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【心理学】認知バイアスとは? 事例や種類一覧、対策を紹介

高見綾(心理カウンセラー)

「認知バイアス」という言葉を知っていますか? 思考の偏りや思い込みによって非合理的な判断をしてしまう現象を、心理学では「認知バイアス」と呼びます。心理カウンセラーの高見綾さんに、認知バイアスの意味や種類、上手な付き合い方を解説してもらいます。

誰もが持っている思考の偏りや思い込みを表す「認知バイアス」。この言葉を聞いたことはあっても、どういう意味か分からないという人もいるかもしれませんね。

今回は、認知バイアスの意味や具体的な事例・種類について解説します。

認知バイアスに支配されないための対策も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

認知バイアスの意味は?

まずは、認知バイアスの意味や概念を紹介します。

認知バイアスとは「偏った思い込みによって判断してしまうこと」

認知バイアスとは、誰もが持っている「思考の偏り」や「思い込み」によって、合理的でない判断をしてしまうことをいいます。バイアスとは「偏り」という意味です。

例えば、初対面で眼鏡をかけている人がいたら「頭が良さそう」「真面目そう」というイメージを抱いてしまいませんか? 実際のその人をよく知らないのに、先入観で見てしまうことはありますよね。

これまでの経験に基づく先入観、自分の考えが正しいという思い込みなど、さまざまな要因から、こうした認知のゆがみが生まれてしまうのです。

認知バイアスが引き起こされる原因

認知バイアスは、アメリカの行動経済学者ダニエル・カーネマンとイスラエル出身の心理学者エイモス・トベルスキーにより研究されました。

私たちは、日々大量の情報を処理しているため、直感的に処理する「システム1」と、合理的に思考する「システム2」を使って対応していると考えられています。なお、「システム2」は、「システム1」で答えが出せない場合にのみ働きます。

「システム1」は、じっくり考えるプロセスを飛ばしているため、自分に都合の良い情報しか取り入れないなど、さまざまな偏りが生じがちです。それによって認知バイアスが引き起こされるとされています。

合理的に思考する「システム2」は、「システム1」で答えを出して、それが正しいと思い込んでしまったものについては作動しません。そのため、バイアスがかかりやすい「システム1」で結論を出すと、そのまま偏った判断になってしまうことがあります。

もちろんここで、バイアスがあることを自覚していれば、「システム1」で結論を出したものを「システム2」を使って意識的に捉え直して結論を出すことは可能です。

認知バイアスの種類一覧

認知バイアスにはたくさんの種類がありますが、その中でも特に知っておくと役に立つものがあります。

ここでは、それらをできるだけ簡単に紹介します。

確証バイアス

自分が正しいと思う考え方を肯定する情報ばかりを集めてしまうことを「確証バイアス」といいます。

AかBを選択する際、自分が良いと思ったAの支持意見を集めて「ほら、みんなもAが良いって言ってるよ」と主張してしまう場面はありますよね。

自分に都合の良い情報ばかりを集めて意思決定しようとしてしまうのです。

正常性バイアス

身の回りで異常事態が起こっても「自分だけは大丈夫」「大したことにはならないだろう」と考えて、ストレス回避する心理現象を「正常性バイアス」といいます。

例えば、詐欺の注意喚起のニュースを見ていたのに、自分だけは大丈夫だと思い込んでいた結果、だまされてしまう人がいます。地震や台風などの災害の際に逃げ遅れてしまう人がいるのも、この心理が働いたためだと考えられています。

自己奉仕バイアス

物事がうまくいった時は自分が頑張ったからだと思い、うまくいかない時は周りや環境のせいだと思う心理現象を「自己奉仕バイアス」といいます。

自尊心を守るため、自分の失敗はあまり認めたくないという心理が働き、このような偏った見方になってしまうのです。

後知恵(あとぢえ)バイアス

物事が起きた後に、予測できたことだと錯覚してしまう心理現象を「後知恵バイアス」といいます。

例えば、あるカップルが別れた時に、「やっぱりね。あの2人はうまくいかないと思った」と、さも分かっていたかのように言う人。ここには、後知恵バイアスが働いている可能性があります。

バンドワゴン効果

バンドワゴン効果はいわゆる「勝ち馬に乗る」ことで、「多くの人が支持しているものは正しい」と思いやすい心理現象のことをいいます。

例えば、SNSでたくさんのフォロワーやいいねを集めていたりすると、このバンドワゴン効果が作用し、「優れた人」「良い商品」であると認識してしまう傾向にあります。

コンコルド効果

今までに投資したコスト(お金、時間、気持ち)を無駄にしたくないという気持ちから、損失になると分かっていてもそのまま投資を継続してしまう心理現象を「コンコルド効果」といいます。

「この人とはもう別れた方が良い」と思っていても、「○年も付き合ったのにもったいない」と感じて別れるに別れられなくなるようなケースが、これに該当します。

アンカリング効果

最初に提示された条件や数値が基準となり、その後の意思決定に影響を及ぼすことを「アンカリング効果」といいます。

「セミナーが10,000円のところ、今月だけは半額の5,000円で受講できます」と言われると、最初から「セミナーは5,000円です」と提示された場合に比べてお得だと感じますよね。

マーケティングではよく活用されている心理効果です。

ハロー効果

ある対象について、学歴や外見、肩書などの目立つ特徴に引きずられて、その他の評価も影響を受けることを「ハロー効果」といいます。

例えば、立派な肩書がある人の言動にはポジティブなイメージを持ち、外見の印象が悪い人に対してはネガティブなイメージを持ってしまう。

このように、見た目の印象で相手を高く評価したり低く評価したりする現象が、ハロー効果なのです。

認知バイアスに支配されないための対策

誰しもが持つ「思考の偏り」や「思い込み」によって、非合理的な判断をしてしまう認知バイアス。

ここでは、そんな認知バイアスに支配されず、上手に付き合うための対策を紹介します。

(1)認知バイアスがあることを自覚する

まず、自分がさまざまな思い込みや先入観を持っていることを自覚するところから始めましょう。

無意識のうちに認知バイアスに陥りやすいことが分かっていれば、重要な決断をする際には意識的に気をつけようと思えるものです。

(2)判断を保留にする

他人に対する評価は、さまざまなバイアスがかかりやすいものです。

第一印象やその他の目立つ特徴だけで結論を出してしまうのではなく、情報の1つとしてストックしておきましょう。

材料がそろうまでは判断を保留にしておく姿勢を持つと、過度な思い込みを避けられるようになります。

(3)違う考え方に耳を傾ける

認知バイアスに陥らないためには、複数の考え方を集めて検証してみることが有効です。

「自分の考え方が正しい」と思いたくなってしまうものですが、「本当にそうなのか?」と疑う視点を持って反対意見にも耳を傾けてみましょう。複数の視点から物事を見ることで、合理的な判断ができるようになります。

(4)数値データを収集する

何かを判断する際には、何となくという感覚で考えるのではなく、根拠となる数値データを集めてみるのがおすすめです。

例えば、ニュースを見て「高齢者の自動車事故が増えている」という印象を持ったのなら、実際の年齢別の事故件数をチェックしてみる習慣をつけましょう。そうすれば、客観的なデータをもとに正しい判断ができるはずです。

認知バイアスの自覚が、思考の偏りを防ぐ最大のポイント

認知バイアスは日常に溢れています。

まずは、自分自身の中に今までの経験をもとにした偏った先入観、思い込みがあると自覚することが、認知バイアスに陥らないための大切なポイントです。

特に重要な判断については、自分の考え方だけに固執せず、他の人の意見を聞いてみたり、数値データを集めてみたりして客観的に考えるようにしましょう。

(高見綾)

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