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トレンド 私たちのしごとバッグ

見た目は控えめ、会話で近づく。広報の黒バッグ #私たちのしごとバッグ

取材中の彼女は、ニコニコと笑顔を絶やさず、その場の雰囲気を和らげるのがうまかった。彼女の名前は、大手電機メーカー・カシオで広報を担当する原 鮎子さん。広報として働き始めて丸10年、現在はスマートウォッチとデジタルカメラの商品PRをしている。

相手の懐に飛び込むのが上手なのは広報職ならではだろう。バッグの中身も彼女らしく、コミュニケーション上手のコツが潜んでいるにちがいない。「今、最高に仕事が楽しくて!」と照れもせずに言う彼女のバッグを見せてもらった。

原 鮎子さん(32歳)
カシオ計算機株式会社の広報。スマートウォッチ(男性向け)と、デジタルカメラのPRを担当。広報職で丸10年、社内広報、海外広報を経て、現在は商品広報として活躍。注力しているカメラは、セルフィーがキレイに撮れると話題の「FR100L」。大の人好きで、初対面の人と話すのも苦にならないタイプ。特技は絵を描くこと。新年度やりたいことは、ダイエットと英語。

東京・渋谷区に自社ビルを構えるカシオ。見晴らしのいいカフェテリアに、笑顔で現れた彼女が持っていたお仕事バッグは、マーク バイ マーク ジェイコブスのトートバッグ。フェミニンなスカートスタイルに、華やかなカバンを持っているかと思いきや、意外にも黒バッグで引き締めている。

マーク バイ マーク ジェイコブスの黒バッグ。ナイロン製で軽く、A4の入る大きさなので使いやすい

「このバッグは、初めて海外出張に行く際に購入。防犯のため、ちゃんとファスナーが閉まるバッグがほしくて。軽いナイロン製で、いろいろ入る大きさなのも便利。気に入って、仕事バッグとして使うようになりました」

軽くて口が閉まるバッグを、こだわり抜いて選んでいる。実は“黒”のバッグをセレクトするのにも理由があった。

「広報って、あまり目立たないほうがいいと思うんですよ。主役は私じゃないので。例えば、取材のときに、インタビューしていただくメディア担当者さんがいて、インタビューを受けるうちのメンバーがいて、そこで広報が目立っているとすごく邪魔じゃないですか」

そう、彼女は仕事柄、脇役に徹しているのだ。広報職としてのポリシーを持って、持ち物の色にも気を配る。なんと、ほかに使っているお仕事バッグもすべて黒だというから徹底している。おまけに、時計まで黒だ。

安くてオシャレな腕時計「チープカシオ」

A4の入る使い勝手がいいバッグの中には、ハートやリボンモチーフの女性らしいものも。とはいえ、甘くなりすぎない、モノトーンやブルー系のアイテムが目立つ。

●バッグの中身
1 携帯電話
2 無印良品の再生紙ノート・マンスリー
3 コクーニストのハンドタオル
4 小説。ブックカバーは雑誌の付録を利用
5 ケイト・スペードのパスケース
6 ウノカンダのパスケース。社員証を入れている
7 アフタヌーンティー・リビングの水筒
8 ティファニーの名刺入れ
9 マリークヮントのティッシュケース
10 ナラヤのコインケース。イヤホンを収納
11 ナラヤのコスメポーチ。タイ出張で購入
12 手帳とブックカバー
13 ケイト・スペードの財布
14 フォトブック。「FR100L」で撮影した写真をまとめた手作りのアルバム
15 カシオのデジタルカメラ「FR100L」

中でも、無印のシンプルな再生紙ノートの中に、彼女の身だしなみのこだわりを見つけた。

無印良品の再生紙ノート・マンスリーに、毎日コーデを記入。2016年8月から続けている

「毎日のコーデを、夜寝る前に必ずノートに書きます。次の日、昨日何着たか忘れてしまうので。いつもこのシャツ着るときこのスカートだから変えてみようとか、先週これ着たから明日は別なのにしようとか。着まわしを考えるのにすごく役立つ」

この絵心、素敵すぎる。見開きで1カ月分書けるノートだから、コーデのバリエーションが一目瞭然でわかりやすい。しかも、ゲルペンでざっと3秒くらいで書いて、色鉛筆で2秒くらいで塗って終了なのだとか。「適当ですよ」と言って笑うけど、色や柄まで細かく再現している。社内、社外ともに人と接することが多い仕事柄、着まわし上手が好印象につながるのだろう。

ブックカバーの中に、手帳、ペン、携帯電話、名刺入れを入れた取材セット

そんな彼女が社内で打ち合わせする際に持ち歩くのがこの手帳。ブックカバーを使っているのもポイントだ。

「手帳には手帳カバーではなく、ブックカバーを使用。そうすると、携帯電話や名刺入れも入れられる。あとは、ペンとか、会社の内線表とか。これだけまとめて持って、身軽に移動できるので便利です」

ブックカバーに小物を収納するとは、賢いアイディア。フットワーク軽く、社内の情報収集をしに行くのに役立っている。

社外の人へはどうアプローチしているのだろう。今注力している自社製品のデジタルカメラ「FR100L」は、やはりカバンの中に入れてある。

プライベートでも愛用している自社製品「FR100L」と、このデジカメで撮影した写真で手作りしたフォトブック。メディアの方やインフルエンサー、友だちに紹介したくて持ち歩いている

「この『FR100L』は自撮りができてビビッドな写真が撮れるんです。商品広報だからっていう理由以上に、私自身も本当に好きなカメラなので、おすすめしたくて持ち歩いていて。去年の夏に友だちとキャンプに行ったときの写真をフォトブックにまとめて、メディアの方やインフルエンサーたちに見せている。実物を持っていると説得力がちがいます」

千葉・木更津で仲間とキャンプをしたときの自撮り写真。広角なので、狭いテントでもしっかり撮れる

このテントの中で楽しむ写真は、なんと自撮り。カメラとコントローラーは取り外すことができ、カメラはクリップのように取り付けて撮影が可能だから、全員集合写真が仲よく撮れる。テント内の限られたスペースでも、広角だから広々と見せられて使い勝手がいい。商品だけでなく、キレイな写真を見せられると、このカメラを持ってお出かけしたくなる。原さん自身、もともとキャンプ好きなのかと聞くと、即答で「全然」。こんなに力強く言い切られるなんて、驚く。

「まったく好きじゃなかった。このカメラを担当してから、インスタ映えを狙って、自分でもお出かけして撮ってみたり。カメラ自体がキャンプに持っていくといいですよっていうコンセプトなので、撮影しているうちにハマりましたね」

もともとの自分が仕事によって変わった。変化をいとわない上に、おもしろがってさえいる。

「旅行に行くと、もうフォトブックを作る前提で写真を撮ってきます。これは最初のページに使えるなとかイメージしながら。ストーリーのある物作りが好きなのかも」

ほかに、ひとりで楽しむ趣味もある。

小説。ブックカバーの中には、吉田修一の『怒り』。「別々の場所の別々の暮らしの人たちが出てくる中で、『愛する人を信じられるか』という共通のテーマで並行して話が進んでいくのがおもしろかった」

「通勤電車での暇つぶしに、小説を読んだりします。ブックオフでたまにまとめ買いするのですが、大沢在昌、池井戸潤、真山仁とか、犯罪ものや企業ものを読むことが多い。いろんな人生を見られるじゃないですか、小説って。人の思惑がうごめく様がおもしろい」

人への好奇心が強い。大の人好きなのだ。そんな彼女はまさに広報向きだけれど、昔からあこがれの広報職を目指してがんばってきたわけではないという。

「私の中では、広報って説明する仕事っていうイメージがあって。人に説明するのが好きなので、やってみたいなと思ったんです。子どものころから、読んだ話や見た映画のストーリーを説明するのが好き。まわりは迷惑そうでしたが(笑)。一般的には派手なイメージのある職種だけど、実際は脇役だし地味ですよ」

広報として脇役に徹し、ていねいに説明し、相手に伝える。バッグは黒、時計も黒、見た目は目立たないようにしているけれど、会話で相手に近づく自信があるという。その秘訣は何なのだろうか。

「最近、早いんですよ。仕事でやり取りする記者さんと仲よくなるのが。扱ってる商品がガジェット系なので、男性記者の方が多いのですが、メールだけで仲よくなれることもあって。やっぱり適度にいじるのがコツですね。どこかしらパーソナルな部分に触れるようにしていて」

さらっとコツを教えてくれたけれど、そこまで仲よくない人をいじるって難しいはず……。

「仕事の付き合いだから、もちろん仕事の話をするんだけど、仕事じゃない話も出るような雰囲気を作ったり、実際そういう話題が出たら覚えておくことが大事。最近、『原さんには気軽にメールしやすいので、たいしたことない話でもつい聞いちゃう』と言ってもらえることが増えて、本当にうれしいです」

そういう彼女は、メールで仕事のやり取りをしたライターさんと、野球の話になった。一年後、ちょっとしたパーティで直接会う機会ができたときに、「ドアラが好きな原さん」と相手も覚えていてくれたという。なんて人の心を掴むのがうまい方なのか。

「いやいや、でも最初からコミュニケーションが得意だったわけじゃない。先輩がすごく上手で、相手をエレベーターホールにお連れする合間に、『そのスカートかわいいですね』と持ち物をさりげなく褒めて、グッと仲よくなるんですよ。そういうのを真似していくうちに、自分なりのコツをつかめるようになって。業界の話題や時事ネタはしっかりチェックして、隙あらば記者さんと連絡をとるようにしています」

コミュニケーション上手な彼女には、幅広く情報収集をしたり、コツコツ連絡をとる地道な努力があった。きちんと相手に伝わるような説明と気遣いを大切にする。目立つのは商品や相手であって、決して広報担当者ではない。黒のバッグには、脇役としてのポリシーを貫く彼女の強い意志がにじみ出ていた。

(取材・文:橋元理恵/マイナビウーマン編集部、写真:masaco)

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