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専門医に聞く、働く女性の「睡眠の悩み」の今―「寝る前のスマホ」「睡眠改善薬と睡眠導入剤」

林田健一

働く女性の悩みのひとつに、「睡眠」にまつわる不満があります。厚生労働省が実施した調査によると、20代~30代女性の約半数が「寝つけない」「寝ても途中で目がさめてしまう」といった経験が「ときどきある」「頻繁にある」と回答(平成23年国民健康・栄養調査)。睡眠の悩みを解消するにはどうすればいいのでしょうか。スリープ&ストレスクリニック院長の林田健一先生にうかがいました。

睡眠トラブルにつながる生活習慣

■ベッドでのスマホは厳禁!? よい睡眠の常識・非常識

「私のクリニックでは1カ月に約1,000人の患者さんがいらっしゃいますが、そのうち2割くらいが20代~30代の女性です。その背景には遅い時間までハードに働く女性の増加はもちろん、スマートフォンやパソコンなどで強い光を浴びる機会が増えたといった生活習慣の変化が考えられます。また、コンビニエンスストアやファミリーレストランなど24時間営業の店舗が増えたことも、生活のリズムを狂わせる一因にも。特に、一人暮らしの場合、夜型になりやすいので要注意です」

普段の何げない生活習慣が睡眠トラブルにつながっているようです。では、どのようなことに気をつければいいのでしょうか。

「まず、眠りにつきたい時間帯の1~2時間前になったら、なるべく静かにリラックスして過ごすのがポイントです。コンビニの強い照明やテレビのつけっぱなしは脳を覚醒させてしまう恐れがあります。パソコンの画面の光も同じく目が冴えてしまうので、就寝前の作業はできるだけ避けましょう」(林田先生)

意外と見落としがちなのが、携帯電話やスマートフォンの覚醒作用。画面を見たり、入力していると、脳は覚醒し、眠気も吹き飛んでしまうそうです。

「ベッドに入ってから、携帯電話やスマートフォンでサイトチェックやメールのやりとりをするのも禁物です。『なかなか寝つけないから』と、ちょっとしたリラックスのつもりがかえって目が冴えてしまうことに。視覚からの刺激は想像以上に脳に与える影響が大きいため、寝る直前には携帯電話やスマートフォンはできるだけいじらないようにしましょう」(林田先生)

また、「週末はゆっくり寝坊をして、平日の睡眠不足を取り戻す」という習慣も、睡眠のリズムを狂わせ、質を低下させる原因に。

「平日も休日も起きる時間は同じにし、リズムを狂わせないことが大切です。いつもより長めに睡眠時間をとりたいときは、就寝時間を早めるのがコツです」(林田先生)

さらに、「眠たくないのにベッドに入る」のも、逆効果だとか。

「『寝なくてはいけない』と焦れば焦るほど、かえって寝つけなくなるものです。どうしても眠れないようなら、思い切ってベッドから出てみるのも手。好きな音楽を聴いたり、本や雑誌を読んだりしながらぼんやり過ごしてみましょう。時計を見ると焦るので、なるべく見ないよう心がけます。『眠れなければ、眠れなくてもいい』と開き直ると、案外眠れるようになることもあるんです」(林田先生)

■「睡眠改善薬」と「睡眠導入剤」のちがいとは?

最近ではドラッグストアでも「睡眠改善薬」を目にする機会も増えました。病院で処方される薬とはどうちがうのでしょうか。

「一般に病院で処方される薬は睡眠導入剤(睡眠薬)、ドラッグストアや薬局などで購入できる薬は『睡眠改善薬』と呼ばれます。これらはまったくの別ものです。睡眠改善薬は風邪薬やアレルギー薬に入っている抗ヒスタミン剤の“眠くなる”という副作用を利用しています。緊急避難手段として一時的に使う分には問題ありませんが、長期使用はNG。睡眠改善薬のパッケージや注意書きにも「日常的に不眠の人」「不眠症の診断を受けた人」は服用しないでくださいと書かれています。うまく眠れない状態が1カ月以上続くようなら、専門医に相談することをおすすめします」(林田先生)

睡眠障害を専門に診察する「睡眠外来」も全国的に増えています。

「まず知っていただきたいのは、睡眠障害とひとくちに言っても、その症状はさまざまだということです。たとえば、夜眠れない『不眠症』もあれば、十分な睡眠時間はとれているのに昼間眠くなる『過眠症』もあります。原因も心理的なストレスや体内時計の乱れ、慢性的な睡眠不足など多岐にわたります」(林田先生)

睡眠外来では問診や検査を通じて問題をつきとめ、治療方針を決定。必要に応じて、生活習慣のアドバイスや投薬治療が行われます。

「睡眠導入剤は寝つきを良くしたり、朝まで安定した睡眠を持続できるようにするための薬です。間違ったイメージを抱かれている方も多いのですが、最近の睡眠導入剤は医師の指示どおり使用すれば大きな副作用は起きません。効き目がおだやかな薬からはじめることがほとんどですし、医師の指導のもと、適切に使えばきわめて安全です」(林田先生)

(取材協力:林田健一、文:齋藤純子+ガールズ健康ラボ)

※画像はイメージです

※この記事は 総合医学情報誌「MMJ(The Mainichi Medical Journal)」編集部による内容チェックに基づき、マイナビウーマン編集部が加筆・修正などのうえ、掲載しました(2018.06.28)

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください

※この記事は2014年02月17日に公開されたものです

林田健一

スリープ&ストレスクリニック院長。日本睡眠学会評議員・認定医。日本精神神経学会専門医。睡眠医療、精神医学の専門家として、メディアでも活躍。著書に『睡眠不足がなくなる日』などがある

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