部下は上司が思った通りに育ってくれないものですよね。部下育成のポイントは大きく2つです。
ひとつは、自分がロールモデルになること、そのためには、まずは自分がどんなリーダーでありたいのか、自分らしいリーダーはどんなスタイルか、など、自身のスタンスを明確にしておくことです。これが描けていると、ブレないリーダーになります。
そして、もうひとつは、型を学ぶことです。リーダースタイルは様々ですが、必要なスキルは共通しています。
指導の型として知っておくべき「ティーチング」の手法を学びましょう。
■ティーチングとは何か
まずはティーチングとは何か、についてです。混同しやすい「コーチング」についても解説します。
◇ティーチングの意味
ティーチングという言葉は知っていても、具体的に何をすることなのか、がわからない人もいるのではないでしょうか。
ティーチングとは、その人(上司)が持っている知識、技能、技術を相手に教えることです。
組織の中でのティーチングといえば、ビジネスマナーからはじまり、仕事をする上で必要な知識、たとえば業界特性、会社全体の仕組み、所属する部署で必要な専門知識や技術的なスキルを具体的にやり方も含めて教えます。
このように教える人と教えられる人の関係を築き、指導していく方法です。
◇ティーチングとコーチングのちがい
ティーチングとよく混同しやすい手法に「」があります。
ティーチングは、上司など熟練者から一方向的に情報提供や教える、といった形式ですが、コーチングは、双方向間のやりとりが発生します。
上司が問いを投げかけ、それに対して部下は、自分で考えます。その発言内容を上司が聞き、更に問いを投げかけます。
この繰り返しをすることで、部下本人が気づいたり、自分が既に持っている答えを引き出されたりするのです。
その際上司は、アドバイスや答えを与えません。あくまでも、部下が自分で答えを出すのです。
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■ティーチングが有効な場面って?
さて、ティーチングはどんな場面で活用すると有効なのでしょうか。
一昔前は、上司のやっていることを見て盗め、周囲の会話にはしっかり耳を傾けて、どんなやりとりをしているのか、情報は自分でつかめ、といった指導が主流でした。
しかし、今や電話や直接会話するコミュニケーションは減っている中、その方法は無理というもの。意識的に部下に教えるための時間を作る必要があります。
一昔前のように、3年経ったら一人前の仕事をさせてもらう、という世の中ではありません。早めに知識や技術など、必要なベースを理解して、その次のステップとして、応用力を磨き、自立的に活躍できるようになる、といった流れが必要です。
上司が部下のためにティーチングに割く時間は、若手であるほど、多くなります。なぜなら、持っている知識やスキル、経験が浅いからです。
また、緊急性が高い場面にもティーチングは有効です。
本来はじっくり自分で考えて取り組んでもらいたい、気づいてもらいたい、と思っても、会社はチームで動いているため、部下が考えて実行する時間を待つことができない場面もあります。
その場合、コーチングよりもティーチングのほうが、スピーディに問題解決につながります。
◎ティーチングが有効な場面まとめ
新卒入社時など、経験スキルのない若手に教えるとき
スピーディに問題解決しなくてはならない緊急性が高いとき
■ティーチングのコツとは
続いて、ティーチングの2つの方法と、それぞれのやり方のコツを解説します。
◇ティーチングには2種類ある
ティーチングの方法は2つで、大勢一度に実施するものと個別指導です。
☆大勢へのティーチング
一時に大勢に座学で教えることで、共通した情報を同時に対象者にインプットすることが可能です。時間的にも効率がよいでしょう。
しかし、同じ情報を与えても、相手の知識やスキル、興味の度合いによって習得に差が出てしまうデメリットがあります。
☆個別ティーチング
一方個別では、相手の理解度を見ながら教えることができますから、多少時間はかかりますが、相手に合わせたスピードで理解を促すことが可能です。
◎ティーチング2つのやり方メリット&デメリット
大勢へのティーチング
メリット→短時間で済み、時間効率がいい
デメリット→理解度、収得に個人差が出る
個別ティーチング
メリット→相手の理解度に合わせられる
デメリット→時間がかかる
この2つのアプローチを状況に合わせて、使い分ける必要があります。
◇ティーチングのやり方のコツ
それぞれのやり方のコツです。
☆大勢に対するティーチングのコツ
たとえば、新人研修や、会社のルールなどを教える際には、大勢を一度にした集合研修的なものがよいでしょう。
しかし、先にも触れたように、全員が同じ理解度とは言えないですし、興味の度合いによっても集中力に差が出るものです。
そこで、座学で終わらせるのではなく、どの程度理解できたのか、を図るためのテストやアンケートを座学終了後に実施するとよいでしょう。
それによって、個別の理解度がわかるのと同時に課題も見えてきます。
たとえば、大多数が理解していなかった場合、教える側にも課題がある、とわかるでしょう。
☆個別ティーチングのコツ
個別ティーチングのコツは、一度教えて終わりではなく、何度か教える、ということです。
特に初めてのことは、一度聞いただけでは理解できないものです。そこで、何度か教えたり、質問の時間を設けたりします。
また、教えられたほうも、教えてもらった時点では理解したつもりになってしまうことも。それを防ぐためにも、教えた内容を部下に説明させる、といったやりとりをお勧めします。
わかったつもりになっていたことが、自分の言葉で説明してみると、意外とわかっていなかったり、解釈をまちがえていたり、といった発見につながります。
◎ティーチング2つのやり方のコツ
大勢へのティーチング
・集合研修的に座学を実施
・座学終了後、アンケートやテストで理解度を把握する
個別ティーチング
・理解できるまで何度も教える
・教えた内容を相手に説明させる
■ティーチングとコーチングをうまく組み合わせて成長させよう
ティーチングでベースを教えて、そのあとはコーチングで主体的に仕事を回せるようにする。この繰り返しが早期の自立につながります。
どちらか一方に偏ることなく、上司は部下の成長を見ながら使い分けるべきでしょう。
◇ティーチングに偏る弊害
ティーチング側に偏ったかかわりを続けられた部下は、自分で考えることができなくなります。
いつでも上司に聞こうとします。なぜなら、簡単に答えが得られるからです。
◇コーチングに偏る弊害
一方、コーチングに偏っていると、特に若手は、知識経験ともに浅いですから、自身の知識、経験値の中でしか発想できません。
つまり、まだ引き出しがないのに、その中からコーチングで引き出そうとしても、考える幅に限界が出てしまいます。
上司のティーチング力が部下の未来に影響する
部下育成のゴールは、部下が上司のもとを旅立ったあと、学んだことを都度、自分で考えながら臨機応変に応用させながら自立的に活躍できている状態です。
ティーチングでしっかりと知識や技術を習得している部下は、土台ができている、とも言えるでしょう。
このように考えると、上司のティーチング力は重要ですよね。
自分がわかっていることを人に教えるのもスキルです。まずは上司となったら、このスキルを意識してみてはいかがでしょうか。
(藤井佐和子)
※画像はイメージです
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