男性の「何食べたい?」に対する正しい答え方
ハイスペック男性が集まるカフェバーに、編集部のIとSが潜入。前回は、カフェバーのオーナー・南さん、有名企業で働く東大出身のAさんとおしゃれ系男子・Mさんの3人に、結婚相手に求める条件を聞いてみた。
編集部I(以下I):あの、ひとつ聞いていいですか? うなぎ屋で合コンして、松竹梅のうな重があったとして、どれを頼むのが正解ですか? ちなみに私は“生意気な女”と思われたくなくて、梅を選びました。
私は思わず、先日の合コンの顛末を話してしまった。オーナーの南さんも加わってハイスペック3人衆が目の前にいる。なんだか就活の最終面接のようだ。果たして、私は選ばれる女なのだろうか。
A:まず、なんでうなぎ屋で合コンしたの?
I:うなぎが食べたいねっていう話になったんですよ。Sも一緒に行ったんですけど。
編集部S(以下S):玉の輿に乗りたいんです、私。なので、同年代の男性との合コンはほぼ行かない。で、年上の男性に「何が食べたいの? なんでもいいから言いなさい」って言われて、思わずうなぎと答えてしまいしました。
南:それでうなぎしかない店に行く男性も男性だなぁ(笑)。
M:僕、それ男性陣にも配慮がなかったと思うんだよね。
I:ほう! その心は?
M:女の子に選ばせるんじゃなくて、前もって頼んでおいてもよかったかもね。だって、どう転んでもうなぎしかないんでしょう? 松竹梅の。じゃあ「メインのうな重は人数分頼んでおいたから、ほかに食べたいものを自由に頼んでね」って言えばいい。肝焼きとか前菜とかお漬物とかお酒とかさ。そうしたら気まずくないような気がする。まあ、僕の個人的な意見だけどね。
S:頭いい! そうですよね……。私、玉の輿に乗ること以外人生の目標がないから、会話上手な人とか気を使える人とか、そういうのを後回しにして年収しか見てない。でも、本当のハイスペック男性ってMさんみたいな人なのかも。
Sが本物のハイスペック男性を前に感銘を受けている。Sは良くも悪くも猪突猛進。年収3,000万円に狙いを定めたら、彼女いない暦40年の男性も射程圏内に入る。そして、うなぎ屋でうろたえる夜を迎えることになる。
私の場合、どれだけモラハラなことを言う彼氏でも、高学歴ということで5年耐えた。で、結果振られた。こっぱみじんに。彼が真剣白刃取りみたいに勢いよく頭の上に振り下ろしてくる刀を、両手で受け止め続けた5年。最後は、思いっきりその刀で私の思考や価値観、自己肯定感をしっかり崩壊させられて終わった。
A:水を差すようで申し訳ないんだけど、いいですか?
I:はい。もうこの際、水浸しにしてください。
A:僕は、「何が食べたい?」っていう質問に、「うなぎ!」って答えるのは潔くていいとは思うんです。でも、おごってもらうことが前提なら、相手にもちょっと選択肢与えてもいいんじゃないですか?
S:え、なにそれ。難しいです。前に男性にアンケートをとる企画で、「なんでもいいって言われるより、食べたいもの答えてくれたほうがいい」って結果が出たんですよ。
A:もうそれ、職業病みたいになってますね(笑)。
南:僕の個人的な意見だと、「昨日は麻婆豆腐を食べたから、中華以外がいいな」とか助かる。NGをひとつ出してもらえると、「じゃあイタリアンにする?」とか言えますよね。
M:ひとつ指定されるより、和洋中だと和がいい、みたいな。ざっくりとした方向性があると、とてもありがたいです。
I:じゃあドンピシャはだめですか? 「お蕎麦がいい!」とか。
A:ドンピシャがあるならいいよ。お蕎麦がどうしても食べたいなら行きましょう(笑)。
S:その合コンの幹事の男性は、年収が高そうだけど女性慣れしてなさそうだったので、私は食べ○グで☆4.0以上・予算ひとり1万~1万5,000円のお店のURLを送りました。これはどうですか?
男性一同:それはイヤだよ!!(笑)
I:「何食べたい?」の正解がわかりません。
A:男性を“おごってくれるお財布”として見てるかどうか、それって感覚とか関係性とか、いろいろ総合的に見て感じてしまうんです。だから、正解なんてないと思います。友だちと「何食べる?」ってなったときに「うなぎにしよう!」という会話は別に普通だと思うんですけど、そこで高級店のURLを送ります?
S:送りません。自分のお金じゃ行けないですもん。
A:ですよね。そこにもう利害関係が生まれてるような気がして、イヤになります。男だって人間ですから。友だちにはやらないことを幹事の男性にやっていいってことにはならないじゃないですか。
M:これまた僕の個人的な感覚だと、初めてごはんを食べに行くときに「何食べたい?」って聞いて「お肉!」って言われるのはいいんだけど、「お寿司!」って言われるのはイヤ。絶対そういう目(メッシー的な)で見てるじゃんってなるんだよね。もちろんAの言うように、関係性とかでまた変わるんだろうけど。
I:MさんやAさんのようなステイタスの人って、そういう目で見られることは仕方ないと割り切ってるのかと思ってました。
M:いや、僕はまず、食事を通してその子と友だちになりたい。その上で、僕のほうが金銭的に余裕があるので払うことは厭わない、という考え方かな。
友だちになりたい―――。
思わずハッとした。AさんもMさんも普通に人間だ。対人間として接してほしいという、人として極めて当たり前のことを言っている。ここまでさらけ出して言うのもなんだが、私もSも基本的には常識人だ。毎日ちゃんと働いている社会人だし、会社での人間関係も円滑に進めている。もちろん、仲のいい友だちだってちゃんといる。老人や妊婦さんが目の前に立てば、条件反射で席も譲る。
でも、ある特定の人間には、その当たり前の常識というものがよくわからなくなってしまう。いとも簡単にいつもの自分は崩れ、対ハイスペック、対高学歴、対高収入という渦に飲み込まれてしまう。みんな人間なのに。
南:自分がされてイヤなことはしないっていうのは、大事だよね。IさんとSさんの話を聞いてて、昔の恋人を思い出しました。
温和でやさしい笑顔の南さんが、おもむろに話し出す。
南:僕が社会人になりたてのとき、大学生の彼女がいたんですよ。そりゃこっちは学生よりは稼いでますから、当然彼女にお財布を出させるようなことはしなかったんです。でも、それがだんだん当たり前になっていくわけです。
S:はい、胸が痛いです……。
南:でね、とうとうその彼女、ありがとうも言わなくなったんです。お会計してる僕を待たずに店を出て、そのまま何も言わずに歩き出す。彼女が社会に出たときに上司にご馳走になることもあるじゃないですか。そこでこの態度だったらまずい。でも、まだ彼女は学生なので、そこは僕が言わないとわからないのかもなって思ったんです。
I:やさしい……!
南:彼女には「2人でおいしいものを食べるのは幸せだし、楽しい時間を過ごせる。僕もそれを望んでるから、食事代を僕が払うのは構わない。だけど、ありがとうのひと言はほしいな」って言ったんです。
S:それに対して、彼女はなんて言ったんですか?
南:ごめんなさいって謝ってくれました。でも、やっぱりそれを忘れちゃうんですよね。毎回。そのたびに、「ありがとうは?」って言うようなこともしたくないじゃないですか(笑)。なので、その彼女とはお別れしました。
I:友だちにおごってもらったら何度もありがとうって言うし、今度は私がおごるからねって言うかも……。
S:それですよ、それ!
A:うん、それだね。そういう普通のことを言えたり、できたりしない子が多いよね。女の子の前に、人間として普通のこと。
M:僕は「ありがとう。今度は私が払うね」って言って、カフェ代を払ってくれたり、コンビニでコーヒーを買ってくれたりするだけでとてもうれしい。
A:僕も大好物のチロルチョコを買ってほしい(笑)。
おいしいビーフシチューを頬張りながら、ケラケラ笑う3人を見ていると、地元の仲がいい男友だちとなにも変わらないとぼんやり思う。思いやりと感謝。欲望と打算に埋もれて、人間関係で一番大切なことをすっかり忘れていた。チロルチョコなんて今すぐ100個でも200個でも買って差し出したいくらいだ。
チロルチョコを買える女と買えない女。答えのヒントが見つかったように思った。
ドサ!
私は勢いよく、数冊の雑誌をテーブルに置く。
M:ちょっと、今度は何!?
I:この女性誌の中で、デートしたい女の子のコーディネートを選んでください! モデルの顔は加味しないで!
ちょっとお酒が回ってきた。バイトのケイシーくんは、1時間前のキラキラした目で私とSをもう見てくれない。引き気味のケイシーくんにハイボールをもう一杯頼む。とりあえずこのバーで私が失うものは、もうない。
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(文:マイナビウーマン編集部、撮影:前田立)