【妊娠出産のウソ&ホント】妊娠中は氷が食べたくなるってホント?
将来妊娠したい、したくないに関わらず、妊娠・出産は未知の世界。出産未経験の女性たちが感じている妊娠・出産にまつわる素朴なギモンについて、産婦人科専門医の尾西芳子先生がわかりやすく教えてくれます。ウソかホントかわからない情報に惑わされずに、正しい知識を身につけましょう!
妊娠してから、無性に氷が食べたくなったという先輩ママはけっこういるようです。はたから見ると、ちょっと異常な行動に見えるけれど、それは妊娠が原因なのでしょうか? もしそうなら、なぜ氷を食べたくなるのでしょうか。そこで今回は、そんな氷にまつわるウソ&ホントに迫りました!
本日の「ソボクな疑問」
Q.妊娠中は氷が食べたくなるってホント?
<読者の声>
・氷を食べるということは、何かの栄養素が足りていないらしく、それを摂りたいという表れらしい。(24歳/建設・土木/その他)
・たまに聞くので、ガリガリ感がいいんだと思う。(24歳/金融・証券/営業職)
・むくんだりしてほてりやすくなるから、冷たいものが食べたくなりそう。(26歳/その他/その他)
・わからないが、体を冷やしてはいけない気がする。(34歳/医療・福祉/専門職)
尾西先生のアンサーは!?
答えは……
「ホント」です!
とはいえ、全員がなるわけではありません。これは医学的には「氷食症」といって、その名の通り、氷を食べることがやめられない症状です。
発症する理由は2つあり、ひとつは「強迫神経症」という精神疾患です。強迫神経症は、とにかく手を洗っていないと気が済まないなど、ひとつの物ごとにとらわれてしまう病気で、こういう人の中には「氷をずっと食べていないと気持ちが悪い」という人がいます。妊娠は人生にとって大きな転機ですので、精神疾患の素因がある人は妊娠をきっかけに発症してしまうこともあるでしょう。もし、何かに極端にこだわる症状があれば、一度心療内科へ相談に行くのがいいかもしれません。
そして理由2つめは、「氷食症」の原因で圧倒的に多い「鉄欠乏性貧血」です。メカニズムは解明されていませんが、貧血になると無性に氷を食べたくなるようです。ですから、読者の声にもありますが「何かの栄養素が足りていない」というのは、まさに“鉄分”が不足していると考えられます。
「ガリガリ感がいい」とのコメントがありますが、たしかにストレスや食べづわりなどで、ずっと何かを口にしていないと落ち着かない人にしてみれば、ガリガリと食べられる氷はいいかもしれません。ただ、こちらはアメなどでも代用可能です。そのほか、もしかすると、あたたかい食べ物より冷たい物のほうが匂いが抑えられるので、つわりの人でも口にしやすいという側面はあるかもしれませんね。
また、妊娠するとホルモンの影響で体温は高めになるので、「ほてりやすくなるから冷たいものが食べたくなりそう」という気持ちもわかりますが、だからといって妊婦すべてが氷を食べたくなるわけではないので、こちらも氷食症の原因ではないと思いますよ。
「体を冷やしてはいけない気がする」というコメントにあるように、冷たいものは胃腸にもよくありません。それに、体が冷えれば子宮の血流も悪くなり、赤ちゃんの発育にも影響してしまうので、やたらと氷を食べるのは避けたいものです。
ですから、氷食症が鉄欠乏性貧血からくるものであれば、貧血を改善するために、ひじきやホウレン草など鉄分の多いものを積極的に摂るようにしましょう。またダイエットをしている人は肉を控えがちですが、植物性食品よりも動物性食品に含まれている鉄分のほうが吸収率はいいので、牛肉や豚肉などもしっかり食べることをオススメします。
そして、鉄欠乏性貧血は妊娠中でなくても起こることですから、未婚の方も「そういえばずっと氷を食べているかも」など思い当たる節があれば、一度貧血の検査をしてもらいましょう。
(取材協力:尾西芳子、文:ヨダヒロコ、撮影:masaco)
※次回の更新は9月10日(土)です。お楽しみに!
※画像はイメージです
※この記事は 総合医学情報誌「MMJ(The Mainichi Medical Journal)」編集部による内容チェックに基づき、マイナビウーマン編集部が加筆・修正などのうえ、掲載しました(2018.07.26)
※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください
※この記事は2016年09月03日に公開されたものです