、それって誰のための理由? よそ行きに着飾った理由は、今の彼女には何一つ必要ないように見えた。

「あと仕事では、物理的な縛りがなくなってきたじゃないですか。出社しなきゃいけないとか、日本のお仕事は日本で、みたいな。だから、アドレスホッパーになって日本にいなくても日本のお仕事ができるようになるのも夢です。あ、あとウィル・スミスと友達になりたい(笑)」

「藤原史織になって、やっと地に足が着いたように思います。やりたいことが分からなくなる時もあるけど、その反面やめたいことが見えていたりもする。そして、それをやめたことで、おのずとやりたいことが見えてくる。

私は負担になっていたものを結構下ろせたから、今こうして自分自身が見えてきたんですよね」

自分が選択した人生なのに、それを手放すって、どうしても逃げたような気になったり格好悪く感じてしまったりする。だけど、「重たい荷物を下ろすことが、前に進むには必要な時もある」と“藤原史織”の人生選択は、私たちに教えてくれるようだった。

そういえば、このインタビューでは「今幸せ?」と単刀直入に問うはずだったのだけど、すっかり忘れていた。

でも、わざわざ確認する必要はきっとなかった。だって、彼女の幸せを疑う要素が一つも見つからなかったから。

マイナビウーマン編集部

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