仕事に集中できず、時間ばかりが気になってしまう。そんなとき、ありますよね。どんな人でも、いつかは集中力が切れてしまうもの。1日中、ずっと同じペースで仕事をし続けるのも無理な話です。どうして集中力は切れてしまうのでしょう。また、集中力を持続させる方法はあるのでしょうか? 心理カウンセラーの浅野寿和さんに教えてもらいました。
■集中力を保つのは難しい。働く女性の本音
そもそも、集中力とはどれくらい持つものなのでしょうか? まずは働く女性に、集中力について聞いてみました。
◇仕事中、集中できない瞬間はある?
Q.「仕事中、気が散って集中できない」と思った経験はありますか?
ある(62.4%)
ない(37.6%)
※有効回答数396件
6割以上の女性が、仕事中に気が散って集中できない経験をしていることがわかりました。1日の仕事時間は、フルタイムなら平均7~8時間。ずっと集中し続けることなんて、不可能に近いですよね。次に、どれぐらい集中を保つことができるのかも聞いてみました。
◇集中を保てる時間はどのぐらい?
Q.仕事中に集中を保てる時間はどのくらいですか?
15分未満(9.7%)
15~30分未満(12.6%)
30~45分未満(16.2%)
45分~1時間未満(22.3%)
1時間~1時間15分未満(10.9%)
1時間15分~1時間30分未満(5.7%)
1時間30分以上(22.7%)
※四捨五入の関係でちょうど100%にならないことがあります
※有効回答数247件。単数回答式
「1時間30分以上」「45分~1時間未満」と回答した人が多くなりましたが、「15分未満」という回答も約1割いるなど、ばらつきが見られる結果になりました。集中力を保てる時間は、個人差が激しいということなのでしょうか。
■集中力が切れる理由と続かない原因
続いては、集中力が切れる理由や続かない原因について、浅野さんに解説してもらいましょう。
◇集中力が切れる理由とは?
☆外部から入ってくる情報・刺激が多い
多くの人が仕事などで集中する場合、ひとつの物事だけを考えている「一極集中」状態になることが多いものです。この状態は外部の情報や刺激をシャットアウトしている状態です。しかし仕事中に、もたらされるそのほかの情報・刺激が多いと、集中を続けることが難しくなります。デスクが汚い、乱れている状態もそのひとつといえるでしょう。
☆わからないことに直面した
仕事上「どう扱えばいいかわからない作業」と出会うことがあります。この「わからない」と出会うとストレスを感じ、集中できなくなります。もちろん自ら調べて解決できることであれば問題ないのですが、「どう解釈したらいいか」「どう対応したらいいか」と自ら判断できなかったり、理解できないことと出会うときがそれにあたります。
☆考えることが多すぎる
仕事上考えるべきことが多すぎたり、一極集中できず、物事にしっかり興味を持てない状態が続く場合、集中力が切れてしまいます。マルチタスクのように器用に物事をこなせることは素晴らしいですが、作業の目的が異なるものを複数抱えると集中力は切れやすくなります。なお、意識を「拡散」させて全体を見通し、一定の時間で切り替えて「集中」する仕事の仕方はマルチタスクとは異なります。あらゆる物事に興味を持ちながら目的に向かって集中しているのはとてもいい状態です。
☆過剰にストレスを抱えている
仕事上抱えたストレスをそのまま溜め込んでいると、つい「あれはどうだったか?」「あの話はどうなったのだろう」と目の前の作業以外のことに意識を取られ、集中力が切れやすくなります。また仕事上の準備不足も同じで、「これで十分だろうか」と不安を感じていれば集中力は続きません。
◇集中力が続かない原因
☆適度な休憩を取り入れていない
適度な休憩を取り入れることは集中力を高めるために大切なこと。仕事上、なかなか自分のペースやリズムを一定に保つことも難しいことが多いでしょうし、他人のペースで仕事をすれば相手に合わせている分、集中することも難しくなりやすいもの。その状態を継続していれば更に集中が続かなくなります。
☆目的が曖昧になっている
そもそも自分自身の行動の「目的」が曖昧であれば、集中力が続かなくなりがちです。人の行動にはそれなりの動機・意味付けが必要で、「何のための仕事なのかわからない」と感じていれば、とたんに仕事に対する意欲も低下し、集中力も続かなくなります。自分の仕事の中で、嫌な仕事、やりたくない仕事、と感じるものにはそういう要素がないか振り返ってみましょう。
☆睡眠不足、疲労が溜まっている
睡眠は体と心を休める大切な時間。私達の心は眠っている内にその状態を整えようとします。睡眠不足になると体だけではなく、心を休める時間が少なくなってしまいます。心に余裕がなくなれば、イライラしやすくなり集中力も途切れがち。もちろん体の疲労も同じです。
☆感情の抑圧が強い
我慢強い人、自己表現が苦手な人に多い原因がこれです。日頃から何事も我慢し、自分自身の感情を抑圧していると、心の余裕を失うだけでなく、抱え込んでいる感情を抑えることに意識を使うので、集中力が続かなくなります。イメージとしては日々、その背中に我慢という荷物を背負いながら生きている状態。想像するだけでもその息苦しさを感じないでしょうか。集中力が続かないのも無理のないことです。
■集中力が続かないときの対処法
集中力が切れてしまう理由、続かない原因がわかったところで、私たちはどう対処したらいいのでしょうか? 浅野さんに対処法を聞きました。
◇集中力が切れてしまったときの気分転換4つ
☆一旦その場から離れる
一旦、職場や作業スペースから出てみることです。深呼吸をしてみたり、職場の外などを少し歩く、体を適度に動かすことで、リラックス効果が生まれます。言い換えれば「今、集中しなければ」という思い込みや煮詰まった気分を一度手放してみることが肝心です。
☆仕事の優先順位を見直す
一息ついて、今取り組んでいる仕事に優先順位をつけ直してみてください。集中力が途切れているときほど、あれもこれも……と考えていることが多いものです。重要なもの、先にやるべきものから順番に取り組んでみましょう。優先順位をつけることで、意識が分散されずにもう一度集中できるようになります。
☆単純作業に取り組んでみる
あれこれ考えるより、頭を使わない単純作業に集中することで、気持ちをリフレッシュさせることもできます。デスクの整理、書類の整理、いろいろできることはありそうです。何もしないでいるよりも、何かをしていることで、また新たに何かに集中する力が戻ってくることもありますよ。
☆今の気持ちをメモに書き出す
集中力が途切れているときには、いろいろな感情がわいている場合が多いものです。イライラ、モヤモヤ、不安など、今、感じていることをメモに書き出してみましょう。自分が感じていることを見える化するわけです。抱えている状態ではスッキリしない気持ちも自分の外側に出すことで冷静に見つめることができます。
◇根本改善! 集中力が続かないときの対処法
☆日々、デスクや作業スペースの整理整頓を行う
集中力を高めるには「外的環境」を整えていくことも有効です。たとえば、日々仕事を行う作業スペースを整理整頓する習慣を身につけるなど、自分自身が快適に仕事を行える環境を自ら整えてみてください。特に「周囲の環境の影響を受けやすいタイプの人」ほど、外的環境を整えることが有効です。
☆集中できないことを否定的にとらえない
そもそもどんな人でも長い時間集中力を高めておくことは難しいもの。今、目の前の仕事に集中できない自分に否定的な目を向けなくてもいいのです。仕事に集中できないことを批判的に見てしまい、ついやらなくてもいいことばかりに取り組んでいる人もいるでしょう。できないことを責めるのではなく、どうしたらいいかを考える。そう自分の気持ちを整えてみてください。
☆ちゃんと休む
どんな人も疲れていれば集中力が途切れるもの。自分自身がオーバーワークになっていないだろうか、チェックしてみてください。特に周囲のペースで仕事をしているときほど、オーバーワークになっていることに気づかないものです。疲れたら休むこと、休息や休暇、睡眠時間を多くとるなど、自分自身を大切に扱う時間を作りましょう。
☆自分のペース・リズムを見つめる
今取り組んでいる仕事のペース、リズムをチェックしてみてください。どこか自分以外の人との比較の中で自分の仕事量、やり方、ペースを決めていないでしょうか。自分のペース・リズムで仕事をしてはいけないと思いこんでいないでしょうか。自分自身の仕事に対する観念をこの機会に見つめてみてください。自分の軸で物事を捉えていくと集中力は取り戻しやすくなりますよ。
■集中力は続かないのが普通。まずは途切れる原因を見つけて
集中力はどんな人でも長くは続かないのが普通のこと。続かないと感じたら、何が集中の邪魔をしているのか冷静に見極めましょう。集中できない自分を責めていても何もはじまらないですもんね。原因を見極めたり、いろいろな気分転換法などを試してみることで、きっと自分に最適な持続方法が見つかるはずです。休息が足りないと感じたら、無理せず休むのも近道になるはずですよ。
(浅野寿和、橘夢人)
※画像はイメージです
※マイナビウーマン調べ
調査日時:2018年3月19日~3月20日
調査人数:396人(22~34歳の未婚女性)