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化粧品売り場に立てない今、できること。美容部員ひなさんの場合 #コスメ垢の履歴書

#コスメアカの履歴書

ひらりさ

コスメを偏愛する「コスメオタク」が増えている。中でもTwitterの「コスメ垢」は、よりディープな情報発信の場として話題。この連載では、ライターひらりささんがいま気になるTwitterコスメ垢にインタビュー。彼女たちのおすすめアイテムや美容愛、さらには人生までをも覗き見ます。

取材・文:ひらりさ、編集:高橋千里/マイナビウーマン編集部

同人サークル「劇団雌猫」所属の美容オタクライターひらりささんが、いま気になるTwitterコスメ垢の実態を探る連載「コスメ垢の履歴書」

今回は、デパートの美容部員として働きながら、Twitterで美容にまつわる情報を発信しているひなさん(@hinano0213_)にインタビューしました。

きっかけは「理想の女の子」像への憧れ

――現役美容部員であることをTwitterで明かしているひなさん。アカウントを開設したきっかけは何だったのでしょうか?

アカウントを開設したのは2016年です。今は22歳なので、18歳の頃ですね。実は高校を卒業するのと同時に家出をしまして……学生向けの寮で暮らしながら予備校に通って受験勉強をしていました。

友達がいなくて、誰か話し相手が欲しくて、今のアカウントを作りました。最初は美容アカウントというわけでもなかったんですが、次第に……という感じです。

――コスメやメイクはいつからお好きなんですか?

それは小さい頃からです! コスメのテスターを見るのが楽しみで母の買い物に付いて行ってました。小学生の時、お小遣いでまつげ美容液を買ったのを覚えています。それからずっと続けているので今でもまつげには自信があります(笑)。

ただ、コスメやメイクに親しんでいた反面、自分自身には劣等感があって。自分より身の回りのものをきれいに整えている子や女の子らしい所作の子を見ては、「あの子は私のできないことをちゃんとできていてすてきだなあ」と思っていました。

別々の女性に敵わないところが組み合わさり自分の中に「理想の女の子」像ができて、女性への憧れをずっと育ててきたんです。

――美容部員になろうと思ったのは、いつ頃なんでしょうか。

あくまで私の観測ですが、Twitterを始めた2016年頃は美容アカウント界隈に「病的でもいいから、白く! 細く!」が至上価値とされていた時期があって。

そういう風潮の影響もあったのか、私自身ちょっと醜形恐怖症のようになってしまったんです。予備校の授業中に自分の歯並びを舌でなぞって涙が止まらなくなったりとか、ごはんが全然食べられなくなったりとか。

でもそこから「健康に笑えるのが一番美しいんじゃないかな」「他の女の子の役にも立ちたいな」と思って、筋トレや食事の勉強をするようになったんです。そこから美容系の資格に興味が出てきて予備校の勉強よりもそっちが楽しくなっていきました。

それから予備校をやめて美容部員として働く道を選び、アカウントでも積極的にそういった発信をするようになりました。

――今はお仕事もTwitterもとても楽しくやられていそうですよね。

美容部員の仕事も、女性への憧れがベースなんです。「この人はどんな美容習慣を持っていて、私に手伝えることは何だろう」と、お客様一人一人にお仕えするようなイメージでやっています。

アカウントでの発信も、自分が美容アカウントの存在に助けられてきたので、私も誰かの役に立てればなと思って、ギブを返すようなつもりで楽しくやっています。

――アカウントでの発信で心がけていることはありますか?

「誰も傷付けない」が一番大事ですね。例えば「絶対に白い肌がいい」といった、一視点からの投稿はしないように気を付けています。間違った意味で伝わらない言葉遣いになるよう、いつも考えながら投稿していますね。

あと、排他的にならないようにしたいな〜と。美容アカウントの中には「あまり一般に向けて美容アカウントの情報を共有したくない」という考えの方もいますが、私は初心者の方にも必要な情報が広く伝わって、みんなで楽しく美容をしていけたらいいなと思っています。

――どんな方にフォローされている、などの傾向はありますか?

やはり20代後半〜30代の方が多い感じですね。でも、たまに10代の方にお化粧の基礎の質問をいただくこともあって、それに回答するのもやりがいがあります。

タッチアップ自粛中の今、コスメ垢で発信できること

――ひなさんが日頃ツイートされている中で、こういうツイートが読まれるな、という感覚はありますか?

私の場合、個々のアイテムの紹介よりも精神論の方が読まれる気がします。誰かを蹴落として自分だけきれいにいようという人間じゃなくて、中身まできれいな人間でありたいよね、といったことを日々書いているのですが、それをRTしてくれた人が結果的にフォロワーになることが多いなと思います。

あとは最近、なぜか「大きいマスクを付けるときに、ホッチキスで止めるといいよ」というツイートがバズってしまい、自分でも不思議でした(笑)。

――最近、外出時はマスクが必須になってきましたし、在宅勤務の人も多いですから、今の状況に合わせた美容情報の発信はすごく求められていると思います。

私も今は化粧品売り場がお休みで、自宅学習ということになっているんです。なので、友人とZoomをしながら「オンライン会議映えするメイク」を研究しています。パソコンの画面だと、目の下、頬骨の下が暗くなってげっそり見えちゃうんですよね。そこに白いベースをがっつり入れると改善できそう、など発見しました。

――めちゃくちゃ参考になる〜! 普段、コスメはどれくらい買うんですか?

毎月20日間は化粧品売り場で働いているわけなので、月に5回くらいは買いたい瞬間が訪れますね。買いたい欲が一番強かった時だと、美容液なども入れてですが、月に5〜6万円使ったこともありました。平均すると1〜2万円くらいですかね。

今は落ち着いていますが、家には大量にコスメがあります。四段ラックに入れて保管してます……(笑)。

――本当にすごい量! 買って楽しいのは何ですか?

ベースメイクアイテムが一番楽しいですね。美容家さんの本などを読んでいると「肌にオーラを」といったフレーズが出てくることがあるのですが、ベースメイクにこだわっていると、いい女風のオーラをまとえている感じがしてすごく楽しくなってくるんですよ。

――特に好きなブランドはありますか?

POLAは好きですね。祖母も母もPOLAを使っていたなあという記憶があるんですが、実は祖母がPOLAの美容部員だったんですよ。

――すごい!

その思い入れもあるし、POLAの「ディエム クルール カラーブレンドグローファンデーション」がとても良くて。アルビオンとかはきっちり肌が均一に見えて、それはそれで良いのですが、POLAのこれは、色が混ざって生き生きとした肌に見せてくれるので、感動しました。

メイク時間15分でも「きっちりした人に見せる」

――このあたりでメイクポーチを見せてもらっていいでしょうか。

はい。こんな感じです。

上段(ポーチ右)左から:
・キャンメイク ラッシュフレームマスカラ 01
・ZEESEA大英博物館 エィンジェルキューピッドウォーターグロスリップグレーズ
・つげ櫛

下段(ポーチ下)左から:
・MARY QUANT ミスティー ジェット
・アルビオン ホワイト パウダレスト 040
・エレガンス スリーク フェイス N PK101
・IPSA クリエイティブコンシーラー EX
・ドーリー ウインク クリームアイシャドウ 01
・MARY QUANTモアザン モイスチャー コントロール カラー 02
・エレガンス クルーズ アイカラー ウィンド RD02
・L?OCCITANE ローズ ベルベット ハンド&ネイルクリーム
・アルビオン スーパーUVカット リッププロテクション
・綿棒
・REIKO KAZKI 2wayペンシル
・AUX PARADIS オードパルファム Fraise

――これが美容部員さんのポーチ! ベースメイクのアイテムが多いですね。

友達と一緒に出かけるようなときはみんな私に顔を預けてくれるので(笑)、何でもできるように一式入れてますね。

REIKO KAZKIのアイライナーとアイブロウは本当におすすめです。絶妙な色で芯も柔らかいのでとても描きやすいんです。あと、エレガンス クルーズのアイシャドウ。締め色としても使えて、これ一つでグラデーションが作れちゃいます。

コンシーラーは口角に絶対塗るようにしているので必需品。口紅はその日の気分で変えることが多いですね。今日は中華コスメのZEESEAさんのものを入れてます。これ、ティントじゃないけどぴたっとするルージュで、全然落ちなくてびっくりしました。

――美容部員さんって、お直しもこまめにしないといけないですよね?

いえ、朝しっかりメイクしてればそんなに崩れないので、昼休みに1回するくらいですよ。

――朝はどれくらい時間をかけてメイクするんですか?

ルーティン化してるので、そんなに時間をかけていないんです。15分とか。大切にしているのは「きっちりした人に見せる」こと。ベースメイクで隙を見せないのと、口角、目尻、眉尻がシャープになるように描くのを意識しています。

――初歩的ですが、ベースメイクが崩れないコツが聞きたいです。

自分に合ったアイテムを選ぶのが一番ですけど、いろんな方のお話を聞いていると、土台が惜しい場合が多いなと感じます。スキンケアが入りきっていないのにファンデーションを塗っていたりとか。

――う、身に覚えがありすぎる!

肌をきれいに保つ上では「負荷をかけない」のがとても大事です。

美容部員の先輩に言われて、良い例えだなあと思ったのが「お肌の細胞は高野豆腐」。上から水分を入れれば入っていくけど、押しすぎると出て行ってしまう。高野豆腐を扱うように力を抜いて、時間をかけることで水分を浸透させるよう心がけています。

なので、朝もスキンケアをしてから10分置く、と決めてます。

――在宅を余儀なくされている状況で、スキンケアに力を入れているという人の話も聞きます。今だからこそできるスキンケアの提案はありますか?

そうですね〜。綾瀬はるかさんがやっている美容法として聞いたことがあるんですが、「気が付いた時にこまめに乳液を塗る」とかどうでしょう。部屋のいたるところに乳液を置いているそうです。

――確かに在宅ならでは! ちなみに、普段お客さんとの接客で心がけていることも教えて欲しいです。

商品主体でトークするのではなく、お客様主体で、相手を理解しようとするのをモットーにしています。

私たち美容部員がうまく探れるのが一番ですが、お客様からお伝えいただけるとしたらありがたいのは「今日はどれくらい時間があるか?」と「ご予算はどのくらいか?」。時間とご予算次第で、どんな風に紹介しようというのが変わってくるので、先に分かっているとお客様のご希望とのミスマッチがないんですよね。

――ひなさんに接客してほしい気持ちがMAXに……。ひなさんは、メイクで間違いなく人生が変わってきた方ですね。

自分でも絶対そうだと思います。自分の劣等感から救い出してくれたのもメイクだし、友達を作るとっかかりになったのもメイクだし、今仕事が楽しいのもメイクのおかげだし……。「きれいになりたい」という気持ちを通じて、他の方たちとリンクできて、ここまで来られました。

――今後の目標はありますか?

実は、独立してフリーのメイク講師になりたいなと思っています。

――なんと!

ブランドの美容部員という立場だと、どうしても、スキンケアのような「一度買ってもらえると継続的に顧客になってもらえるアイテム」を勧めることに時間をかけるよう求められるんですね。

でも、3,000円でアイシャドウや口紅を買いたいという方もたくさんいて、その方たちが自分に合う色を見つけられるお手伝いをじっくりしてもいいはずなんです。美容で頼れる人がどこにもいない、という人を減らせるように、頑張りたいと思っています。

――応援しています! ありがとうございました。

コスメ垢「ひな」さんの履歴書

※写真のコスメはすべて本人私物です

『だから私はメイクする』漫画:シバタヒカリ、原案:劇団雌猫

『浪費図鑑』の劇団雌猫が贈る話題書をコミック化!

メイク道を爆進するうちにあだ名が「マリー・アントワネット」になった女、“推しネイル?にハマって猛練習する女、仕事場での“アドバイス?にうんざりしている女など、メイクを通して見えてくる、「社会」や「自意識」と戦う女たちの悲喜こもごも。

「自分がどうありたいか」と向き合う、共感必至のオムニバス・ストーリー!

※この記事は2020年05月10日に公開されたものです

ひらりさ

1989年生まれ、東京都出身。ライター・編集者。女性・お金・BLなどに関わるインタビュー記事やコラムを手掛けるほか、オタク女性4人によるサークル「劇団雌猫」のメンバーとしても活動。主な編著書に『浪費図鑑』(小学館)、『だから私はメイクする』(柏書房)など。

ブログ:It all depends on the liver.
Twitter:@sarirahira

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