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「判断を仰ぐ」の意味とは? 言葉の成り立ちや使い方・例文・類語・言い換え表現

にほんご倶楽部

「判断を仰ぐ」とは、主に目上や自分より多くの能力・知識を持つ人の判断を求める際に使われます。言葉自体は敬語ではないため、ビジネスでは「ご判断を仰ぎたく存じます」といった表現にしましょう。今回は「判断を仰ぐ」の意味や使い方、例文、類語や言い換え表現を紹介します。

「判断を仰ぐ」は、目上の人などに判断を求めることを意味します。

日常会話で使われることは少ないですが、ビジネスシーンでは多く使用されます。そのため、正しい意味や使い方が分からずに困っている人も多いでのはないでしょうか。

この記事では、「判断を仰ぐ」という言葉の意味や成り立ち、正しい使い方について詳しく解説していきます。また、「判断を委ねる」などの類語との違いについても説明するので、ぜひ参考にしてください。

「判断を仰ぐ」の意味とは?

「判断を仰ぐ」は「はんだんをあおぐ」と読み、主に目上の人や、自分より多くの能力・知識を持つ人の判断を求める際に使われます。

求める相手への敬意が込められた表現なので、日常会話で使われる機会は少ないものの、ビジネスシーンでは頻繁に使用されます。

ビジネスシーンにおいては、自分自身の判断だけでは立ち行かなくなることも多いので、ぜひ積極的に使用していきたい言葉だといえるでしょう。

「仰ぐ」と「扇ぐ」の違いは?

「仰ぐ」と同じく「あおぐ」と読む言葉に「扇ぐ」がありますが、これらはまったく異なる意味を表します。

「扇ぐ」の「扇」の字は「おうぎ」とも読み、現代で言うところの「うちわ」を表します。そこから、「扇ぐ」はうちわで風を送ることを意味し、判断などを求める意味では使用できません。そのため、「判断を扇ぐ」と書くと誤用になってしまうので注意しましょう。

「判断を仰ぐ」の成り立ちは?

「判断を仰ぐ」という言葉は「判断」と「仰ぐ」に分けられます。

このうち「判断」の意味は、辞書を引くと以下のように掲載されています。

判断(はんだん)
(1)物事の真偽・善悪などを見極め、それについて自分の考えを定めること。
(2)吉凶を見分けること。占い。
(3)《judgment/(ドイツ)Urteil》論理学で、ある対象について何事かを断定する思考作用。また、その言語表現。普通は「sはpである」「sはpでない」という形式をとる。
(小学館『デジタル大辞泉』)

このうち、「判断を仰ぐ」で使われる「判断」の意味は、(1)の「物事の真偽・善悪などを見極め、それについて自分の考えを定めること」です。物事が良いか悪いかなどで悩んだ際、目上の人の考える能力を借りるというニュアンスになります。

続いて、「仰ぐ」の意味を辞書で引くと、以下のように載っています。

仰ぐ(あおぐ)
(1)上を向く。上方を見る。あおむく。
(2)尊敬する。敬う。
(3)教え・援助などを求める。請う。
(4)あおむいてひと息に飲む。あおる。
(小学館『デジタル大辞泉』)

このうち、「判断を仰ぐ」の「仰ぐ」が表すのは、(3)の「教え・援助などを求める。請う」の意味です。

「仰ぐ」はもともと「上を向く」が原義ですが、そこから立場が上の人を「尊敬する」、そして今回の「求める、請う」などの意味に派生していきました。

その結果、「仰ぐ」は尊敬のニュアンスを帯びるようになりましたが、厳密には尊敬語ではありません。そのため、「判断を仰ぐ」という表現は、目上の人に限らず、自分より優れた能力を持つ人の判断を求める際にも使用できます。

「判断を仰ぐ」と「指示を仰ぐ」の違いは?

「判断を仰ぐ」と似た言葉に「指示を仰ぐ」がありますが、厳密には意味・ニュアンスが異なるので注意しましょう。

まず「指示を仰ぐ」は、何かを始める前に意見(指示)を求めることを表します。端的に言えば「何をすればいいかを尋ねる」ということです。例えば、「次にすべきことについて、指示を仰ぐ」のように使います。

その一方、「判断を仰ぐ」は基本的に、すでに始めていることの内容についての意見(判断)を求める際に使われます。端的に言うと「どうすればいいかを尋ねる」ということです。例えば、「プロジェクトの問題点について判断を仰ぐ」のように使います。

「判断を仰ぐ」の敬語は?

「判断を仰ぐ」には、前述のように尊敬のニュアンスが込められていますが、正式な敬語ではありません。そのため、目上の人に対して使う際は、別途敬語を添えて表現するように注意しましょう。

具体的には、まず「判断」に丁寧な意味を表す接頭辞「お」を付けて「ご判断」としましょう。続いて、「仰ぐ」に「存じます」や「させていただく」を添え、「仰ぎたく存じます」「仰がせていただきたいです」などと表現するとよいでしょう。

ただし、これらは正しい敬語表現ではありますが、場合によって冗長に響く可能性もあります。そのような心配がある際は、後述する「類語・言い換え表現」を織り交ぜて使うようにしましょう。

「判断を仰ぐ」の正しい使い方(例文付き)

「判断を仰ぐ」を使う際は、「○○の判断を仰ぐ」と、具体的な人物を添えて表現するのが正しい使い方です。「○○」に入る人物は、目の前にいる人物だけでなく、その場にいない三人称の人物でも大丈夫です。

また、「判断を仰ぐ」は目上の人の判断を求める際に使われることが多いですが、専門的な能力・知識を持つ人であれば、目上か目下かに関わらず使用可能です。例えば、自分より詳しい部下の「判断を仰ぐ」といった使い方も問題ありません。

「判断を仰ぐ」の正しい使い方について、以下の例文でも確認しておきましょう。

例文

・プロジェクトの決定には、社長の判断を仰ぐ必要があるでしょう。

・今後の方針について、部長のご判断を仰ぎたく存じます。

・部下のA君が法律に詳しいから、詳しくは彼の判断を仰ごう。

・我々は医学に疎いので、医者の判断を仰がなければならない。

「判断を仰ぐ」の類語・言い換え表現

「判断を仰ぐ」という言葉には、いくつかの類語・言い換え表現が存在します。それぞれに表すニュアンスが異なるので、場面に応じて適切なものを使い分けることが大切です。

ここでは、代表的な4つの表現について確認していきましょう。

「判断を委ねる」

「判断を委ねる(ゆだねる)」は、「判断を仰ぐ」と同様に、自分以外の人に判断してもらいたいときに使える表現です。

「委ねる」は「任せる」とほとんど同じ意味で、全面的に頼りにするニュアンスを表します。そのため、「判断を委ねる」と言うと、その件についての詳細をすべて相手に任せる意味になります。

なお、「判断を委ねる」には尊敬のニュアンスは含まれないので、目上の人に使う際は、「ご判断を委ねる」などと、敬意を表す語句を添えて表現するようにしましょう。

「ご教示いただく」

「ご教示いただく」は、目上の人に何かを教えてもらう際に使われる表現です。

「教示(きょうじ)」とは、何かを教え示すこと。後述する「教授(きょうじゅ)」と違って、理屈などでなく、目の前ですぐ示せることを表して使われます。

なお、「ご教示いただく」は敬語表現なので、目上の人以外には使えません。

「ご教授いただく」

「ご教授いただく」は、先述の「ご教示いただく」と同様に、目上の人に教えてもらうことを表す表現です。

「教示」がすぐ示せるものを意味したのに対し、「教授」は理屈などが伴うものを教えることを表します。そのため、多くの場合、専門的な知識や芸術、技術などの教えを求める際に使われます。

なお、こちらも目上の人相手には使用できないので注意しましょう。

「ご指導ご鞭撻のほど」

「ご指導ご鞭撻のほど」とは、目上の人に対して、未熟な自分を導いてほしいという願いを伝える際に使われる慣用表現です。

「ご指導(しどう)」は、何かを指し示して導くことを表し、「ご鞭撻(ごべんたつ)」は、鞭(むち)を打つように強く励ます様子を表します。

「ご指導ご鞭撻のほど」は非常にフォーマルな表現なので、ビジネスシーンといえど、会話で使われるケースは非常に少ないです。その代わり、あいさつ文やスピーチなどの改まった場面では、最後の締めの言葉としてよく使われます。

「判断を仰ぐ」は自分より立場や能力が上の人の判断を求める言葉

「判断を仰ぐ」は、目上の人や能力の高い人の判断を求める際に使われる言葉です。必ずしも立場が上である必要はないので、上司から同僚、部下に至るまで、さまざまな関係性で使うことができます。

ビジネスは1人で進めるものではなく、周囲の人々との協力が不可欠な取り組みです。必要に応じて適切な判断を仰げるようにしていきましょう。

(にほんご倶楽部)

※画像はイメージです

※この記事は2023年08月07日に公開されたものです

にほんご倶楽部 (敬語・ビジネス用語専門編集プロダクション)

いつも使っているけれど間違った認識も多い「敬語」や「ビジネス用語」。人にはなかなか聞けない常識から応用編まで、日本語に関する情報を発信。

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