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『だから私はメイクする』に込めた想い。マンガ家・シバタヒカリさんの場合 #コスメ垢の履歴書

#コスメアカの履歴書

ひらりさ

コスメを偏愛する「コスメオタク」が増えている。中でもTwitterの「コスメ垢」は、よりディープな情報発信の場として話題。この連載では、ライターひらりささんがいま気になるTwitterコスメ垢にインタビュー。彼女たちのおすすめアイテムや美容愛、さらには人生までをも覗き見ます。

取材・文:ひらりさ、編集:高橋千里/マイナビウーマン編集部

同人サークル「劇団雌猫」所属の美容オタクライターひらりささんが、いま気になるTwitterコスメ垢の実態を探る連載「コスメ垢の履歴書」

今回は、劇団雌猫の話題書『だから私はメイクする 悪友たちの美意識調査』のコミック版『だから私はメイクする』(フィールコミックス)を描いた、マンガ家のシバタヒカリさん(@sunny_615)にインタビューしました。

きっかけは、ギャルが引いてくれたキャットライン

――今回は、コミック版『だから私はメイクする』のマンガ家・シバタヒカリさんにお越しいただきました。シバタさんにとっては初の単行本発売ということで、おめでとうございます!

ありがとうございます~! もともと、女の子の顔や服装の描き分けをするのがすごく好きだったところにいただいた提案だったので、とても楽しい作品でした。

――原案を務めた私たち劇団雌猫も、FEEL YOUNG編集部さんからシバタさんの絵を見せてもらったときに、「この人なら間違いない!」と思ったんですよ。シバタさんご自身は、元々メイクがお好きなんですか?

実のところ、原作のエッセイ集『だから私はメイクする 悪友たちの美意識調査』を読むまでは、メイクやコスメについて、ちゃんと考えたことがなかったんです。読んで、マンガを作り上げる中で「私も、好きでメイクをしていたんだ」というのが明確になりました。

――ご自身が初めて買ったコスメは覚えてますか?

『だから私はメイクする』1話に出てきた、メイク道を極める笑子と友人たちが高校時代に使っていたコスメは、私の思い出のコスメたちとかなりリンクしています。

パルガントンのシアトリカルパウダーのことは本当によく覚えてますし、何より「マジョマジョ」が生まれた年代なんですよ!

――マジョリカマジョルカ~!

「何だこのおしゃれなサーカスみたいなやつ!」となって、友達も私も夢中になって買ってました。最初はマツキヨで買っていて、そのうちソニプラの存在を知ったときの衝撃といったらなかったですよね。「ここは海外?」みたいな。

よく覚えているのは、高校のとき廊下で友達と喋っていたら、通りがかったギャルが、突然アイライナーでキャットラインをガーッと引いてくれたこと。「かっこいい〜!」と思いました。シアトリカルパウダーも、その子にはたいてもらって知りました。

――最強の思い出ですね。現在は、デパコスなども買いますか?

ブランドをあんまり意識してないんですよね。ネット通販や、旅行で買うことが多いかもしれません。ずっとK-POPアイドルが好きなので、周囲にも韓国コスメの情報通が多く、そういった友達から「買え」と言われたものを集めていって……という暮らしをしています。

最近使っているのは「クレアス」という韓国の化粧品ブランド。「ビタミンドロップ」という美容液がとても自分に合っていて、ラインで揃えたいと思っています。

――マンガ家さんって、仕事柄、生活リズムが乱れがちだろうなと思います。スキンケアが特に大事ですよね……。

そうなんですよ。今日も、さっき2時間寝てから来たという状態で。朝起きたときの肌の下準備には時間とお金をかけていますね。動画見ながらパックで保湿して、地ならしをしています。

『だから私はメイクする』は、誰も下げない

――そんなシバタさんが手がけたコミック版『だから私はメイクする』は、原案者の一人としても、本当に素敵な作品が生まれたな! と感動しながら、何度も読み返しています。

1話の1ページ目で、笑子が初めてアイプチに挑戦した日を、人類が初めて火をおこした場面と重ねて描いているのとか、マンガならではだなあと思いました。

『だから私はメイクする』1話より

1話のネームには苦労しました。担当さんに、ネームを1カ月くらい見せない期間があったくらい。4~5回直しました。

でも、「このマンガを読んだ人をとにかく元気にしたい」「プラスに振っていこう」と決めたときに、笑子の中にメイクというものがピシャーッと降りてくる瞬間を描きたいなと思って、あのシーンが浮かびました。

(『だから私はメイクする』担当編集・Hさん)「誰も下げないでいこう」という方針を決めたら、だいぶすんなりいきましたよね。

そうそう。ストーリーに起伏をつくる上で当初、笑子は自己肯定感が高くて、その友達は劣等感が強くて……という対比を設定しようかと考えていたんです。

でも担当さんと話す中で「女の子のうち誰かを下げるような表現はやめよう」となったんです。それを決めてからは、むしろ描きやすくなりました。

――コミック版で「元気をもらえた」という声がこんなにたくさん出ているのは、その方針の力もあると思います。

意外だったのが「泣いた」という方も多かったことです。

――本当に多いですよね。それだけ、真摯に読んでもらえてるんだなと思いました。このあたりでシバタさんご本人のポーチを見せていただいてもいいでしょうか。

こちらです。

左から
・CHANEL N°5 オードゥ トワレット(ヴァポリザター)
・LUNA エッセンスウォーターファクトFX
・MINTIA WILD&COOL
・香水用アトマイザー
・ETUDE HOUSE ディアマイ ティントリップトーク BE101 シースルーベージュ
・DHC 薬用リップクリーム
・LB スパイシージェリーリップグロス ジューシーイエロー
・REVLON バーム ステイン 55 アドアー

――「みいつけた!」ポーチがかわいい。黄色いアイテムが目立ちますね。

黄色、ずっと好きなんです。あんまりいろいろ入れてないですが、リップだけ2種類持ってます。顔に飽きたら塗り直す。香水も、気分転換の一つですね。友人からもらったCHANELの5番をアトマイザーに入れて持ち歩いてます。

――黄色が好きなんですね。そういえば表紙のタイトルも黄色で、すごく映えていました。表紙を写真とともにツイートしている人もとても多くて。

(担当編集・Hさん)表紙は、ラフを3パターン描いてもらいました。

――どんなラフがあったんですか。

採用されたもののほか、何人か女性がいるバージョンと、BAの熊谷さん一人のバージョンがありました。

最初のラフをデザイナーさんがざっくりレイアウトに落としてくれたのですが、「どうしてもこのバージョンで行きたい」と押してくれたのが今の表紙で。信じてみよう、と思って描き進めましたが、結果的に良かったです。

——表紙の帯を外すと、ドレッサーにずらりと化粧品が並んでいて、その芸も細かくて、本当にかわいいんですよね。作中のキャラクターの服装も、すごく個性が出ていて好きです。

コーディネートアプリの「WEAR」を見て参考にしたり、自分が身につけているアイテムを生かしたり、と、実際のトレンドはかなり参考にして取り入れました。実は今日、5話の主人公・輪子が持ってるピアスをつけてきました!

――反響の中に「2巻も出してほしい」という声がありましたが、いかがですか?

もし2巻を出すのであれば、1巻とは別角度で、「メイクに対する自分の答えが出ていない」人も描きたいですね。感想を見ていても、「こういうふうになれない人生だったな」という感想も多かった。そういう人たちに自分のことを好きになれ、とまでは言えないじゃないですか。結論にバリエーションがあるといいなと。

「変身できてる!」という気持ちを忘れない

――シバタさんは「女の子を描くのが好き」ということですが、自覚したのはいつですか?

子どもの頃からずっと絵を描くのが好きなんですけど、父が残してくれているアルバムを見ると、全部お姫様なんですよ。着飾ってキラキラした子みたいなものが、ずっと好きなんじゃないかなと思います。

——現在FEEL YOUNGで連載中の作品は、『おじさん、ドル活はじめました!』。K-POPアイドルに突然ハマった中年男性が主人公ですよね。

『おじドル』は、メイクの連載を始める前にも描いて、今はその続きを連載しています。両方描いてみて思いましたが、メイクの話も、オタ活の話も、根っこの気持ちには差がないんですよね。「何かを好きな人」を描くのが楽しいなと思います。

『だから私はメイクする』が響いた人にも読んでいただきたいです! K-POPガチオタの方は、お手柔らかに……(笑)。

——最後の質問です。メイクで人生が変わりましたか?

「YES」ですね。大学生のときに、『だから私はメイクする』1話の笑子のように濃いメイクをしていたんです。“おてもやん”みたいにチークをまんまるにしていて。

それでバスに乗っていたら、5歳くらいの女の子に「かわいいね〜、ほっぺほっぺ」と言われたのをよく覚えていて。「私、変身できてるんだ!」とうれしかった気持ちを、これからも忘れないでいたいです。

シバタヒカリさんの履歴書

 

※写真のコスメはすべて本人私物です

『だから私はメイクする』漫画:シバタヒカリ、原案:劇団雌猫

『浪費図鑑』の劇団雌猫が贈る話題書をコミック化!

メイク道を爆進するうちにあだ名が「マリー・アントワネット」になった女、“推しネイル?にハマって猛練習する女、仕事場での“アドバイス?にうんざりしている女など、メイクを通して見えてくる、「社会」や「自意識」と戦う女たちの悲喜こもごも。

「自分がどうありたいか」と向き合う、共感必至のオムニバス・ストーリー!

※この記事は2020年04月05日に公開されたものです

ひらりさ

1989年生まれ、東京都出身。ライター・編集者。女性・お金・BLなどに関わるインタビュー記事やコラムを手掛けるほか、オタク女性4人によるサークル「劇団雌猫」のメンバーとしても活動。主な編著書に『浪費図鑑』(小学館)、『だから私はメイクする』(柏書房)など。

ブログ:It all depends on the liver.
Twitter:@sarirahira

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