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【新連載】神さま、どうか今年こそあの人と縁を切れますように……

そういうわけでわたしとその男性は、
遅いランチを食べることになった。
男性は中尾孝弘さんという地元出身の人で、
今は東京で機械設計の仕事をしているそうだ。

中尾さんは「ここがおいしいです」と、
紹介してくれたのは岩棚からすぐの、
昭和の時代にタイムスリップしたような、
古くて味わいのある食堂だった。
シラス丼はシラスと温泉卵とカイワレが、
絶妙な割合でとてもおいしかった。

「ぼくが小さくてまだバブルの余韻が、
少しだけ残っている頃は、
江ノ島ってお正月もそうでない普通の日も、
人がこんなに来るところじゃなかったんです。
今でもまだそのイメージが残ってるから、
人出が多いといちいち驚いちゃう」
「そうだったんですか」
「ええ。島の入り口から岩場まで、
友だちとかけっこができるくらいでした」

窓からは遠く海がキラキラ光って見えた。
中尾さんはきっとわたしより若いけれど、
落ち着いていて、温かい人。
助けてくれたのがこの人で本当によかった。

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