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生理前・生理中にむくみが出るのはなぜ? 原因と解消するための対策とは

松峯美貴(産婦人科医・医学博士)

生理の前や生理中に足や顔などがむくんでいるような気がしませんか? なぜ生理周期に伴ってむくみの症状が出るのでしょうか。産婦人科医の松峯美貴先生にむくみの原因と解消法について伺いました。

朝起きて鏡に映るむくんだ顔にうんざりしたり、いつものパンプスが履きづらかったり……生理(月経)が近づくころ、顔や足が腫れているように感じることがありませんか?

今回は不快なむくみと生理との関係や対処法をまとめます。

※この記事では月経について、一般的な表現である「生理」という言葉を使ってお伝えします

女性の生理周期とむくみの関係は?

毎月の経験から、むくむ具合で「そろそろ生理が始まる!?」と察知する人もいるかもしれません。生理周期とむくみについて説明します。

なぜ? むくみの原因とは

まずは、むくみ※とはなんなのかについて、簡単に押さえておきましょう。

むくみとは「皮膚の下(細胞と細胞の隙間)に水分が必要以上に貯まっている状態」のこと。

体の約6割を占める※※水分は、体の中では細胞のほか、血管やリンパ管、そして細胞間質液(細胞と細胞の間を埋めている液)にあります。

細胞以外の水分は、血管から間質へ滲み出たり、間質から血管へ戻ったりしながら、通常は一定の水分割合を保っています。

しかし何かしらの原因で、毛細血管から間質に出る水分が多くなる、もしくは間質から毛細血管に戻る水分などが減ることで、間質内の水分が増えてしまうと「むくみ」の状態になるのです。

※「むくみ」は一般的な言い方で、医学的には浮腫(ふしゅ)と言います。
※※成人の場合。

生理前は顔や足がむくみやすい

そんな「むくみ」ですが、生理とはどんな関係があるのでしょうか。女性の体内で分泌される女性ホルモンの量は、生理周期の中で変化しています。

黄体ホルモンの分泌が増加

排卵後、生理の前の時期は「黄体期」と呼ばれ、「プロゲステロン=黄体ホルモン」の分泌が増加します。その作用で体内の水分を調節するホルモン(レニン)の活性が高まり、結果、体に水分が貯まりやすくなると考えられます[*1]。

生理前のこの時期は、むくみやすい状態にあるということですね。

PMSでもむくみは起こる

生理前3〜10日ぐらいの黄体期の後半ごろは、イライラ、気分の落ち込み、乳房の痛みや頭痛、お腹の張りなど、心身ともにさまざまな不快な症状が現れることがあります。その際に、むくみが出ることもあります。

これは「月経前症候群(PMS)」と呼ばれ、生活に支障をきたすほどの強い症状がある女性も5.4%いるとされています[*2]。

PMSの原因は明確になっていませんが、主にプロゲステロンによるものと考えられています。

生理のある日本人女性の7、8割が生理前に何かしらの症状があるというほど、PMSは珍しくない病気です [*2]。しかし、生理痛を“生理は病気じゃないから”と我慢している人が多いように、PMSのつらい症状も我慢している人が少なくありません。

確かに生理そのものは病気ではないですが、PMSは適切な治療で改善が期待できる病気です(生理痛も!)。症状があるときは我慢しないで、ぜひ婦人科に相談してください。症状の程度や原因を確認し、改善に向け一緒に対処していきましょう。(松峯先生)

生理中もむくみやすい?

PMSは一般的に「生理が始まると症状が軽減するか、なくなる」とされますが、生理中もむくみを感じる女性は少なくないようです。

それは、すべてのむくみが生理周期と関係しているわけではないため。むくみを引き起こす原因の中には、治療を必要とする疾患(甲状腺機能低下症、膠原病、心疾患、腎疾患など)もあるので、「単なるむくみ」と軽く考えて放置するのは禁物です。

むくみがひどい、むくみ以外にも症状があるという場合には、速やかに医療機関(内科など)の受診をお勧めします。

参考記事はこちら▼

むくみが起こる原因と解消法について、医師が解説します。

【むくみ対策】予防・解消法

病気など特別な原因がない“軽いむくみ”は、セルフケアで予防・改善できることもあるので、試してみましょう。

自分がむくみやすい時期の少し前から、むくみやすい期間には特に気をつけてみてください。

同じ姿勢を長時間続けない

ふくらはぎの筋肉は足から心臓に血液を戻すポンプの役目を果たします。休憩時などにふくらはぎを動かすことを意識して軽い運動を!

足踏みやつま先の上げ下げ、つま先立ち歩き程度の軽い運動もOK。社内の別のフロアへの移動に階段を使うのも効果ありです。

足の締め付けに注意する

過剰に体を締め付ける下着や、先の細いパンプスなどはなるべく控えましょう。

極端な食事制限はNG

食事を制限するようなダイエットで必要な栄養が不足すると、体の水分調整がうまくいかなくなり、むくみにつながることがあります。

代謝に影響するだけでなく、貧血や無月経などの生理の異常、骨量の低下といった全身の問題につながってしまうこともあります。

手軽な︎むくみケアを実践

ぬるめのお風呂にゆっくりつかる、弾性ストッキングを利用するなど、手軽にできることを試してみましょう。

十分な睡眠をとる

寝不足のときは、むくみが起きやすくなります。体の求めに応じて十分な睡眠を確保しましょう。心身のコンディションを整えるには25〜45歳の場合、夜間に約7時間、連続して眠れるように工夫を![*3]

普段からなるべくうす味の食事がおすすめ

塩分(ナトリウム)をとりすぎると、体内に水分を留めようとする仕組みがはたらきます。

塩辛い食べ物を続けて食べたり、塩分とりすぎになりがちな麺類が続かないようにしましょう。また、アルコールのとりすぎはむくみのリスクになります。おつまみは塩気が強いものが多いので、気をつけましょうね。

参考記事はこちら▼

むくみを解消する食べ物について医師が解説します。

水分の飲み過ぎはいけませんが、むくむからと言って水分摂取を控えるのはNGです。脱水になると内臓などにかかる負担は大きくなりますし、水分不足の状態では体が水分を貯め込もうとします。

水分を過不足なくとって、トイレを我慢しないで、自然な水分代謝を保ちましょう。

参考記事はこちら▼

お茶に含まれるどんな成分がむくみに効果的なのか、普段飲むお茶をどんなものに変えればいいのかを料理家が教えます。

漢方薬を用いることも

むくみに関しては、利尿剤のほか漢方薬などが用いられることがあります。状況に応じて一番適した治療方法がとられますので、まずは医師に尋ねてみましょう。(松峯先生)

参考記事はこちら▼

むくみに対して漢方がどんな効能があるのかを専門医が教えます。

ひどいむくみは早めの受診して

女性ホルモンの影響などで、生理前を中心にむくみやすさを感じる女性は少なくありません。生理に関連したつらい症状は「仕方がない」と思ってしまいがちですが、我慢せず婦人科で相談しましょう。

また、なんらかの疾患からむくみが起こっている可能性もありますので、ひどいむくみやむくみ以外にも症状がある場合などは早めの受診を。

なお、生活の中にもむくみのリスクは潜んでいます。ある程度であれば生活の中で予防やケアができますので、普段から気をつけてみましょうね。

(文・構成:下平貴子、監修:松峯美貴先生)

※画像はイメージです

参考文献

[*1] 「Health Management for Female Athletes Ver.3」p26,29-30
http://femaleathletes.jp/pdf/180315_HMFAver3.pdf

[*2] 産婦人科外来パーフェクトガイ.医学書院,P82,83

[*3] 厚生労働省 健康づくりのための睡眠指針2014
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf

[*4]大阪大谷大学薬学部 閔 庚善著「生活習慣病におけるミネラル栄養と健康食品」
http://www.phs.osaka-u.ac.jp/homepage/yaku/sotugo/pdf/h19_02_1.pdf

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