離婚は「失敗」なんかじゃない #20代でママになりました
27歳で結婚、28歳で妊娠・出産、29歳で復職、30歳で離婚。
「女性の20代後半は怒涛である」とはよく聞くが、ここまで人生の転機を20代後半にぎゅっと詰め込んだ女性はほかにいるだろうか。
ネイルブランド「JUMII TOKYO」代表の前島ゆみさん。シングルマザーとして8歳の息子を育てながら、会社経営や美容系の商品企画・ブランディングなど、幅広いビジネスを展開しているワーキングマザーに話を聞いた。
自分が結婚したいなら、きちんと彼に話すべき
「27歳で結婚したのは、子どもがほしかったからなんです」
つい最近の出来事のように、前島さんはハキハキとした口調で語りはじめる。
「私の母や出産を経験した友だちが『出産って素晴らしい』『子どもを産んで本当によかった』と話していたのを聞いて、私も子どもがほしくなったのがきっかけですね。それに紐づいて、私の場合は、結婚していたほうが子育てはしやすいだろうと思ったので、結婚にも興味がわきました」
たしかに私のまわりにも「子どもがほしいから結婚したい」と言う女友だちは多い。私たちと何ひとつ変わらない願望を抱いていた27歳の前島さんは、当時付き合っていた恋人にその気持ちをぶつけることにした。
「彼に『私は子どもがほしいから結婚してほしい。無理だったら別れて』と言いました。そのときの私にとっては本当に大好きな人だったから、結婚するなら彼がよかった。勇気はいりましたけど、出産のリミットもあるし、伝えるなら今しかないと思ったんです」
それに対する彼の返事は「わかった、結婚しよう」。前島さんのまっすぐな想いが通じた結果だった。
「恋人と結婚したいけど言えない、核心的なことを話し合うのを避けてしまう子って多いですよね。でも自分が結婚したいなら、きちんと彼に話すべき。それが夫婦になる2人にとって“初めての共同作業”だから」
だけど、勇気を出して伝えたとき「結婚は考えられない」と断られたり、濁されたりするのが怖い。そんな不安を抱えている女性は多いと思う。しかし前島さんは、そのときの彼の反応こそが「今後の人生をともに歩んでいける相手かどうか」をはかるためのものさしになると話す。
「彼から不誠実な反応が返ってきたら『そんな反応をするなら、私が結婚するべきはこの人じゃないかもしれない』と思うし、逆に誠実に向き合ってくれる人だったら『今後この人となら何があってもやっていけるかもしれない』と思える。そういう意味でも、一度ちゃんと話してみたほうがいいですよ」
インターネット上には「彼氏に結婚を意識させる方法」なんてコラムが大量に蔓延しているけど、実は前島さんのようにリスク承知で自分の気持ちを正直に伝えてみることが、どんなテクニックよりも未来の自分のためになるのかもしれない。
離婚=失敗? 既成概念にとらわれないために
結婚した翌年、前島さんはひとりの男の子を妊娠した。
「子どもを持ちたい」という夢には近づいたものの、妊娠・出産はゴールではなくスタートだ。出産後も仕事をバリバリこなしたい前島さんにとって、次なる壁は「産休取得」。
当時働いていた会社は社員数十人程度のベンチャーで、人事制度も整っておらず、産休が存在しなかった。前島さんは社長と役員に直談判して、その会社の産休取得者・第1号に。
「仕事も忙しい時期だったので、復帰したあとは2週間だけ時短勤務、それ以降は19時退社。保育園には預けられなかったので、母や友人に助けてもらいながら生活していました」
しかし仕事と育児の両立は、そう簡単なものではなかった。日に日に忙殺されていく前島さんは、帰宅してもストレスを解消できず、旦那さんにイライラをぶつけてしまうことも。今思えばいわゆる“産後クライシス”だったというが、ご自身も旦那さんもその症状に関する知識がなく、病院に行く時間さえとれなかった。
「だんだん夫と不仲になってしまい、最終的には離婚という決断をしました。とりあえず離婚のTo Doリストを作り、忙しい中でいろんな手続きを進めていたので、迷ったり悲しんだりする暇はなかったですね」
かつての日本には「離婚=失敗」という既成概念が少なからず存在していた。だけど最近は価値観が多様化し、必ずしも離婚は失敗ではない、悪いことではないという考えが広がってきたようにも思う。前島さん自身も、趣味の国外旅行を通してそれを実感した。
「旅に出ていろんな国の人たちとかかわるうちに、必ずしも日本の常識が世界の常識じゃないし、今の常識が未来の常識でもない、自分が既成概念にとらわれすぎていたことに気づいたんです。国外の友だちに『失敗しちゃいけない』と思っていることを話すと、『なんでそれが失敗なの? 失敗なんかじゃないよ』と言われたりする。自分を窮屈にしているのは自分自身だと気づいてからは、少しずつ解放できるようになりました」
今は再婚の予定はないけれど、別に結婚することがすべてじゃない。いつかまた結婚したくなったら、何回でも結婚できる。縁があれば同じ相手と結婚することもできる。そんなふうに考え方を広げていくことで、もっと自由に生きられるようになったと話す。
ネイルは女性だけのものじゃない
現在の前島さんは、シングルマザーとして育児と仕事に奮闘している。忙しいのは変わらないが、それでもやっぱり「息子を産んでよかった」と実感している。子育てを通して人として成長し、思いやりが持てるようになったのはもちろん、子どもとのかかわり合いがネイル事業にも大きな影響を与えているという。
「子どもには既成概念がない、ということを日々感じています。ネイルについて息子と話していたときに『ネイルって、女の人のものって決まっているわけじゃないよね』と言ってくれたことがあって。たしかに今はハンドケアやネイルをする男性も増えてきている。自分が“ネイルは女性のもの”という価値観に縛られすぎていたことに気づけたんです」
2019年秋、「JUMII TOKYO」は「忙しい女性のために」というコンセプトを「年齢も性別も超えて。指先から自由になろう」と刷新する予定。今からリニューアルの準備を進めている。
「きっと男性だって、自分の手元が綺麗になったら気持ちが上がるだろうし、“綺麗”に男女の境はないですよね。そんなふうに、性別問わずネイルを楽しんでもらえたらいいな」
その時々で自分が思う気持ちを一番大切にして、人生の選択を続けている前島さん。過去つらい瞬間もあったかもしれないが、それでも取材中ずっと笑顔を絶やさずに話してくれたのは、きっとどの選択にも後悔がないから。
私もこんなふうに、笑顔で過去と未来を語れる人になりたいと思った。
(取材・文:高橋千里/マイナビウーマン編集部、写真:洞澤佐智子)
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INFORMATION
「JUMMI TOKYO 2019 Spring Collection」が2019年4月3日に発売。今回新たに追加される2色は、花の美しい色合いをイメージしたパープルカラー「AFTER FUZZY」と、指先を自然に彩る淡いピンク「DARLING」。それに加え、既存カラーで人気の高い「DEAR MYSELF」「NEW MOON」「HAPPY TIME」もコレクションとして展開される。
※この記事は2019年05月02日に公開されたものです