お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

チキン南蛮を躊躇なく食べられる女が持っていて、私が持ってないものなんてあるの?

マイナビウーマン編集部

前回のお話はこちら

外見80点のあい子が「勝った」と思った合コンに、刺客が登場。思いもよらない方向へと動き出します。

薫が「ごっめん!!」と個室に入ってきた。いや、そんな遅れてないし平気だよ。てか、薫の出番今日ないかもなんて思って薫を見ると、パサっとした髪をひっつめたポニーテールにマサイ族の槍かよっていう謎の大ぶりのピアス、体型がすっぽり隠れる、もう質感がゴザ並みの大きめな麻のシャツ。まじで男友だちのを盗んだのか疑いたい。ある意味ボーイフレンドデニム。

いやあのさ、例えばボーイフレンドデニムを一番セクシーに履けると認定している井川遥様がこの格好だったらさ、私も許すよ? 鬼じゃないんだし。でも当の薫は遥様とはちがう。うん、ぜんぜんちがう。日焼け止めさえ塗ってるのか疑いたくなる化粧っ気のなさ。その姿に中学時代のソフトボール部にいた同級生を思い出してしまう。

男性陣もちょっとポカン。薫はそんな様子お構いなしにハキハキとした声で「仕事が立て込んで少し遅れました! ごめんなさい」とお詫びした後、私が狙いを定めたサッカー部の向かいにドスンと座った。てめえ……。

気を取り直して、飲み物とさっぱりした前菜っぽいアラカルトを数品、由美と手分けしてささっと手配。ここで、体育会系男子のために、なんかガッツリしたものも頼みましょうよと提案するのも忘れない。やたら低カロリーのものばかり頼まれると男性は物足りないのだとマイナビウーマンが教えてくれた。

「チキン南蛮!!」

すこぶる元気のいい声が聞こえたほうを見ると、それは薫だった。

チキン南蛮……。チキン南蛮って、たっぷりと衣をつけた鶏肉を揚げて、さらに甘辛いタレを絡めて、トドメの一撃のタルタルソースでしょ。あんなの食べたら私、罪悪感で2日は何も食べられない。

「え、めっちゃお腹すかせてきたの?(笑)」とサッカー部が引き気味。

「チキン南蛮嫌い? めっちゃおいしくない? 私大好きなの!」

「いや、嫌いな男はいないけどさ、ほら30すぎると腹がやべえなって……。ちょっと気にするんだよ」

「そんなこと気にしてんの!! 私もお腹やばいけど、いいじゃん、おいしいもの食べよーよ。人生は一回だよ、今日は一緒にチキン南蛮食べよう。おいしいもん」

薫はにっこりと笑った。そのときだ。なぜか私もチキン南蛮を食べたくなったのである。悪魔の食べ物くらいに思ってたあのハイカロリーを、何も考えず無性に頬張ってみたいと思ってしまった。

その一皿が届いたあと、サッカー部はホクホクのチキン南蛮を一口ガブっとかじり、ビールを飲んだ。「ああ!! うめえええ!!」と言いながら、嬉しそうに薫を見た。

薫も笑顔で頷いて、サッカー部より大きなチキン南蛮を遠慮なく大きな口で頬張った。

「なんかうまそうだな。俺も食べたい」

由美が狙うラガーマン。「取り分けようか?」と由美が焦る。ぼんやり、このラガーマンは亭主関白になるんだろうなと思う。

「いや、これは俺らで食べるから、そっちも頼みなよ!」

俺ら。薫はこの合コン開始15分でこのサッカー部と何かを“共有”できている。おいおい、何事だよ。

鳩胸すぎるもう一方のラガーマン(もうめんどくさいので鳩でいい)が、じゃあこっちも2皿頼もうと提案。

この後薫は、チキン南蛮が好きで宮崎まで旅行したエピソードや「カイロ大学はえっとね、ぶっちゃけノリと勢い」という理由を告白。男性陣を笑わせたり呆れさせたり、彼らを楽しませた。

でもやっぱりその雰囲気は、一緒に話す部活の友だちのような領域を超えない。由美や私は会話こそ少ないが、男たちは女の子としてていねいに優しく扱っていた。当然だ。薫に私と由美が負けることなどないのだ。隣の席の鳩は常に、私に「飲み物は大丈夫か?」と聞いてくれたし、由美が狙っているラガーマンから頭をポンポンとされているのも目撃した。女の子扱いされるって、なんでこんなに優越感に浸れるんだろう。そんなにがんばって話さなくても、私は大丈夫。という謎の優越感。

でも、「芸能人でいうと誰がタイプ?」という話題で事態は一変する。

次回、薫のあるひと言をきっかけに、男性陣の態度がガラリ。あい子の優越感はガラガラと音を立てて崩れ落ちます。

次の更新は7月20日(金)です。

(文:桑野好絵/マイナビウーマン編集部、イラスト:黒猫まな子)

※この記事は2018年07月13日に公開されたものです

SHARE