「鳴り物入り」の意味とは? 語源や使い方について
ニュースなどで「鳴り物入りで」という言葉を耳にしたことはありませんか? 新人や新商品が大々的に宣伝されている際に用いる言葉ですが、皮肉で使われる場合もあります。そこで今回は、国語講師の吉田裕子さんに、「鳴り物入り」の意味や語源、使い方について教えてもらいました。
「鳴り物入り」は、「鳴り物入りでデビューした新人」のように、よく使われる表現ですが、どういう意味なのか、なぜ「鳴り物入り」という言い方をするのかなど、深くは理解していない人も多いのではないでしょうか。
本記事では「鳴り物入り」の意味や語源、使い方の注意点について説明していきます。
「鳴り物入り」の意味やネガティブ要素
まずは、「鳴り物入り」の意味について解説していきます。
「鳴り物入り」の意味は「おおげさな宣伝をすること」
「鳴り物入り」は、「物事をおおげさに宣伝すること。にぎやかに景気をつけること」(『日本国語大辞典』小学館)という意味です。
主に、始まる前から大々的に盛り上げる様子を指し、「鳴り物入りでデビューした」「鳴り物入りの新人」などと使われています。
「鳴り物入り」のネガティブ要素
前述した定義にも「おおげさに」とあるように、ネガティブな要素も含んでいます。
実力や実態が伴わないのに大々的に宣伝することに対し、呆れ、非難する気持ちを込めて使う場合もあるのです。
以下のように、辞書にもネガティブな語義が掲載されています。
ものものしい宣伝。(『三省堂国語辞典』三省堂)
※ものものしい=おおごとだ、という感じを与える様子。大げさに力を見せつける様子。
前宣伝が度を越して行なわれたりなどして、ちょっとどうかと思われる様子。(『新明解国語辞典』三省堂)
例えば、「事前の宣伝や評判により期待が高かったのに、実際のところ、それほどでもなかった」というケースで、後から振り返って「鳴り物入りで登場したにもかかわらず、振るわなかった」などと評することがあります。
これは、スポーツ選手や芸能人を評価する文章でよくある使い方です。
「鳴り物入り」の由来・語源は歌舞伎
「鳴り物入り」は、日本の伝統芸能である歌舞伎から生まれた言葉です。
歌舞伎の上演に際して、三味線が主たる伴奏楽器として使われますが、助奏として小鼓・大鼓・太鼓・鉦(かね)・銅鑼・笛などの和楽器も使われています。
これらの楽器を総称して「鳴り物」と呼んでいます。
もともと、これら「鳴り物」を鳴らすことにより、舞台や舞踊を大いに盛り上げることが「鳴り物入り」でした。
つまり、楽器でにぎやかにはやし立てる様子を「鳴り物入り」といったわけです。
例えば、島崎藤村の小説では、実際に笛・太鼓で盛り上げている情景に「鳴り物入り」が使われています。
「あの先年の「ええじゃないか」の騒動のおりに笛太鼓の鳴り物入りで老幼男女の差別なくこの街道を踊り回ったほどの熱狂が見られるでもない」(島崎藤村『夜明け前』)
こうしたところから意味が広がって、にぎやかにはやし立てて宣伝すること全般を「鳴り物入り」というようになりました。