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止まらないインプットと発信欲。池田エライザインタビュー

池田エライザは万能だ。

カメラを向ければ、まだこんな表情やポーズの幅があったのかってカメラマン含め驚かされたし、話を聞けば記事にしたい言葉が出てくる、出てくる。正直、今回は使いたい写真も言葉も多すぎて、作り上げるのに時間がかかった。

なぜ、ここまで万能なのか。そこには、止まらない彼女のインプットと発信欲があった。

私、まだやれる。高校生の彼女が決意したこと

デビューのきっかけは、友だちに誘われて受けたファッション誌『ニコラ』のオーディション。まだ中学生だった彼女にとって、はじまりはなんとなくでしかなかったのかもしれない。「モデルをやりたい」という強い志を持ったのは、オーディションが三次選考に進んだタイミングだった。

「一次、二次とオーディションを受ける過程で気持ちに変化がありました。私にも時間があって、相手にも時間がある。平等に流れる時間のなかで、私のことを考えてくれる人たちがいるからには、自分のパフォーマンスをちゃんと整えて臨むべきだって気づいたんです。大切にしているのは『対人(たいひと)』との関わり方。だから、そのとき生まれた気持ちは今だってちゃんと私の心にある」

今回、インタビューのためにもらえた時間は10分。世の中の注目をこれでもかと集め、多忙に過ごす彼女の10分はどれほど貴重なんだろう。「対人」として、この10分は本気で池田エライザと向き合おう。そんな大事なことを年下の彼女に気づかされるとは。

オーディションでグランプリを獲ってから訪れたのは、仕事のために地元の福岡と東京を往復する目まぐるしい日々。月の半分を東京で過ごすことだってあった。だけど、池田エライザはこの状況を「苦じゃなかった」なんてさらっと言える、最高に強くてかっこいい女の子。それだけではない。この安定した感情に、どうしても満足できない彼女がいた。

「苦じゃないって思えてしまう環境が嫌でした。『今のままでいいのかな』『私はやりたいことやれてるのかな』って、ずっとモヤモヤしてた。もっといろんな人に出会ったり、たくさんのことを感じたりして、自分と向き合いたかったんです。そのときは自己発信することが時代のブームであり、今私がやるべきことだと思ったから。発信するためにはインプットが必要で、この環境にずっといたら発信するネタも尽きるって確信した」

そして、高校3年生になった彼女は突然の決断をする。「私、来週東京に行く」と。卒業まで待ってる余裕はなかった。だって、まだやれるって意欲でいっぱいだったから。

ひとりの女の子が起こした発信のムーブメント

私がはじめて彼女のことを知ったのは、「自撮りの神」という呼称が一世を風靡したころ。両頬をつまんで唇をとがらせる「エライザポーズ」は多くの女の子たちを虜にしたし、みんなこぞって真似をした。まだ10代だった彼女が起こしたのは、自己発信のムーブメント。今や66万人のフォロワーがいるツイッターのはじまりも、突然の決意だった。

「『ツイッターをはじめるときは言って』と、事務所から忠告されてました。でも、ダメって言われる気がしたから勝手にアカウントを作っちゃった」

21歳とは思えない大人びた雰囲気を纏う彼女が、悪戯っぽく笑って歳相応の表情を見せる。それがすごくすごくキュートで、彼女のことを好きなすべての人にこの瞬間を共有したいとさえ思った。

「それまでは、ブログで公式な情報を発信するのが当たり前の流れでした。でも、それでは検索されないと見てもらえない。だから、ツイッターをやろうと思ったんです。それに、当時の私はすごく焦っていました。YouTuberだったり、読モだったり、いろんなカルチャーの方々が自己発信に時間を費やそうと意欲を持っていた時期だったから。私も、初心に返るつもりで発信をしていきたいなって気持ちになった」

池田エライザが発信のために力を入れているのは、何もSNSだけじゃない。芝居だってそのひとつだ。園子温監督の映画『みんな!エスパーだよ!』にはじまり、ここ数年はいくつもの作品に出演した。2017年の出演作は公開映画3本、ドラマは主演含めて5本と激動の一年だった。多くの作品に彼女が必要とされる理由はなんなのか。

「私、気を抜くと人とのコミュニケーションを遮断する癖があって。だけど、人に出会うことを目標にして活動していくなかで、エライザの本質を見抜いて『一緒に映画やろう』と声をかけてくださる方々に出会えたんです。廣木(隆一)監督が『実はエライザって暗いから、そういう役も似合うんだよ』って周囲に広めてくださることもあった。ご縁には本当に恵まれているなと思います」

ストレートで知的。考え方はどこまでも大人で、つねに俯瞰してものごとを見ているようにさえ感じる。今の彼女を形作るのは、一体どんな経験なんだろう。自身を変えたターニングポイントを聞けば「やっぱり園子温監督の作品に参加したことですね」という即答が。でも彼女、オーディションで彼の作品を「嫌いです」って言ったんじゃなかったっけ。

「オーディションで、私のありのままの発言を受け止めてくれたのが園監督でした。嘘をついて偽った自分じゃなく、ありのままで行ってありのままで受かったのがあのとき。それまではいい子にしなきゃいけないのかなって、発言を控えることも多かったんです。でも、どうしたって自分の意見は生まれてくるものだから。自分に対して正直にお芝居しようと思えたきっかけでした」

インタビューをした10分間、私はもう目が回りそうだった。だって、インプットしなきゃと思うことが次から次へと紡がれ、止まらない。彼女が大切にしている人との向き合い方も、発信したいという意欲も、周囲への感謝も、変化をくれた刺激も、その個性も。ひとつだって忘れちゃいけないし、この記事を読んでくれるすべての人に伝えるべきだと思った。

私が見て感じた、この10分間の「池田エライザ」は私しか知らない。だから、本気で向き合って生まれた、私なりの言葉を編んで記事にしよう。彼女と方法はたがえど、これが私の自己発信だ。

(取材・文:井田愛莉寿/マイナビウーマン編集部、撮影:前田立)

※この記事は2017年12月23日に公開されたものです

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