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【心理学】正常性バイアスとは? 及ぼす影響や対策を紹介

永瀬なみ(幸せコラムニスト・カウンセラー)

「正常性バイアス」とは、予想外の出来事が起こった時に無理やり「正常だ」と思い込もうとする心理のこと。今回は心理カウンセラーの永瀬なみさんに、正常性バイアスの意味や具体例、陥らないための対処方法を解説してもらいます。

「正常性バイアス」という言葉を知っていますか?

正常性バイアスとは、簡単にいうと正常ではないことを正常だと思い込もうとする心理のこと。「正常化の偏見」や「日常性バイアス」とも呼びます。

この心理は自分や周りにいる人を危険な状況に追い込む恐れがあるため、特に非常事態が起こった時は注意しなければいけません。

そこで今回は、正常性バイアスという心理学用語について、意味や具体例、陥らないための対策などを紹介します。つい人の意見に流されてしまいがちな人や空気を読むのが上手な人は、ぜひ参考にしてみてください。

正常性バイアスの意味は?

まずは正常性バイアスという心理について、意味や概念を解説します。

正常性バイアスは「予想外の事態を正常だと思い込む心理」

「正常性バイアス」とは、「正常性を保とうとするバイアス」のこと。バイアス(Bias)とは、先入観や偏見といった意味を持つ言葉です。

もう少しかみ砕いて解説すると、予想外の出来事が起こった時に無理やり「正常だ」と思い込もうとする心理のことを正常性バイアスといいます。

予想外の出来事が起こった時に「正常だ」と思いたがるのは、いわば一種の自己防衛本能といえるでしょう。なぜなら、毎日の生活には予期せぬ出来事が付き物だからです。

1日24時間もあれば、全ての出来事が予想通りに進む方が珍しいと考えられます。

例えば、天気予報では晴れると言っていたのに雨が降ったり、急いでいるのに電車が時間通りに来なかったりすることは予期せぬ出来事の1つです。

そんな毎日の中で、予想外の出来事が起こるたびに心の底から動揺したり怒ったりしていては身が持ちませんよね。そこで登場するのが、正常性バイアス。私たちは自分の心が疲れすぎてしまわぬよう、正常性バイアスの働きによって気持ちをコントロールしているのです。

正常性バイアスは「認知バイアス」の1つ

正常性バイアスは、「認知バイアス」という心理の1つに分類できます。

認知バイアスとは、偏った思考や思い込みによって正しいとは言い切れない判断をしてしまう心理のこと。

認知バイアスと呼ばれる心理には、実にたくさんの種類があります。その中の1つが、正常性バイアスなのです。

認知バイアスについての詳細はこちらの記事をチェック!

【心理学】認知バイアスとは? 事例や種類一覧、対策を紹介

正常性バイアスの具体例

心の平穏を保つためには必要な正常性バイアスですが、中には注意しなければいけないケースもあります。

それは、本当に危険な状況なのにもかかわらず「大丈夫だ」と思い込んでしまうケースです。

本来なら「異常事態だ!」と判断しなければいけない状況で正常性バイアスが機能してしまうと、自分や周りにいる人たちの身を危険にさらす恐れがあります。

災害における正常性バイアスの例

過去の火災や震災時には、正常性バイアスが働いたと思われるケースがありました。

例えば、韓国で起こった地下鉄の放火事件。本来なら自ら進んで避難しなければいけないほど危険な状況にもかかわらず、アナウンスに従いその場でじっと待っている人、まるで人ごとかのように携帯を見ている人などが大勢いたといいます。

また、災害時によく耳にするのが「まさかこんなことになるとは思わなかった」という言葉。東日本大震災が起こった際にも「まさかここまで津波が来るとは思わなかった」という言葉をよく耳にしました。

これらは、まさに正常性バイアスが働いた証拠ともいえるでしょう。

また、コロナ禍における私たちの心理にも正常性バイアスは関係しています。

毎日コロナの話題に触れていることで緊急性を感じなくなったり、「私は丈夫だから感染しない」や「ちょっとくらいなら大丈夫だろう」などと思ったりするのは、正常性バイアスが原因かもしれません。

正常性バイアスに注意すべきシーン

他にも、こんなシーンでの正常性バイアスには注意が必要です。

・うまい話が舞い込んできた時

・自分と周りの感じ方にギャップがある時

・お金を貸してほしいと言われた時

これらのシーンでは、慎重かつ客観的に判断しなければ後悔することになるかもしれません。特に注意が必要なのは、自分では違和感を抱いているのに周りが大丈夫だと言っている時です。

実は、私たちには「同調」という心理も備わっています。

同調とは「周りの人と同じ行動をしたい」と思う心理のこと。なぜ同調したくなるのかというと、「その方が安全だ(間違いがない)」と思うからです。

例えば、買い物をする時に「ヒット商品」や「売れ筋」といったキャッチコピーのついた商品が気になったことはありませんか?

実は、これも同調心理の一種。「売れている=良い商品なのだろう」と思うため、私たちは安心して購入するのです。

正常性バイアスに陥らないための対策3つ

では正常性バイアスに陥らないためには、どのようにすれば良いのでしょうか。

ここからは、正常性バイアスに陥らないための対策方法を3つ紹介します。

(1)正しい情報を事前にそろえる

正常性バイアスに陥らないためには、とにかく正しい情報を事前にそろえておくことが大切です。

何よりも大切なのは、誤った情報に踊らされないこと。そのためには、本当に信用できる情報なのかをしっかり調べる必要があります。

「○○さんが言っていたから絶対に大丈夫」ということはありません。“誰が言っていたか”ではなく、“信用できる情報か”という視点が大切です。

(2)自分で判断する癖をつける

自分で判断する癖をつけることも、正常性バイアスに陥らないためには大切です。

“自分で判断する”ということは、“他人の意見に流されない”ということ。自分の中に違和感があるなら、違和感が消えるまで追求することが大切です。

ただし、日頃から練習していなければ万が一の時に自分で判断するのは難しいでしょう。特に自分の意見を優先するのが苦手な人は、ぜひ今日から「違和感が消えるまで追求する」という意識を持ってみてください。

(3)最悪の事態を想定して動く

もう1つの対策方法は、判断する前に最悪の事態を想定することです。

例えば、災害時には「もし避難しなかったら最悪の場合どうなる?」と考えてみてください。

どんな場合でも、何かを判断する時には「もしこの判断が間違っていたら、最悪の場合どうなる?」と考えてみるだけで、結果は変わってくるはずです。

何もなければそれに越したことはありません。ですが、“いったん立ち止まって考える”という行為をしなかったために最悪の事態が起こってしまえば、もはや「後悔、先に立たず」です。

特に何でも楽観視しがちな人は、何かを判断する時には最悪の事態を想定するよう習慣づけることをおすすめします。

流行や集団行動が好きな人は要注意

今回は正常性バイアスという心理学用語について、意味や具体例、陥らないための対策などを紹介しました。

正常性バイアスに陥りやすい人の特徴として、流行が好きなことや集団行動が好きなこと、人目を気にしがちなことなどが挙げられます。

これらに当てはまる人は特に、万が一の時には“周りがどう動くか”を基準に判断してしまわないよう、くれぐれも注意してくださいね。

(永瀬 なみ)

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