お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

「気の置けない」は「気を許せない」という意味? 本当の意味や例文・類語を解説

吉田裕子(国語講師)

「気の置けない」という言葉は、「気の置けない仲」など、ポジティブな意味合いで使用しますが、「気を許せない」というような意味で勘違いしている人も多いようです。今回は、国語講師の吉田裕子さんに「気の置けない」の意味や語源、使い方、言い換え表現などを解説してもらいました。

「気の置けない」は「気の置けない友人」「気の置けない間柄」などとよく使われますが、意味を勘違いしている人が多い表現です。

文化庁のアンケートでも、約半数の人が間違った意味を選んでいます。

よくある誤解は、本来と逆の意味です。これでは会話がかみ合わなくなってしまいますので、正しい意味・使い方をおさえておきましょう。

「気の置けない」の意味

「気の置けない」はそもそもどういう意味なのでしょうか。辞書には次のような定義が出ています。

「相手に気づまりや遠慮を感じないさまをいう」(『日本国語大辞典』小学館)

「遠慮したり気をつかったりする必要がなく、心から打ち解けることができる」(『デジタル大辞泉』小学館)

「気を許してつきあうことが出来る様子だ」(『新明解国語辞典』三省堂)

つまり、気を使わずにくつろげる様子、また、そのように気楽に安心して付き合うことができる関係性を指す慣用句なのです。

「気の置けない」の誤用・語源

「気の置けない」は誤用している人の多い表現です。

語源から理解すると、間違わなくなりますので、語の成り立ちから、丁寧に確認していきましょう。

「気の置けない」を誤認している人は47.6%

気楽に付き合うという意味の「気の置けない」を、逆に、気を使って遠慮するという意味だと思っている人がいます。

文化庁の「国語に関する世論調査」(2012年度)によれば、誤用だとされる「相手に気配りや遠慮をしなくてはならないこと」という意味だと思っている人が、47.6%にのぼります。半数近くの人が意味を勘違いしているのです。

もしかしたら、「気の置けない」の「置けない」という打消表現にネガティブな語感を感じたり、「気を許せない」「落ち着けない」と同義語だと受け止めたりしているのかもしれません。

しかし、そもそも「気の置けない」がどうやってできてきたか、その語源や成り立ちを知っておけば、誤用はなくなるはずです。

「気の置けない」の語源と「気の置ける」との違い

なぜ「気の置けない」が「心を許せる」という意味になるかといえば、元々「気の置ける」(もしくは「気が置ける」)という表現があって、それが「つい配慮が生まれる」「打ち解けられない」という意味だったからです。

たとえば、夏目漱石の『門』という小説には、「向うでも何だか気が置けて窮屈だと云う風が見えた」という文があります。

「窮屈だ」と後に続くことから分かるように、この「気が置けて」という表現は、遠慮して気詰まりな心持ちを表しています。

配慮が生まれるという意味の「気の置ける」に打ち消しの助動詞「ない」を付けたのが「気の置けない」であるため、「気の置けない」は、配慮が生じない、遠慮しない、つまりは、心許せて気楽である、という意味になるわけです。

ですから、「気の置けない友人」といえばポジティブなニュアンスで、幼馴染みや親友のような、特に仲のいい間柄を指します。

「気の置けない」(遠慮しない)だけを覚えるのではなく、「気の置ける」(遠慮が生まれる)と一緒に覚えておけば、勘違いしなくて済みます。

次ページ:「気“が”置けない」や「気“を”置けない」とも言えるのか?

SHARE