お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

生理周期が短いのは異常? 月経不順の原因と対策 #女の体と心の保健室

及川夕子

自分の生理周期を、きちんと把握できていますか? 生理周期のことで悩んだことはありませんか? 生理周期が短かったり長かったりするなど、生理周期の乱れには何か原因が隠れているかもしれません。今回は「生理周期が短くなったと不安に感じる場合」の原因や対策について、産婦人科医の高尾美穂先生に聞いてみました。

1カ月で2回生理が来るのって異常? 原因と対処法

今回のお悩み
「1カ月で2回来ることがあって、2週間後に来たときはちょっと不正出血ではないかと不安になった」(35歳/医療・福祉/専門職)

お話を伺ったのは……高尾美穂先生

イーク表参道の副院長・高尾美穂先生イーク表参道 副院長/産婦人科専門医・医学博士・婦人科スポーツドクター。
東京慈恵会医科大学大学院修了後、同大病院産婦人科助教、東京労災病院女性総合外来などを経て現職。大学病院では婦人科がん(特に卵巣がん)専門。西洋医学をベースに、ヨガ、アンチエイジング医学、漢方、栄養学、スポーツ医学を多角的に用い、女性の心身をさまざまな角度からサポートすることをライフワークとしている。

生理周期の短さで悩む女性は約2割

アンケート「生理周期が短いことで悩んだことはありますか?」

読者アンケートで、生理周期について聞いてみたところ、周期が短いことで悩んだことのある人は2割弱という結果に。約6人に1人の割合で、自分の生理周期は短いと感じている女性がいるようです。

・「月に2回来るときとかもある。しんどい」(28歳/アパレル・繊維/販売職・サービス系)

・「たまに予定より早く来ることがあり、びっくりすることがある」(33歳/金融・証券/その他)

・「毎回毎回早くなって来ていてもう生理かと悲しくなる」(28歳/自動車関連/技術職)

・「終わったと思ったらすぐに生理が来るので貧血気味になる」(39歳/生保・損保/営業職)

・「周期が定まっていないため、下着を汚しやすい」(38歳/その他/事務系専門職)

このような声が挙がりました。一方で「毎月ほぼ同じサイクルで生理が来る」という人も多くいました。生理周期の捉え方やそれによる困り具合は、個人差が大きいようです。

※マイナビウーマン調べ
調査日時:2019年5月31日~6月3日
調査人数:387人(25~39歳の働く未婚女性)

私の生理周期は問題ない? 正常かどうかの目安とは

整理(月経)の周期が正常な状態と短くなった状態

――生理周期が安定していてきっちり来るという人もいれば、バラバラで安定しないという人もいます。そもそも、生理周期が正常とはどのような状態をいうのですか?

高尾先生:月経周期(生理周期)とは、生理がはじまった日から次の生理がはじまる前日までの期間を指します。正常な生理周期は25~38日の範囲内で、3日~7日間出血が続くものとされています(毎月の変動はプラスマイナス6日以内)。生理周期って、結構「幅」があるものなんですよ。

――そうなんですね。すると25日周期の人だと、月に2回生理が来ることもあり得ること……。月に2回生理が来る=異常というケースだけではないんですね。38日周期の人は、前の生理から1カ月以上経って次の生理が来る……。個人差が大きいのですね。

生理がきちんとあることは「エストロゲン」が出ている証

高尾先生:ところでみなさんは、生理はどうやって起こるのか、生理があるということから何がわかるのか、考えたことはありますか? とても大事なことなので、まずはそこから説明をしていきましょう。

子宮という臓器は、幼児期には親指大くらいの大きさで、大人になると鶏卵大ほどの大きさになります。この子宮の成長を助けているのが、卵巣から出される「エストロゲン」(卵胞ホルモン)という女性ホルモンです。「エストロゲン」は、いうなれば「女性らしさのホルモン」。肌のハリや潤いを保つ、髪をしなやかに保つ、骨を丈夫にする、血管の柔軟性を保つなどの働きが知られています。目に見えないところでせっせと働いて、女性の体を守ってくれているのが「エストロゲン」です。

さて、この「エストロゲン」には大事なわかりやすい働きがもうひとつあって、それは「生理を起こす」という働きです。生理が来ているということは、「エストロゲン」がちゃんと出ている証といえるんです。

――たしか、女性ホルモンには、「エストロゲン」と「プロゲステロン」(黄体ホルモン)という2種類のホルモンがあって、その分泌リズムと生理周期とは連動しているんですよね?

高尾先生:その通り。流れとしては、まず「エストロゲン」の分泌量がピークになったあとに排卵が起こります。だから、私たちが妊娠するためには、「エストロゲン」がちゃんと出ていることが大切です。ちなみに猫は、性交渉をきっかけに排卵が起こるんですよ。毎月の生理周期ごとに排卵する人間とは仕組みが全然ちがいますね。

さあ、まだまだ続きますよ。排卵後、私たちの体は妊娠しているかもしれないと考えて、妊娠を継続させるために、「プロゲステロン」というホルモンを出します。そして排卵の約2週間後、妊娠が成立しなければ、子宮に用意していた赤ちゃんのためのベッド(子宮内膜)を手放していきます。これが生理として私たちが目にするものです。生理は、こうしたホルモンの一連の変化の最後に起こる出来事なんですね。ですから、生理の状態が変だなあと気づいたら、その前の体調や生活の様子はどうだったかということを、自分で振り返ってみることが大事です。

また、体の仕組みとして、排卵から生理がはじまるまでの日数は14日間と決まっていますが、生理が来てから次の排卵までの日数には個人差があるんです。後者の日数が11日の人なら生理周期は25日になるし、24日なら38日というサイクルになるんですね。

月経周期と女性ホルモン(28日周期の場合)

20~30代女子の生理周期が短くなる原因

―― なるほど。生理周期にもともと幅がある理由がよくわかりました。ただ、今回の生理が「2週間後に来た」というような状況はなぜ起こるのでしょうか。何か異常があると考えたほうがいいのでしょうか?

高尾先生:生理周期が短くなる原因のひとつとしては、まず「プロゲステロンの分泌量が減る」ということが考えられます。たとえば、年齢を重ねて生理学的に妊娠を継続させなくてもいい年代(更年期以降)になってくると、「プロゲステロン」の働きが悪くなったり分泌量が減ったりして、生理周期が短くなることがあります。これを「黄体機能不全」といいますが、時に20〜30代でも起こることがあります。

ただ、20〜30代女性で生理周期が短くなる原因としてより疑わしいのは「無排卵性月経 」です。この場合は排卵がないまま生理(のように見える出血)が起きていることが考えられます。

さきほど紹介したように、生理というのは、妊娠に備えて整えられた子宮内膜が妊娠成立しなかった場合に不要になり、剥がれ落ちる現象です。上の「月経周期と女性ホルモン」の図を見るとわかるように、排卵前は「エストロゲン」、排卵後~生理前は「プロゲステロン」がメインで分泌されています。そして、「プロゲステロン」の低下がきっかけとなって生理が起こります。

「無排卵性月経」では「エストロゲン」は分泌されるのですが、排卵が起こらず「プロゲステロン」が分泌されません。この場合、「エストロゲン」の働きで子宮内膜は少しずつ厚くなり続けますが、排卵がなく「プロゲステロン」が分泌されないので、体はいつ生理を起こしていいかわからなくなります。

その結果、子宮内膜がある程度厚くなってしまい、維持できなくなることにより「破綻出血」といって、だらだらと不規則に 出血するような症状が起こるのです。普段より出血が少ない、出血がだらだらと続く。このような症状があったら、「無排卵性月経」の可能性があります。

――「無排卵性月経」や「黄体機能不全」になってしまう理由には、どのようなことが考えられますか?

高尾先生:生理周期って意外とナーバスで、ライフスタイルや環境の変化に影響されることが多いんです。2、3カ月前の出来事や状況が、今の生理に反映されていると考えて。たとえば、引っ越し、人事異動、体重の変化(大きな増減)などがなかったか、振り返ってみましょう。

というのも、女性ホルモンの分泌をコントロールしているのは、脳の視床下部というところ。視床下部は、自律神経をコントロールする司令塔でもあり、ストレスの影響を受けやすいのです。視床下部が影響を受ければ、卵巣からのホルモン分泌にも影響が出て、生理周期が乱れたり、「無排卵性月経」を引き起こしたりすることもあります。

生活習慣だけで生理周期をコントロールすることはできませんが、ストレスや環境の影響を受けやすいということはぜひ覚えておいてください。できるだけ体への負担やストレスを減らすことで、生理周期の乱れをある程度避けられる可能性もあります。

基礎体温を測ることを習慣にしよう

基礎体温を測ることを習慣にしよう! 測定のポイント

――無排卵性月経や黄体機能不全が起きているかどうか、確かめる方法はありますか?

高尾先生生理の異常を感じて、次の月も生理の状態がおかしいな? と感じたら、基礎体温を測ってみましょう。毎日、血液検査をしないとわからないホルモンの変化が体温を測るだけで知ることができ、体のトラブルが起きていないかチェックできます。女性にとって、とてもオススメの方法です。

――正常な状態では、基礎体温のグラフは高温の時期と低温の時期に分かれるのでしたね。

高尾先生:プロゲステロンの働きのひとつは、体温を上げることです。基礎体温で高温期があれば「プロゲステロン」が出たといえます。ということは、その前に排卵があって、「エストロゲン」が出たといえるわけです。

基礎体温の情報は、婦人科を受診する際にとても役に立ちます。生理がはじまった日と終わった日の記録と、できれば3周期くらい前からの基礎体温の状態がわかると診断の役に立つだけでなくアドバイスできることも増えます。基礎体温の基本的な計測方法も知っておいてくださいね。

基礎体温測定のポイント

  • 婦人体温計と基礎体温表を用意
  • 毎日、起床時に測ること
  • 生理の記録も一緒につけておく

※生理周期はストレスなどいろいろな物事から影響を受けます。1カ月分では傾向がわからないことも多いので、少なくとも23周期分は記録してみましょう

※最近は基礎体温記録用のアプリも出ているので、活用してみるのもいいでしょう。ただし、数日分だけしか記録が見られない場合は、婦人科にかかった場合に医師が適切な診断をしづらいため、2、3周期分を一度に見られるようにしましょう

基礎体温でわかる生理不順の兆候

<正常な基礎体温>低温相と高温相の二相に分かれている

<正常な基礎体温>低温相と高温相の二相に分かれている

<無排卵性月経が疑われる基礎体温>二相に分かれていない

<無排卵性月経が疑われる基礎体温>二相に分かれていない

<黄体機能不全が疑われる基礎体温表>高温相が短く、低温相との差があまりない

<黄体機能不全が疑われる基礎体温表>高温相が短く、低温相との差があまりない

――基礎体温を測ったり、生活習慣を見直したりして、生理周期が正常範囲に戻って来れば、あまり心配はいりませんか? こんな場合には婦人科を受診したほうがいいという目安はありますか?

高尾先生:重要なことは、病気が隠れていないか、排卵があるかどうか。先ほども述べたように、ストレスやダイエットが原因だと考えられる場合には、生活習慣を見直すことが第一です。その結果、周期が順調になったら回復したと見てよいですよ。

生活の改善をしても、生理の異常が3カ月以上続いているという場合には婦人科を受診してください。そのときは基礎体温のグラフを持参してくださいね。

――自分の生理周期を見ておくと、ホルモンが理想的に分泌されているかがわかり、将来、妊娠したいときにも役立ちますね。自分の体のことは普段からよく知っておき、未来のためにも大切にしたいものです。高尾先生、ありがとうございました!

生理周期に異常を感じたらまずやるべきこと

  • 1.基礎体温をつける
  • 2.最近、大きなストレスや環境の変化、体重の増減などがなかったかチェック
  • 3.不摂生があれば見直して、できる限りストレスを減らすような生活を心がける(生活の見直しで改善しない場合は婦人科を受診しましょう)

(取材・文:及川夕子、監修:高尾美穂先生、イラスト:クー)

※画像はイメージです

SHARE