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正社員のいない会社が誕生するって本当?「本当」

来年4月から「派遣」の法律が改正され、最長1年間(原則)の派遣期間が3年に拡大される。一見、働くひとにはメリットがありそうだが、落とし穴も多く、とくに専門性の高い仕事にたずさわる人は、やる気が薄れる可能性が高い。

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企業にとってはおいしい話で、3年ごとに人が変われば、永久に派遣社員を雇うことができるように変わる。正社員がひとりもいない会社が誕生しても、おかしくない時代がやってくるのだ。

正社員は必要なし?

現在の派遣労働は「専門26業務」と「その他」に大別されているが、来年4月からは差がなくなるのがポイントだ。

専門26業務とは、

・財務処理
・通訳/翻訳/速記
・秘書

など、その名の通り専門性の高い職種は、同じ派遣期間の制限がない。また、3年以上同じ企業にいると、企業が正社員を雇う際に、そのひとに雇用を申し出る義務が生まれる。つまり「うちの会社で働きませんか?」と、スカウトされる権利があるのだが、改正後は「その他」と区別がなくなるので、このメリットは消える。

期限も最長3年間に短縮され、正社員化のチャンスもなくなってしまうから、高度な知識やスキルを身につけたひとほど「やってられるか!」感が高まるはずだ。

対して、その他の業務の場合、派遣期間はひと毎に原則1年、業務毎に最長3年と定められている。つまり、毎年ひとが変わっても、派遣社員を雇えるのは部署や仕事ごとに3年までと制限されているのだ。

これは「なんとなく」更新を続けるのを防止するためで、「必要なら正社員を雇いなさい」の意味も込められている。

期間延長は、派遣労働者にとって有り難い話だ。ただし、もっとも得をするのは受け入れる企業で、業務ごとの最長3年ルールが廃止されるため、ひとが変われば永久に派遣社員に任せられるのだ。極端な例だが、正社員が誰もたずさわらない業務が生まれたり、全員が派遣社員の部署が存在してもおかしくない。

社長以外は全員派遣社員の会社が誕生する可能性も、大いにあるのだ。

正社員になるのは10年後?

契約社員も来年4月からルールが変わり、契約期間の上限が5年から10年に延長される。働くひとにとってラッキーな話に聞こえるかも知れないが、むしろ、正社員になる可能性が低くなっているのだ。

上限5年の根拠は労働契約法第18条で、同じ会社に5年を超えて働いたひとは「正社員にしてね」と申し込むことができる。これは無期転換ルールと呼ばれ、通算なので契約期間が3年+2年+1年のような場合でもOKだ。

ところが、来年4月からは特例として10年まで拡大でき、契約期間内は無期転換ルールが適用されなくなるのだ。

この特例は、プロジェクトなどで期間が設定できる場合にのみ適用され、たとえばダム建設や医薬品の開発など、始まる前から5年以上かかるとわかっている仕事が対象となる。つまり、あらかじめ5年以上かかると伝えておけば、正社員化する必要がない、の意味だ。

無期転換ルールが適用できるか否かでモメごとが多かったのが改正理由だが、正社員を増やしたいのか減らしたいのか、良くわからないシステムだ。大企業がアルバイト/パートの正規雇用に動くなか、逆行しているように思えてしかたない。

まとめ

・来年4月から、派遣期間の上限が「ひとり3年」に拡大される

・3年ごとにひとが変われば、無期限で派遣社員を受け入れられる

・契約社員も、特例で期間を10年まで拡大できる

厚生労働省の資料によると、15~34歳の非正規雇用労働者のうち、41%は正社員になることを望んでいるというデータがある。

企業向けに正規雇用化の助成金が存在するなか、この改正が裏目にでないことを祈ろう。

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2014年05月16日に公開されたものです

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