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「短い間でしたがお世話になりました」の使い方。退職や異動の挨拶で使える例文とは

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師)

「短い間でしたがお世話になりました」は退職や異動時の挨拶で使われる言葉です。しかし、「短い間」とはどれくらいの期間を指すのでしょうか? 今回は「短い間でしたがお世話になりました」という言葉をライティングコーチの前田めぐるさんが解説します。

「短い間でしたがお世話になりました」は、退職や異動の挨拶をする場面でよく使われる言葉です。会社や部署を離れる本人はもちろん、見送る側から述べる場合もあります。

その際、短い間とはどれくらいの期間なのか、目上の人に使っても失礼にならないのか、いろいろ気になる点も出てきますね。

今回は、「短い間でしたがお世話になりました」の使い方や気を付けたいポイント、例文などについて詳しく見ていきましょう。

「短い間でしたがお世話になりました」とは? 言葉の意味

「お世話になる」はビジネスシーンでよく使われる言葉です。「世話になる」を辞書で引くと次のように書かれています。

世話になる
他人の尽力を受ける
(『広辞苑 第七版』岩波書店)

このことから、「短い間でしたがお世話になりました」は、「短い期間でしたが、ご尽力を受けました」という意味になるでしょう。

この言葉は、主に職場や学校などにおいて、その場を離れる人が周囲への挨拶をする時に使うことが多いです。

また、部署やチームなどが解散する場合にも使うことができます。例えば、短期のプロジェクトが終了し、成功裏に解散する場面などで、リーダーからメンバーへの謝意を述べる時にも使ったりします。

他にも、見送る立場から感謝の気持ちを伝えるために、送辞や手紙、メール、寄せ書きなどで使われることもあります。

「短い間」とはどのくらいの期間?

人によって期間の長さについての感覚は異なるので、「この期間なら短い」という絶対的な基準はありません。

ただし、ビジネスシーンでは、アルバイトなら1年間でも短くはないと思いますが、正社員なら1年間は短いと考えられるのではないでしょうか。また、周囲にキャリアの長い人が多い職場では、2年間でも短いと思われる可能性があるでしょう。

以上のことから、ビジネスの場面で「短い間でしたがお世話になりました」を使うのは、2年間程度までを目安にするのがおすすめです。

上司や先輩にも使える敬語表現? ビジネスで使う時の注意点

「短い間でしたがお世話になりました」は、尽力を受けた相手や面倒を見てもらった相手に対して使える言葉です。そのため、意味の上では、同僚や後輩、上司や先輩、取引先など全ての人に使えます。

文法的にも、丁寧語や、尊敬の意味を含む接頭語が含まれているため、上司や先輩、取引先など目上の相手に対して使っても失礼にはなりません。

・「短い間でした」の「でした」は、助動詞の丁寧な表現である「です」の過去形
・「お世話」の「お」は、尊敬の意味を持つ接頭語
・「なりました」は、丁寧語「なります」の過去形

尊敬や感謝の気持ちをさらに強調したい場合には、次の言い換えもおすすめです。

「短い間でしたが」→ 「短い間ではございましたが」
「お世話になりました」→ 「大変お世話になりました」

「短い間」を「一緒に働いた期間」として伝える場合は伝え方に工夫を

「短い間でしたがお世話になりました」は、会社や部署を離れる本人だけでなく、逆の立場からも使うことがあります。

特に、1対1で伝える場合は本人の勤続年数ではなく、在職者とその人が「一緒に働いた期間」を想定して「短い間」と表現する場合もあるでしょう。

例えば、10年間勤めて退職する人に対して、入社1年目の社員が直接挨拶する場合、2人が一緒に働いた期間は1年間です。このような場面では、前後の文脈を工夫しましょう。

具体的には、「私が〇〇さんとご一緒できたのは1年間と短い間でしたがお世話になりました。もっとご指導いただきたいことがたくさんありました」などと述べれば、「短い間でしたが」の意味が誤解なく伝わるはずです。

「短い間でしたがお世話になりました」の使い方と例文

「短い間でしたがお世話になりました」を実際の場面で使う時のポイントと例文を紹介します。

(1)退職の場合

前述したように、退職する人だけでなく、見送る側が使うこともあるので、それぞれの立場に合わせて参考にしてください。

退職者本人から職場の人たちへ

一緒に働いてきた同僚や先輩に対しては、心からの謝意を伝えるために、「お世話になりました」に続く文に気持ちを込めると良いでしょう。

短い間でしたがお世話になりました。皆さんと一緒にこの会社で頑張ってきたことは私の誇りです。

退職する上司や先輩へ

「短い間でしたがお世話になりました」は、お世話になった上司や先輩へはなむけの言葉として使うことができます。

1対1で伝える場合には、「短い間」が勤続年数なのか、一緒に働いた期間なのかはっきり分かるようにしましょう。

私は今年度入社のため、先輩とご一緒できたのは1年足らずという短い間でしたがお世話になりました。心から感謝しております。

(2)異動の場合

異動といっても、部署間や営業所間などいろいろあります。その場・その人にふさわしいメッセージにしましょう。

異動する本人から同僚・先輩へ

感謝の言葉だけでなく、次の部署での目標も述べるなど、前向きなメッセージにするのがおすすめです。

営業部の皆さん、1年間という短い間でしたがお世話になりました。次の商品開発部では、皆さんがどんどん売りたくなるような商品を送り出せるよう、精一杯頑張りたいと思います。

異動する取引先の人へ

取引先の人から異動の挨拶の連絡が来る場合もあるでしょう。これまでの感謝を述べつつ、新天地での活躍を応援する内容にすることが大切です。

ご多忙のところ、異動のご連絡をいただきまして、誠にありがとうございます。○○様には短い間でしたがお世話になりました。新しい部署でも、○○様の益々のご活躍をお祈りしております。

(3)チームが解散する場合

「短い間でしたがお世話になりました」は、退職や異動だけでなく、部署やチームなどが解散する場合にも使うことができます。

半年間という短い間でしたがお世話になりました。皆さんのおかげで、プロジェクトも無事成功させることができ、本当に感謝しています。チームは解散しますが、これから部署に戻っても頑張りましょう。

「短い間でしたがお世話になりました」の言い換え表現

「短い間でしたがお世話になりました」の言い換えと例文を紹介します。

(1)短い期間ではありましたが、誠にありがとうございました

「誠に」という言葉で、感謝の気持ちを強調する表現です。

短い期間ではありましたが、誠にありがとうございました。皆さんには感謝の気持ちでいっぱいです。

(2)長いようで短かった○年間でしたが、本当にお世話になりました。

「長いようで短かった」という表現から、充実していて時間の経過が早く感じられたことを表せるでしょう。

長いようで短かった5年間でしたが、本当にお世話になりました。

(3)短期間ではございましたが、本当に感謝ばかりです。

「でしたが」を「ございましたが」とすることで、尊敬する相手に対して使うのにぴったりの表現になります。

また、「感謝ばかりです」という言葉から、ありがたい気持ちでいっぱいであることを伝えることができるでしょう。

短期間ではございましたが、本当に感謝ばかりです。〇〇様なら、どこに行かれても新風を巻き起こされるとご期待申し上げます。

「短い間でしたがお世話になりました」で感謝の気持ちを伝えよう

「短い間でしたがお世話になりました」は、ビジネスだけでなく、学校やご近所付き合いなど、公私にわたりいろいろな場面で使える言葉です。

短い間だったけれど多くの学びがあった、楽しいことがたくさんあった、皆で頑張ったなど、この一言を使う時には、さまざまな思い出が胸をよぎるでしょう。

去る側は心からの感謝を、残された側は門出を祝う気持ちを込めて使いたいものですね。

(前田めぐる)

※画像はイメージです

※この記事は2023年07月19日に公開されたものです

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師) (ライティングコーチ・文章術講師)

コピーライターとして長年「ことば」に関わってきた経験値を元にまとめた「ほどよい敬語」(https://ameblo.jp/comkeigo/)が好評。過剰さや不適切さを排し、明快に説く内容は「違和感の理由がわかりスッキリした」と質問サイトなどでたびたび引用される。

自治体・団体・医療機関向けSNS活用、文章術研修の講師でもある。

著書に『この一冊で面白いほど人が集まるSNS文章術』(青春出版社)『前田さん、主婦の私もフリーランスになれますか?』(日本経済新聞出版社)『ソーシャルメディアで伝わる文章術』(秀和システム)など。公益社団法人日本広報協会アドバイザー。

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