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「30歳までに結婚」のリミットは、決めないほうがいい #20代でママになりました

あかしゆか

結婚や出産なんて、まだまだ先の話。だけど、ちょっと気になる。いまの私たちと同年代のときに結婚・出産をした人生の先輩たちに話を聞いて、これからの生き方を考える連載【20代でママになりました】。

今月、私は26歳になる。結婚や妊娠の報告をする友人・知人がここ1~2年で増え、女子会でも「結婚」「妊娠・出産」の話題が出ない日はなくなった。SNS世代で、そういった報告の「見える」範囲が広すぎることも理由のひとつなのかもしれない。

結婚や出産といった、さまざまな人生の大きな選択をしている彼女たち、そして「30歳までには必ず結婚・出産するんだ」と人生の計画書がしっかりとある彼女たちを、私は「すごいなあ」とただただ傍観者として眺めている。それらの人生の大きな選択を、私はまだしたことがないし、そしてまだ、する予定も今はない。

「みんな、どうやって結婚を決めているんだろう」「結婚や出産について、自分自身はどのように向き合っていけばいいんだろう」──最近、ずっとそんな疑問を胸に抱えていた私は、若くして結婚と出産という選択を続けてきた、とあるひとりの女性に会いに行った。

結婚はしたくなかったし、するつもりもなかった

「こんにちはー。え、お土産にビール? うれしい、ありがとうございます。さっそく今夜飲んじゃおうかな(笑)」

人を思わず緊張させてしまうほどの美しさを持ちながら、あっけらかんとした明るさで相手の緊張を解いてしまう。素敵な方だなあ、と私はその女性をひと目見たときに思った。

「その女性」とは、料理研究家の和田明日香さん。明日香さんは学生時代に結婚を決め、ご両家顔合わせ当日に妊娠発覚。すでに決まっていた内定を辞退して、母になる道を選んだ。今は3児の母親でありながら、姑・平野レミさんとの関係性が話題となり、テレビ番組などに引っ張りだこでもある。

「高校生や大学生のころは、結婚なんて全然したくなかったんです。別にしてもしなくても、楽しく生きていればそれでいいかなって思ってました」

そう話す明日香さんが、結婚と三度の出産をすることを決めた理由はなんだったのだろうか。

「結婚」「妊娠」の実感はあとからやってきた

明日香さんと旦那さんである和田率さんとの出会いは「飲み会」。当時広告代理店で働いていた率さんが、大学生だった明日香さんに一目惚れをして、猛アタックしたという。

そのエピソードは、先日発売された明日香さんのエッセイ『子どもは相棒 悩まない子育て』にも一部記載されているのだが、実際にご本人の口から詳細をお聞きすると、想像を超えるものだった。

初対面の飲み会の数日後に、率さんが就活中の明日香さんのために分厚い就活マニュアルを作ってあげたり、明日香さんの大学の授業を一緒に受けたり……。取材現場はまるで女子会のように盛り上がった。

「付き合いはじめてから、すぐに『結婚を考えている』と言われたんです」

はじめて結婚のことを率さんから話されたときの心境を、明日香さんは次のように話す。

「当時の私は学生だったし、就職も決まっていなかったから、どんな会社に勤めてどんな働き方をするかもわからない状態だった。そもそもまだ付き合ってそんなに経ってないのに、8個も年上で、広告代理店というキラキラした世界にいるような人が、いち学生の私によく結婚なんてこと言えるな!? って、全然信じていなかったんですよ(笑)」

「でも、結婚したいと繰り返し言われるうちに、どうやら本気らしいということに気がついて。率さんのことは大好きだったし、しない理由も見つからなかったので、『じゃあ就職が決まったら』という話になって」

まったく結婚をするつもりがなかった明日香さんの気持ちを動かしたのは、率さんの「本気」だった。明日香さんは、次のように言葉を続ける。

「そしたら就職が決まって、(平野)レミさんにも『あーちゃん、ついに結婚だね! おめでとう!』って言われて、お互いの両親にも挨拶をして……。そのあたりで、ようやく自分が結婚するんだという実感がわきましたね。で、両家顔合わせの当日に妊娠が発覚して、もうあとには戻れないと思ったんです」

──私は、この明日香さんの怒涛な数年間の話を聞いているとき、彼女自身のエッセイの中にあったとある「一節」を思い浮かべていた。

「人生こんなに一気に進むものか~」で、いいのかもしれない

“「人生こんなに一気に進むものか~」”

これは、エッセイの中で、明日香さんの結婚が決まったときの感想として書かれていたセリフだ。この一節を見たとき、そして明日香さんの話を聞いたとき、私は「ああ、これでいいのだ」と思った。

「結婚だけがすべてじゃない」。そう頭では理解しても、周囲の結婚や妊娠の話を聞くと少しだけ心が「ざわっ」としてしまうのが、20代後半の女性の心境ではないだろうか。「女はクリスマスケーキだ」とか「彼氏いないの? なんかごめんね……」とか、うるさい! と耳を塞ぎたくなるような言葉もまだまだ世間にはたくさん残っている。

そんな言葉を聞き続けると、「そろそろ結婚したほうがいいのかな?」なんてことを思ってしまう弱い自分がいるのも、また事実。

しかし、明日香さんのような、自然に生きている先に「結婚」があり「妊娠」がある。その行為自体が目的なのではなく、「生きていた先に偶然その行為があったからそうした」という考え方は、とてもナチュラルで素敵だな、と思ったのだ。

自分を解放して、いまの楽しみにフォーカスする

「はやく結婚しなきゃ、たとえば『30歳までに結婚しなきゃ』と決めて焦ってしまっている女の子は、なんでそう決めたのか、もう一度見つめ直してみて。本当に自分がそうしたくて決めたのか? まわりからのプレッシャーや、誰かにいつか言われたひと言やくだらないネットの記事に引っ張られていないか? もし自分で決めたことじゃないんだったら、ちゃんと自分を解放してあげてほしいです。いま自分がやりたいこと、行きたい場所、見たいこと、会いたい人。“いま”の楽しみにフォーカスしたほうが、よっぽど出会いや結婚のチャンスはやってくると思います。それに──」

最後に明日香さんは、まっすぐな瞳でこう語る。

「いつでも自分のために、『いまが一番楽しいんだよね』と等身大に生きている女の人が、いちばん魅力的だと思います。私は20代で結婚したし子どもも産んだけど、これからも自分の人生を楽しめる女性でありたいと思います」

明日香さんは、書籍でも取材でも、一貫して「自分の人生を生きる」「いまを大切にする」スタンスを持つ方だった。自分の人生でその時々の状況を精一杯に生き、心から楽しんでいた。

まわりが結婚したり出産したりして、心がぐらっと揺れるときはたしかにある。だけどその声に自分の人生を左右されてしまうのではなく、私もマイペースにいまを生きていきたい。

その先に結婚や出産という大きなイベントがあるかもしれないし、もしかしたらないのかもしれない。でも、あったとしてもなかったとしても、それはそれで私の人生として、愛すべきものに変わりはないのだ。

今度誰かに「結婚とかしないの?」と聞かれたら、「人生、進むときは一気に進むものだよ」と答えてみようかな。なんてことを、私は取材を終えたいま、思っている。

(文:あかしゆか、撮影:masaco、編集:高橋千里/マイナビウーマン編集部)

書籍『子どもは相棒 悩まない子育て』


TV・雑誌でレシピ、コラムを発信し、“レミさんちの嫁?としても話題の料理研究家・和田明日香さん初のエッセイ。3児の母として奮闘するなかでつかみとった、子ども、夫、親、仕事……とのよりよい関係性とは。

※この記事は2018年10月26日に公開されたものです

あかしゆか

1992年生まれ、 京都出身。 2015年に新卒でサイボウズに入社し、 1年半製品プロモーションの経験を経たのちコーポレートブランディング部へ異動。 現在は「サイボウズ式」の企画編集や、 企業ブランディングのためのコンテンツ制作を担当している。 2018年1月から複業でフリーランスの編集者/ライターとしても活動を行っている。Webコンテンツの編集ライティングに加え、今年は書籍の企画編集にも挑戦中。

Twitter:@akyska
note:https://note.mu/akyska

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