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ズルいほどにかっこよくて野心家。中島健インタビュー

これはやばい、とんでもなくズルい男が現れた。

きっかけはAbemaTVを見ていてどハマりした『真夏のオオカミくんには騙されない』という恋愛リアリティショー番組。そこに登場する、ケンというひとりの男の子に私は釘づけになった。

強気で強引な態度、余裕たっぷりな会話の間、勘違いしちゃうような言葉。番組のなかでケンが見せるすべてが、ズルいと思うほどにかっこいい。そんな彼は画面を飛び出したら、どんな素顔を持つ男の子なのか。――ケンこと、中島健の話を聞いてみたいと思ったのはこんな理由。

ちやほやされたい。はじまりはそんなもんだった。

「人前に出たりとか、ちやほやされたりするのが大好きでした。学生時代は生徒会長をやって積極的に人前に立つこともあった。でも、だからといってモデルや芝居をやろうとは考えたこともなかったんです。芸能界の仕事をはじめたのは、ただ知名度を上げてもっとちやほやされたいなっていう軽い気持ちからでした」

中島健は思ったことをそのままの言葉で伝えてくれる人だ。大抵の人が隠してしまう正直な気持ちだって迷いなく話す。だから、嘘がない言葉ひとつひとつに興味がわいたし、共感を覚えた。

「高校から大学に入るくらいの時期、あるオーディションに落ちたのがきっかけで声をかけてもらい、劇団に入りました。それで、舞台にも出させてもらった。でも、そのときは漠然とやっていて、お芝居に興味もなければモチベーションだって低かったんです。今だから言えるけど、それこそ『ちやほやされたい』って気持ちだけで、やる気を持ってやれてなかった」

注目を浴びたいという欲求は人間の奥底にある本音。だけど、そんな気持ちだけでは当然続かない。

「当時は学校に通いながら稽古に参加していました。授業があるので途中から参加することも多かったし、時間によっては参加できないこともあった。ほかのメンバーが毎日真剣に稽古しているなかで、段々と浮いた存在になってしまったんです。舞台はみんなで作り上げていくものなんだから当然ですよね。でも、あのころの僕は学校に通いながら、そのあと何時間も続く稽古が面倒くさいって思うようになっちゃってた。それで考えはじめるようになったんです。『俺、何やってんだろ』って」

ましてや2つのことを両立するのは、思ったよりも簡単じゃない。せっかくはじめた劇団での活動も結局やめることになってしまった。ちやほやされたい――そんなちっぽけな気持ちが野心に変わったのは、彼がある決断をしたから。

「『このままの生活をずっと繰り返していても、何にもなれないよな』って正直思ってた。だから僕、今の事務所に入ることになったタイミングで大学を休学したんです。もう一回本気でお芝居やろうって決意したから」

人生にはリスクヘッジがほしい。やりたいことをやるにしても、大学はちゃんと通っておかなきゃ。だって、転ばぬ先の杖がないと怖いから。少なくとも私が大学生のときはこんな保守的な感情でいっぱいだった。

休学という決断に不安はなかったのかと聞くと、彼は強気で得意げな笑みを浮かべながら「なかったですね」と迷いもなく言ってのけた。その反応、かっこよすぎて反則だ。

「親からは大学に行きながら活動したほうがいいって言われてたけど、そのときは自分が今やりたいことに専念したいって強く思ったんです。このままじゃ、仕事も学校も中途半端で終わってしまうような気がしたから、もう迷いなんてなかった」

本気だからこそ、楽しくて悔しい。

モデルと俳優、マルチにこなす中島健が今いちばんやりたいこと。それこそが芝居だという。その負けず嫌いな感情が嫌というほど伝わってくる彼は、俳優としてどんな人を目標にしているのだろう。

「よく聞かれるんですけど、実は目標にしてる人っていないんです。かっこいいなと思う俳優さんは、言い出したら止まらないくらいいますけど」

目標はあえて置かないのが中島健流。その理由を聞くと、野心たっぷりの言葉が返ってくるもんだから、私はまたぐっと心を掴まれた。

「だって、一緒になりたくない。たとえば『誰かを目標にして憧れてます』って言ったら、その人を真似してしまうような気がするんですよね。外見もそうだし、芝居だって人と被るのが好きじゃないんです。いつだって自分は自分で、自分らしくいたいから」

でも、そんな彼も悔しさを味わった出来事があった。天下無類の俳優、菅田将暉との共演だ。

「CMで共演したとき、あの人は本気ですごいって思った。勝手な意見ですけど、入りのときから無口でテンションが低い方なのかなって感じていたんです。でも、スタートがかかると同時に芝居のスイッチが入って、人格が180度変わったように見えた。あ、これが今いちばんメディアに出てる人なんだって妙に納得した瞬間でした」

刺激を受けたそのひとときが、楽しくて仕方なかったとでも言いたげな最上級の笑顔。だけど、表情とは裏腹に「レベルのちがいを見せつけられた」なんて、悔しさたっぷりの言葉を吐き出す。ここで臆せず、ビッグネームへのジェラシーだって口に出せるのが中島健らしさだし、彼が纏うかっこよさの理由なんだと思った。

ちっぽけなきっかけだって、いつか決意に変わる。

やりたいことに対して、最初から感心するような理由があるなら上出来。でも、そうじゃなくたっていいはずだ。続けていくうちに見えてくる決意だってある。

私が編集者になりたいと思ったのは、中学2年生のとき。とある音楽雑誌を読んで「編集者なら、このアーティストに会えるのか」ってよこしまな気持ちが芽生えたから。彼以上にちっぽけで、くだらない理由だったと思う。だけど今は、自分がいいなって思えたことを絶対記事にして伝えるんだという決意に変わった。――たとえば、中島健は外見だけじゃなくて、中身もめちゃくちゃかっこいいんだよ、とか。

「事務所のなかで『やっぱりこいつが一番やばいよな』『こいつがいなくなったら、うちの事務所まずいな』って思われるくらい、俳優として大きい存在になりたい」

教えてくれたのは、疑いがないほどに彼らしいとびきりの野望。もっともっと、その野心を大勢の人に知ってほしい。そんな欲求に駆られた私は、最後にこんな質問を投げかけた。今、中島健は俳優としてどれほどの到達地点にいるのか、と。

「まだ5%にも満たないですね。『俺、今すごいや』って思えた瞬間がないんで。ずっと上の人ばっか見てる。自分はまだまだだなって」

返ってきたのは、私が待っていた言葉。
ね、みなさん。最高にかっこよくないですか、彼。

(取材・文:井田愛莉寿/マイナビウーマン編集部、撮影:前田立)

※この記事は2017年12月21日に公開されたものです

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