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自慢するほどモテたのに生涯独身。幕末のイケメン剣士・土方歳三 #R18の伝記

五十嵐綾子

あの北条政子は源頼朝に浮気されまくっていた? 絶世の美女・楊貴妃は色ボケじいさんに振り回される人生だった? 歴史上の人物たちの恋愛事情を、歴史ライター五十嵐綾子さんが紹介。時代が変わっても、恋愛は今と変わらないのかも。

今回は、イケメンなのに生涯独身だったこの人の話。

新選組でも1、2位を争う人気者・土方歳三。正直、美人やイケメンと言われている歴史上の人物って実際は微妙な人が多いけど、彼だけは別だと思う。写真を見たことがない人はググればわかる。さあ、今すぐググって!

土方歳三が現代に存在したら、たぶん俳優かモデルになってたレベル。当時は「農家の末っ子」ということで奉公に出てしまうんだけどね。

ちなみに、歳三の奉公した先は江戸の呉服店で、今でいう和服のアパレルショップだったの。超イケてるよね。

しかも、同じく奉公人として働いてた年上女性とイイ感じになって、奉公先に内緒で付き合ってたらしい! さすが将来「新選組副長」になる男はちがうよね~!

2人のその後だけど、お察しの通り、周囲の人間に引き裂かれて終わり。心から好きになれる相手なんてそうそう出会えるもんじゃないのに……。ひどい話じゃない?

失恋後、歳三は店を辞めて実家に戻るわけだけど、イケメン独身者の中には「過去の恋を引きずって次に進めない人」もいるからね。思えばこれが歳三の「生涯独身」へのひとつのターニングポイントだったのかもしれない。

あなたのまわりにもいない? 「なんでこの人、イケメンだし仕事もできるのに結婚してないんだろう……」って男性。時代はちがえど、歳三もそのタイプだったのかな。そんな歳三の恋愛エピソード、まだまだ紹介していくよ。

歳三が生涯独身となった第二のターニングポイントは、「転職」。歳三のやつ、武士に憧れてたって言うから。「一事を成して名を挙げるまではひとりでいたい」なんて信念があったようで、せっかく親族からもらった結婚話を保留にしちゃったらしい!

いやいや、相手に問題があるならわかるよ。でも相手は三味線屋のひとり娘で、三味線演奏もできて接客スキルもある、まさにデキる女だったのに。もったいない……!

それで歳三は、薬の行商をしながら道場仲間の近藤勇や沖田総司らと剣術修行だって。親のすねをかじらずちゃんと働いているのはえらいけど、「仕事が落ち着くまでは」「昇進するまでは」って理由で結婚を先延ばしにする男性、世の中に多すぎて信用できないの私だけ? だいたい「名を挙げる」ってハードル高すぎない?

一見、無謀にも思えた歳三の夢。でもまさかペリーの来航によって、その夢が実現することになろうとは……。

「そのあたりの歴史忘れちゃった!」って人のために簡単に説明すると、ペリーってばいきなり日本に凸ってきて、日本に不利な条約を幕府と結んじゃうんだよね。ありえないでしょ?

もちろんそんな状況に周りも黙ってるわけがなく、外国の言いなりで無力な幕府を倒して天皇による政治を行いたい「倒幕派」が誕生。天皇を尊重しつつ政治運営したい幕府側「佐幕派」と対立する事態に発展しちゃう。特に京都にはテロ行為に及ぶ人たちもいて、治安が相当悪かったみたい。

そんなとき幕府が募集した「浪士組」は、歳三に訪れたまたとないチャンス。さっそく近藤や沖田たちと一緒に参加したってわけ。

京都に向かう徳川将軍の警護を任された「浪士組」。メンバー内でのトラブルとかグループ名の変更とかいろいろあったけど、なんと倒幕派を一時京都から追放するほど大活躍して「新選組」へとランクアップしちゃう! つまり、「傭兵」のような立場から公的に「武士の集団」として認められたってこと。すごくない?

驚くのはそれだけじゃない。歳三ってば“副長”に就任していて、絶好調のキャリアを歩んでいくの。名を挙げるどころか、歴史に名を刻んじゃった! 見くびってごめんね、歳三。

さて、宣言通り一事を成したわけだから結婚しない理由はもうないよね。歳三も年貢の納めどきか……って思った私が甘かった。

第三のターニングポイント「モテ期&チャラ期到来」。

イケメンな上「新選組副長」。そりゃモテないわけないよね。実際、色町の遊女にモテまくったらしいし。どれだけモテたかって言うと、東京に住む親戚の小島鹿之助にわざわざモテ自慢の手紙を書くくらい(しかも2回)。

わざわざそんなこと手紙にしたためちゃう? でも男性ってそういうところあるよね。女子のいない飲み会で「あの子からLINEがきた」「あの子にデートに誘われた」って自慢し合うのと一緒!

さて、気になる手紙の内容だけど、鹿之助からコメントが届いている。

「1通目には、歳三を好きな京都や大阪の遊女たちの名前がずらりと並んでいました。でもそれはほんの一部みたいで、自分のことを好きな女性は書ききれないほどいるとも書いてありました。さんざん自慢したあとは、『女性たちのせいで国に尽くす気持ちを忘れてしまいそうだ……』といった俳句が添えてありました」(by鹿之助)

めっちゃくちゃモテ自慢するじゃん。あと、せめて国に尽くす気持ちは忘れないで!

「数か月後に届いた2通目には、遊女たちから送られたラブレターの束がついていました。たぶん、証拠を見せたかったからでしょう」(by鹿之助)

物証まで持ち出してくるなんて……。そんなに自慢したかったのか、歳三!

ちなみに、鹿之助宛ての手紙は残されているものの、ラブレターの束は見つかっていないので、本当にラブレターだったのかは謎。もしかしたらただの「遊女からの営業レター」で、モテてると勘ちがいしてた可能性もあるというオチ。

さて、仕事も順調、モテ期も十分楽しんだからそろそろ結婚かな? ……って、またしても思った私が甘かったわ。

アラサーになった歳三は故郷に戻って、許嫁(三味線屋のひとり娘)に婚約解消を伝える。

え??? 何してくれちゃってるの?

許婚には「体に気をつけて」と言い残して去ったらしいけど、散々待たせといてそれだけ? イケメンでも許せることと許せないことってあるんだからね!

婚約解消を伝えられた許婚が泣いてすがったのか、激しく罵ったのかはわからない。けど、このあと歳三は旧幕府軍として明治新政府軍との戦いに身を投じ、30代半ばで北海道にて戦死する。

最後まで誰とも結婚しなかった歳三だけど、浪士組に参加した瞬間から「幕府」と結婚していたのかもしれないね。

余談だけど、歳三は戦いの最中に滞在した綾瀬(現在の足立区)で釣りをしてたらしく、歳三の釣り姿に地元の女子はワーキャー騒いだらしいよ。

さすが稀代のイケメン歳三。最後の最後までモテエピソードに事欠かなかったのね。

(文:五十嵐綾子、構成:パンジー薫&マイナビウーマン編集部、イラスト:たけだこうへい)

※この記事は2019年07月06日に公開されたものです

五十嵐綾子

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