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インタビュー 働き方

はみ出てなんぼの「はみキャリ」。『sweet』編集長 渡辺佳代子さんの働き方 #働くわたしの選択肢

マイナビウーマン編集部

「バリキャリ」「ゆるキャリ」……女性の働き方って、本当にこの2つだけなの? 100人いれば100通りの働き方がある。一般企業で働く女性にインタビューし、会社の内側や彼女の働き方を通して、読者に新しい働き方「○○キャリ」の選択肢を贈る連載です。

「嫌いですか? 『紗栄子』のこと」

してやったり、という顔で発せられたひと言に、内心ギクッとした。だって、ちょっとだけ。ええ、そうです。図星だったからだ(紗栄子さん、ごめんなさい!)。

女性ファッション誌の売り上げトップに君臨する『sweet』。その表紙になぜ彼女を起用し続けるのかと聞けば、返ってきたのは少し意地悪な回答だった。

「好き嫌いがはっきり分かれるくらいのモデルが面白いんですよ。激しく、自己主張が強い女の子じゃないと! 雑誌も人生もはみ出てるくらいが丁度いいんです」

そう語るのは『sweet』編集長、渡辺佳代子さん(48歳)。2010年には『sweet』の発行部数を100万部にまで伸ばし、今や主流となった付録商戦の火付け役にもなった。ストレートに表現するけど、文字通りとんでもない女性だ。

そんな渡辺さんから探る「働く選択肢」は、やっぱりちょっと“はみ出て”いた。

働く軸にあった絶対的な「女の子」の存在

マイナビウーマン編集部の井田です。今日はよろしくお願いします。

さっそくですが、渡辺さんはどうして編集者の道を志そうと思ったんですか?

うーん、実はわたし、昔からこれといって「やりたい!」みたいなことがあるタイプではなかったんです。でも、中学生のころから雑誌を読むのがとにかく好きでした。それをそのまま職業にしたいなってボヤっと思い続けていて……。新卒の就活では雑誌を発行している出版社を片っ端から受けたのがはじまりでした。
好きだったことをそのまま仕事にできるのってすごい。
いや、そんなに順風満帆じゃなかったんですよ。残念ながらわたし、新卒のとき内定をもらっていると思っていた会社から、ある日急に不採用通知が届きまして……。
なんと。いきなり気になる展開。
大学4年生の卒業直前、路頭に迷いましたね。で、まだ募集している出版社があって、そこに滑り込みました。エロ本の出版社だったんですけど。
20代そこそこの女子にはパンチが強い仕事ですね。ちなみに元々はどんな雑誌がやりたかったんですか?
好きな分野ははっきりしてました。作ってみたかったのは、『CUTiE』か『Olive』、あとは『mc Sister』。こういう雑誌がすごくやりたかったんですよ。
どれもサブカルチャー系のTHEガーリーな雑誌ですね。懐かしい!
そう。メンズファッション誌には一ミリも興味がなくて、女の子を「かわいい」なり、「綺麗」なり、「エロく」なり、なんでもいいから切り取りたかった。だから、エロ本も全然抵抗はなかったですね。そういう意味では同じジャンルだったし。

どうしてそんなにも「女の子」が軸にあったんですか?
なんなんですかね。多分、自分のことを「ドブス」だと思い込んでいたからかな。
え、ドブスですか!?

そういう多感な10代の時期ってありません? 親はわたしのことを「かわいい」と言って育ててくれなかったし、友達から肯定されることもなかったし、好きな男の子ができて追っかけ回しても付き合ってもらえなかった。

それを全部「自分がブスだからだー!」ってせいにしてたんです。

同時に、美しいものが好きだったんですよ。ブスな自分のことは嫌いで、綺麗なものが好き。現実を見たくないから、雑誌とか映画ばっかり見てましたね。ブスの恨みを晴らしたかったわけじゃないけど、気づいたときには綺麗なものだけ見て暮らしていきたいって妄想が膨らんでいました。

それで言うと、『sweet』ってまさにその価値観の象徴ですよね。 今は田中みな実さんの写真集が同性に売れたりとか、女の子が女の子を「かわいい」と称賛してファンになることがスタンダードな時代だけど、少し前だったら珍しい感覚じゃないですか。当時から価値観の先駆者みたいに、それを持たれていたのってすごいことだなって思います。

早いかどうかはわからないけど、結構意識していましたね。

雑誌をスクラップするのが趣味だったので、勝手にかわいい女の子をいっぱい切り抜いたり、アイドルの写真集をこんな場所で撮りたいなって妄想したり。そんなふうに、徐々に編集者としての自分がスタートしていったのかもしれません。

「29歳の編集長」が抱えた葛藤と変化

それから今の宝島社に入られて、念願の『CUTiE』編集部配属。確か20代で『sweet』編集長に就任されたんですよね?
29歳のときですね。
ものすごいスピード感。20代で編集長なんて、もはやプレッシャーに殺されそうじゃないですか? わたしには絶対無理です。
当時の『sweet』はモード誌だったんですよ。わたしが編集長になったときの命題は「モード誌から変えてくれ」というものでした。当時、コンサバ系やかっこいい系、セクシー系の雑誌はすでに存在していたんです。だけど、「かわいい」をテーマにしたものはどこにもなかった。
それで今のテイストにシフトしたんですか?
外したら大外しだけど、当たったらデカそうだなと思って。

外れたら大外し、かぁ。わたしは新しい挑戦や提案をするとき、大外しをするのが怖くて、いつも大きく舵を切れないんです。
わかります。でも、自分が思い込んでる「最悪」って実は大したことないから大丈夫ですよ。
どういうことですか?
わたしの場合、目の前のことに失敗したらどれだけヒドイ目に遭うんだろうっていつも考えてみるんです。たとえば当時のわたしがもし『sweet』の方向転換をうまくできなかったとしたら、きっと編集長を解任されますよね? でもまだ若いし、元の『CUTiE』編集部には戻れるはず。会社員だからクビになることもない。
なるほど。

20代や30代の女性が仕事で直面するトラブルなんて、絶対解決できる範疇のことばかりなんです。

だったら後悔しない選択をしたほうがいいですよ。本当は言いたかったこと、やりたかったことがあるのに安パイ狙ってコケたっていう結末のほうがみっともないし、何よりつまらないじゃないですか。

そう考えると、もっとラフに挑戦できそう。とはいえ、他人の目って怖くないですか? 「あいつ失敗して編集長降ろされたらしいよ」とか噂されるのなんて絶対嫌!
それについてもね、年齢や経験を重ねていくうちにガラッと考え方が変わる瞬間がくるから大丈夫です。
渡辺さんにもそんな経験があったんですか?
若いころは自意識過剰で被害妄想もすごい。本当にどうでもいいことをたくさん気にしていました。編集長になったときも、雑誌が売れるどうこうのほかに、部員から良い編集長だって思われたい欲がすごかったんです。みんな年齢も近いし。
すごくわかる。今のわたしは本当にやるべき業務を差し置いてでも、周りに良い人って思われる立ち回りのほうが大事かも。
だけど、上司からのオーダーにも答えなきゃいけない。そうすると、結局「みんなとうまくやりたい」「上司の意見も聞かなくちゃ」っていう板挟みになっちゃうじゃないですか? 結果、大体はどちらからも嫌われるんですよ。
八方美人ってことですもんね。
それで、「愛されたい気持ち満々で生きているのに、なんか知らない間にむっちゃ優柔不断な人として嫌われてしまった~!」となった瞬間、急にガラッと自分が変わったんです。「こんなに気を遣っているのに、なんで嫌われなきゃいけないんだ! 全員いなくなれ!」ってね(笑)。
あはは!
それからは、絶対に自分が責任を取るっていう意識が生まれて、良い意味で誰の意見や噂にも流されなくなりました。うまくいったら自分の手柄だし、うまくいかなかったら全部自分のせい。そうすると、「人目」に対する優先順位が下がって何もかもどうでもよくなるんです。
働き続けて、荒波に揉まれて、失敗して。そのなかで気づいていくことってたくさんあるんですね。
そう、それこそが「慣れ」ですから。

105万部売れる雑誌の誕生秘話

今や雑誌に付録がついているのが当たり前の時代ですけど、この火付け役は渡辺さんなんですよね。『sweet』から始まった付録商戦のアイデアはどこから生まれたんでしょう?
それは、当時何をしても売れなかったからです。
あの『sweet』にもそんな時代が。それでたどり着いたのが付録、ですか?
はい。「『sweet』はこんなに良い雑誌なのに、売れないのは宣伝してもらえないからだ!」って会社を恨んでいたんですよ。そしたら、「売れてない雑誌にかける広告費なんてあるわけないだろ」と突っぱね返されまして(笑)。
ぐうの音もでないですね……。
それで、戦略を考えるために本屋さんへ行きました。そのとき気づいたのが、好調だった分厚い赤文字雑誌に比べて『sweet』は圧倒的に薄かったんです。これはまずいなって思ったときに考えついたのが、付録で分厚くするという手法でした。
わたし、そのときの『sweet』をすごく覚えています。Cher(シェル)のトートが付録で、高校の友達みんなが持っていて、本当に話題になっていました。今思えば、お姉さん雑誌だった『sweet』の存在を知ったのはこれがきっかけだったなぁ。

そう、あのときですよね! 今はそんなふうに思わないけど、当時はまだ少しだけ付録で売れることに対して後ろめたさもありました。だって、モノで釣るって浅ましいじゃないですか。

だけど子どものころ、マンガ雑誌についている付録がものすごく楽しみだった記憶もあるんです。あのドキドキを大人の女性が読む雑誌で届けてもいいんじゃないかなって。そう考えると雑誌と付録のセットってすごく楽しいもので、今はやって良かったと思ってます。

最大105万部も売れた『sweet』ですけど、今はウェブメディアなどの参入によって紙雑誌が売れない時代と叫ばれていますよね。それについては、渡辺さんご自身どんなふうに考えていますか?
何を目標にするかは、時代によって変わることだと思っています。確かに、また100万部を売るチャンスはなかなか来ないものだという現実はわかっているんですけど……。だからといって、雑誌業界の元気がないって考えるのもちょっと安易だよなって。
渡辺さんらしく、悲観的な捉え方はしていないんですね。
元々、日本は雑誌の数が多すぎるんです。だから、紙を読む人の数が全体的に減ったなら、売れてない雑誌がなくなってもいいじゃんくらいのラフな考えですね。その中で最終的に『sweet』が生き残ってくれればそれでいいや、って。
それってすごく素敵な愛ですね。
そんな綺麗なもんじゃないですよ(笑)。本当に『sweet』とはいろんなことがあったから。言うなれば、これは「腐れ縁」です。

『sweet』2020年3月号(宝島社)

3月号の付録はDaichi Miuraデザインのsweet限定ディズニーキルティングポーチ。シックなブラックで大人っぽいキルティングポーチの真ん中には、ちょこんと座った女の子らしさ満点のアートを添えて♡ 持っているだけで気分が上がるかわいさがポイントです!

特集:時は2020年。なりたい私になるのだ!/スターブランドの「旬小物」爆盛りBOOK/ジルスチュアートの春の最愛コレクション

通常号:特別付録 Disney ARTIST COLLECTION by DAICHI MIURA キルティングポーチ

増刊号:特別付録 Disney ARTIST COLLECTION by DAICHI MIURA ポーチ2個&付箋セット

(取材・文:井田愛莉寿/マイナビウーマン編集部、撮影:洞澤佐智子)

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