「気の置けない」は「気を許せない」という意味? 本当の意味や例文・類語を解説
「気“が”置けない」や「気“を”置けない」とも言えるのか?
「気の置けない」という慣用句を「気“が”置けない」「気“を”置けない」とする人がいますが、これらは正しいのでしょうか。
結論からお伝えすると、「気“が”置けない」は実質上「気“の”置けない」同じなので、正しい表現であり、使っても問題ありません。
しかし、「気“を”置けない」は文法的におかしいものなので、使うのは避けた方がいいでしょう。
「気“が”置けない」の場合
「気の置けない」という表現を分析してみると、ここでの「の」は主格の格助詞といわれる文法的役割です。
主語を示す助詞ですから、「が」に置き換えられます。「風の強い日」=「風が強い日」であるのと同様です。
ですから、「気の置けない」と「気が置けない」は同じ意味だといえますし、実際に「気が置けない」の形で使われている文例がたくさんあります。
「気“を”置けない」の場合
他に、「気を置けない」という形で使う人もいますが、この形は不適切です。
というのも、「気の置ける」「気が置ける」の「置ける」は、特に目的語を持っておらず、「自動詞」という文法的役割で使われています。
ですので「気を置けない」のように、目的語を持つ「他動詞」の形で使うのは間違いです。「気を置けない」と言ったり書いたりするのは控えましょう。
「気の置けない」の使い方・例文
「気の置けない」の正しい使い方・用法が分かる例文を以下にまとめました。
・付き合いも長いので、すっかり気の置けない間柄だ。
・気の置けない者同士で仲良く暮らすのもいいと思う。
・料理は本格的ですが、気の置けないカジュアルな雰囲気のお店です。
・水入らずで、気が置けなくって可(い)いじゃありませんか。(泉鏡花『女客』)
・話しぶりも、明るくて、気が置けなかった。(菊池寛『貞操問答』)
以上のように、「気を使わずにくつろげる様子、また、そのように気楽に安心して付き合うことができる関係性」を示す言葉だということが分かるかと思います。
また、文豪の小説の用例を見ても、「気が置けない」の形で使われている例文もあります。「気の置けない」「気が置けない」、どちらの形でもいいことがよく分かります。