【男女のマネートラブル】第1回 同棲中の浮気で慰謝料はもらえるの?
「彼氏がお金を返してくれない」「婚約破棄された」「不倫の慰謝料」。世の中の男女の問題にはお金がつきもの。そんな男女のマネートラブルの悩みに、多くの離婚・男女問題を解決してきた弁護士・堀井亜生先生が答えます! 法律面のアドバイスだけでなく、これまでの事例に基づく恋愛アドバイスももらえるので必見。 悩める子羊たち、門を叩きましょう!
【今回の相談】
27歳から5年間同棲した彼氏と別れることになってしまいました。証拠はありませんが、どうも浮気をしていたようです。彼氏とははっきりとではありませんが結婚の話も出ていたので、まさに青天の霹靂です。彼も私も今32歳。彼は男性だからいいものの、私は大事な時期を返してほしい気持ちでいっぱいです。なんとか慰謝料をもらうことはできないでしょうか。もらえるとしたらいくらぐらいもらえますか? (ゆき・32歳/医療・福祉/専門職)
堀井亜生先生の法律アドバイス
5年間も同棲して、はっきりではないとは言え結婚の話も出ていたということですから、相談者のゆきさんは彼と結婚するものだと信じていたと思います。そんな彼と別れることになってしまった、しかも浮気をされたようだとなれば、腹立たしい気持ちになるのは当然です。
ただし、彼から法律上、慰謝料がもらえるかどうかというのはまた別の話です。
結婚していないカップルが相手の浮気によって別れることになった時に、慰謝料を請求することができるのは、婚約を破棄された場合、または内縁関係にある場合の二通りです。
●「婚約」が認められる場合とは
まず、婚約が認められるのはどのような場合でしょうか。
単に交際中に「結婚しよう」とか「ずっと一緒にいられたらいいね」という程度のやりとりがあっただけでは婚約の成立は認められません。
といっても、婚約指輪をもらって、両方の家族にあいさつしていて……という一番正式な婚約の手続きを踏んでいなくても、婚約が認められることはあります。
実際の裁判では、結婚の意思が2人にあり、そのことがお互いの家族や親族にもはっきりと伝わっていたということで婚約が認められたことがあります。
一例をあげると、お互いの家族に「結婚相手」として紹介されたことがある場合。正式な顔合わせの会合や結納まではしていなくても、冠婚葬祭に家族同然の立場として出席していたような場合も含まれます。つまり、単に彼女として頻繁に出入りしているだけではなく、それ以上の立場であることがわかるような事情があればよいということになります。
ほかに結婚の意思があったことを裏付けられる事実としては、嫁入り道具を用意していたり、新居を購入しようとしていたりというものもあります。
ゆきさんの場合は、「はっきりとではありませんが結婚の話も出ていた」ということですが、例えば新居を購入して同棲している部屋から引っ越す準備をしていたという事情があったり、彼の親戚の冠婚葬祭に親族と同じ立場で出席していたりということがあれば、婚約していたと認められる可能性があります。
もちろん、裁判でこれらの事実を認定してもらうためには、それぞれの事実を証明する客観的な証拠が必要になります。
●「内縁関係」が認められる場合とは
次に、内縁関係についてです。
内縁関係とは、婚姻届を出していなくても、それ以外の点では普通の夫婦とまったく同じ状態である場合に、婚姻届を出した夫婦に準じる保護が与えられるというものです。
内縁が認められる条件は、当事者間に婚姻の意思があって、かつ共同生活を送っていること。
この場合の婚姻の意思というのは、婚姻届を出すつもりがあるかどうかではなく、実質的な夫婦関係になりたいという意思があるかどうかです。
例えば、お互いの職場で実質的に夫婦として扱われていたり、長期間同居 をしていたり、お互いの冠婚葬祭に親族として出席していたりという事情が複数あると、社会的に夫婦として認められている、夫婦関係になりたいという意思がある、として内縁関係が認められることもあります。
さらに、家計が一緒であるという点も重視されます。
ゆきさんの場合は、5年間同棲していたということですが、それ以外に上記のような「実質的な夫婦関係になりたいという意思」が認められる事実がなければ、内縁関係が認められるのは難しいでしょう。
●婚約や内縁関係が認められた場合の慰謝料
もし婚約や内縁関係が認定されて慰謝料請求が認められた場合、慰謝料は数十万円から300万円程度が相場となります。
慰謝料を請求するためには婚約や内縁関係が正当な理由なく破棄されたり解消されている必要があるので、そのためには彼の浮気の証拠も必要です。2人が不仲になってしまったという理由だけでは慰謝料の請求は難しいでしょう。
このように、結婚していないカップルが別れた場合、相手に非があったとしても、慰謝料を請求するのは非常に大変です。
そのぐらい、結婚していない、婚約していないというのは法律的に不安定な立場だと言えるでしょう。
堀井亜生先生の恋愛アドバイス
あなたが、結婚を望んでいると伝えているのにはっきりしない男性は、時期が問題なのではなく、そもそも結婚の意思が薄いことが多いです。
大切な時期を彼が変わることに期待して過ごすよりも、積極的に結婚したいと伝え続けて、それでもダメそうであれば、新しい出会いを求める方が健全かもしれません。
結婚で相手に幸せにしてほしい、ではなく、自ら結婚して幸せをつかむ! という気持ちが、いい相手を見つけるコツだと思います。
(監修・文:堀井亜生)
※画像はイメージです
★次回の『男女のマネートラブル』は11月8日(火)公開予定です。お楽しみに!
※この記事は2016年10月25日に公開されたものです