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「させていただく」は敬語として間違い? 正しい使い方と言い換え表現を解説

合田敏行

ビジネスメールやプライベートのシーンで、「させていただく」の使い方について悩んだことはありませんか? 自分では正しいと思っていても、実は誤用という場合も。今回は、「させていただく」の使い方や言い換え表現について、ビジネストークや敬語の講師を務める合田敏行さんに教えていただきました。

「させていただきます」はビジネスシーンでよく耳にする言葉ですよね。しかし、使い方には注意が必要ということをご存じでしょうか。

今回は、「させていただく」の正しい意味や使い方、よくある誤用について解説します。目上の方や上司に不快な印象を与えないような表現や言い換え方を学びましょう。

「させていただく」は正しい敬語? 基本的な意味と使い方

そもそも「させていただく」は正しい敬語なのでしょうか? 以下で詳しく見ていきましょう。

「させていただく」の意味

「させていただく」は「させてもらう」の謙譲語であり、正しい敬語といえます。

そのため、基本的にはビジネスシーンで使用して問題ないでしょう。

「させていただく」が使える場面

「させていただく」は正しい敬語であるものの、「相手の許可が必要な時」に使う言葉であるということをご存じでしょうか。

例えば、会員として認められた時に「入会させていただく」、車に乗せてもらった時に「同乗させていただく」といった使い方をします。

また、学費を出してもらって「留学させていただく」、職場の理解を得て「休業させていただく」など「大きな恩恵を受けた時」にも使用可能です。

 

「させていただく」の正しい使い方【例文】

前述したように「させていただく」は、「許可」と「大きな恩恵」の基準に照らし合わせて使います。以下、正しい例文を2つ紹介します。

「○○様の計らいで、出席させていただきました

「休暇申請を認めていただいたので、お休みさせていただきます

「させていただく」を使う時の注意点

ビジネスシーン以外でも「させていただく」を見聞きする機会は多いのではないでしょうか。

ここでは、使用時の注意点をよくある誤用例とともに紹介するので、具体的に見ていきましょう。

(1)許可が必要ないものに「させていただきます」を使わない

前段で「させていただく」を使う時は、「許可」と「大きな恩恵」の基準に照らし合わせる必要があると説明しましたが、許可が必要ないものに使用しているシーンをよく見掛けます。これは誤用となるので注意が必要です。

例えば、街頭演説などでよく耳にする「このたび、立候補させていただいた○○です」があります。

これは自らが強い意欲で立候補したのなら「立候補いたしました」で良いでしょう。

「皆さまの支援を受けて立候補した」という意味で使う気持ちもあるのかもしれませんが、道行く人にそのように呼び掛けてもしらじらしいだけだと、私は感じてしまいます。

また、お店の貼り紙で、「本日休業させていただきます」という文を目にすることはありませんか。お客さまに対してへりくだった意識があるのでしょうが、これも許可が必要なことではないため誤用といえます。

気持ちとしては、お客さまの許しを得て休業しているから使用しているのかもしれません。もしそうだとしたら、その気持ちまで否定できるかどうかは悩ましく、これが言葉の難しいところともいえるでしょう。

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本記事では、「お休させていただきます」が正しい敬語なのか解説。言い換え表現も紹介します。

 

(2)「させていただきます」を多用しない

「させていただきます」の多用もよく見掛ける誤った使い方です。

例えば、結婚式のスピーチなどであいさつをする時に、「あいさつさせていただきます」「まず、自己紹介からさせていただきます」「では、本題に入らせていただきます」と「させていただきます」を連発してしまう人がいます。

何度も同じ表現を繰り返してしまうと、その連呼が気になって、肝心な話の内容が頭に入らないということになりかねません。

意識せず「させていただく」を使っている人は多いため、多用しすぎないよう気を付けましょう

(3)「させて頂く」と漢字表記にしない

ビジネスシーンではメールなどで、「させていただく」という言葉を用いることもあるかもしれませんね。

この時、「させて頂く」と漢字表記しないように注意しましょう

「させていただく」の「いただく」は補助動詞であり、その場合はひらがなを用いるのが一般的です。書き言葉で用いる場合には、表記にも気を付けるように意識してくださいね。

「お〜させていただく」は二重敬語? 特に気を付けたい表現とは

「させていただきます」の使い方として迷うものに、「お~させていただく」が挙げられます。例えば、「お送りさせていただく」「お預かりさせいただく」は二重敬語になるのか気になるという方もいるのではないでしょうか。

結論から言うと、二重敬語は間違いとする人もいますが、これは程度の問題で、違和感のない表現であれば、世の中は許容すると私は思っています。

しかし、私が過剰に感じる表現がいくつかありますので、参考までに2つ紹介しますね。

(1)お伺いさせていただきます

よく「お伺いさせていただきます」といった表現を目にしますが、これは「伺います」の時点で、謙譲表現が入っているので過剰表現です。丁寧な気持ちを加えたとしても「お伺いします」で十分でしょう。

これに「伺う」+「いたす」で「お伺いいたします」と、謙譲表現を2つ重ねたらどうでしょうか。二重敬語には当たりますが、それほどくどく感じないなら日常生活では許容範囲かと私は感じます。

しかし、「お伺いさせていただく」になるとどうでしょう。「お〜する」「伺う」という謙譲表現に「いただく」が重なっています。ここまでくると、違和感のある表現だと感じる人も多いため、避けた方が良いでしょう。

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日常会話やビジネスシーンでよく耳にする「お伺いします」という敬語。実はこれ、間違いやすく注意が必要な言葉です……

 

(2)お送りさせていただきます

では、「お送りさせていただきます」はどうでしょう。

こちらも「お~する」という謙譲表現に、「いただく」が重なっています。これもやや過剰で、「お送りします」「お送りいたします」で十分です。

そこまで神経質になる必要はありませんが、「させていただきます」を付けることで過剰な敬語となり違和感を抱く方もいるため、なるべくシンプルな表現をおすすめします。

「させていただく」の言い換え表現

「許可」と「大きな恩恵」の基準に当てはまらないシチュエーションの「させていただく」は、「いたします」「します」で置き換えられます。

例えば、「あいさつさせていただきます」なら、社内の会議など身内のコミュニケーションであれば「あいさつします」で十分です。外部の方に対してなら「あいさついたします」「ごあいさついたします」で踏みとどまりましょう。

また、許可や恩恵を具体的に言うことによって敬意を伝えることもできます。これは「させていただきます」の多用が気になる場合にも活用できるのでおすすめです。

例文

「ご確認させていただき、お渡しさせていただきます」→「確認し、お渡しします

「入会させていただきありがとうございます」→「皆さまのご厚意で入会を認めてくださりありがとうございます」

敬語を使う時は配慮と感謝の気持ちをいかに相手に届けるかが大切

昔から敬語は「立場の上下を言葉遣いで明らかにする」ためのものと考えられてきたのかもしれません。しかし現代では、上下を表す言葉ではなく、お互いのコミュニケーションを円滑にするためのものと考えたら良いと思います。

相手への配慮、感謝を伝えるのが敬語の大きな役割です。エチケットに相当するといっても良いでしょう。

正しい敬語でも相手がカチンとくるフレーズもあれば、間違っていてもその人の気持ちが感じられ、許容されるケースもあるのです。

これからあらゆるシーンで言葉の使い方について考える時、相手の方への「配慮、感謝」をどう伝えるか、また伝わっているのかを優先させた上で、正しい敬語を意識してみてくださいね。

(合田敏行)

※画像はイメージです。

※この記事は2023年08月30日に公開されたものです

合田敏行

一般財団法人 NHK放送研修センター 日本語センター部長

1958年生まれ。1980年東京大学文学部国語国文学科卒。同年NHK入局。アナウンサーとして「ひるどき日本列島」「ロボコン」などを担当。日本語センターでは、企業や自治体向けに、ビジネストーク・聞く力・敬語とマナーなどをテーマに研修を実施。著書に「敬語の使い方が面白いほど身につく本」(あさ出版)。

日本語センター https://www.nhk-cti.jp/

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