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プロに聞く!全くの初心者が美術鑑賞を始めるにはどうしたらいい?―TV番組まず見る「『NHK 日曜美術館』『テレ東 美の巨人たち』」

ハードルが高そうな趣味の一つに「美術鑑賞」が挙げられます。専門的な知識が必要とされるなど、取っ付きにくい印象が強いですよね。ただ「興味はあるけど何をどうすればいいのか分からない」という人も多いでしょう。

筆者などまさにそれ。アプローチ方法が分からないのです。そこで今回は、初心者が美術鑑賞を始める際のアドバイスを、美術情報雑誌『月刊美術』の編集長・若林正臣さんに伺いました。

【1年に1回以上、美術館・美術展に行く人は32% ─ ライフメディア調べ】

まずは画集やテレビ番組など手軽なもので美術に触れてみる

――全くの初心者が「美術鑑賞を始めたい」と思った場合、まず何をすればいいのでしょうか? やはり美術館などに行ってみるのがいいのでしょうか?

若林さん ただ漠然と美術館に行くのはあまりお薦めできません。一口に美術といっても、そのジャンルは多岐にわたります。また、全く予備知識がない状態で美術館に足を運んでも、何をどう見ていいのか分からないと思います。

まずは図書館や書店に行くのをお薦めします。そこで画集や作品集を見たり買ったりして、自分が良いと思うものや興味が持てそうなアートを探すのがいいでしょう。

――美術館に行くより手軽ですね。

若林さん そうです。また、手軽に行けるだけでなく、図書館の場合はお金も掛かりませんし、たくさんの画集を見ることができます。書店の場合も、アートを特集したカルチャー誌を買うことができますし、トレンドアートの画集を集めたフェアなどを行っていることもありますので、参考になると思います。

――画集を集めたフェアなどは、初心者にとっては指針の一つになるでしょうね。

若林さん 他には、テレビの美術番組を見るのもいいですね。NHKで放送されている『日曜美術館』や、テレビ東京系列の『美の巨人たち』といった番組は、タイムリーな美術情報や展覧会の情報、またそのときのトレンドなどを知ることができます。

――他にはどういった点が美術番組の魅力なのでしょうか?

若林さん 美術番組は、画家のエピソードや関係者のインタビューなども充実しています。例えば、若くして亡くなった菱田春草という日本画家が番組で取り上げられた際は、晩年は目も見えないような状態で見事な絵を描き上げたというエピソードが紹介されました。

こうした作品にまつわるストーリーを学ぶことによって、作品を「立体的」に理解することができます。

――なるほど。そうした作品の裏の話を知ることで、より愛着も湧くかもしれませんね。

若林さん より深い部分で作品を理解できるのは大きいと思います。プロも参考にする番組ですから、初心者でも見続けるだけでかなりの知識が付きますよ。

より身近な工芸はアート入門に最適!

――初心者がアートの世界に入る場合、まずはどんなジャンルのものがいいのでしょうか?

若林さん ガラス工芸や焼き物といった「工芸美術」がいいと思います。「工芸」といっても、大量生産されるようなものではなく、作家が作る一点ものですね。工芸の世界には、センスのある若手も多く、魅力ある作品が数多くあります。

また、「うつわ」や「花器」など、生活に身近なものが多く、親しみやすいのもポイントです。

――確かに絵画よりは身近に感じることができます。

若林さん 実際に購入しやすい金額というのもお薦めする理由です。絵画などは安くても数万円というものが多いのですが、うつわや花器などは数千円で購入できます。全く同じものは存在しない一点物ばかりですから、愛着も湧きますよ。

より楽しみたいのなら、茨城県の笠間や栃木県の益子、岐阜県の多治見といった「焼き物の里」を巡るのもいいですね。旅行感覚で美術品を楽しむのも面白いです。

――楽しみながら学ぶことで、より知識を吸収できたり、好きになれそうですね。

若林さん 焼き物だけでなく、他にも地方では街ぐるみでアートイベントを行っていたりします。そうした地方のアートイベントも魅力的ですよ。

ギャラリーツアーでタダで美術鑑賞!

――他にはどんな初心者向けのアプローチがありますか?

若林さん 一般の方にはあまり知られていないもので、美術画廊を巡るというものがあります。例えば、東京の日本橋や銀座にはたくさんの画廊があって、個展やグループ展などたくさんの展覧会が開かれています。

――画廊と聞くと、初心者には入りづらいイメージがありますが……。

若林さん 初心者には入りづらい画廊もありますが、気軽に入ることができるところもたくさんありますよ。無料でさまざまなアートが見られるので、画廊巡りを趣味にしている人もいるくらいですからね。画廊では現代作家の企画展などを行っていることが多く、実際に作家さんがその場にいることもあります。

直接作品の説明を受けることができるのも、画廊の展覧会の魅力です。

――作家さんとお話しできるのは貴重ですね。

若林さん 初心者でも気軽に参加できるギャラリーツアーというものもあります。画廊のスタッフがガイド役として同行してくれますので、とても勉強になると思いますよ。画廊と言っても、日本画を中心に扱う店もあれば、版画や工芸を専門に扱う店もあります。

ツアーに参加すれば、色々なジャンルの画廊を一度にめぐることができますし、何よりも一人でも参加しやすいのが魅力だと思いますね。

――他の参加者の方にもいろいろ教えてもらいながら楽しめそうです。

若林さん 適切なアドバイスをしてくれる人と知り合うことができればしめたものです。それには馴染みの画廊をつくるのが一番。他にも、気軽に美術鑑賞ができるものではデパートのアートギャラリーもいいですね。デパートの閉店時間までやっているところもあるので、仕事帰りに気軽に立ち寄って美術鑑賞ができます。

――毎日仕事帰りに美術品を見ることで、「見る目」も養われそうですね。

若林さん デパートのギャラリーにも、専門のスタッフや作家さんがいることが多いので、いろいろな情報を得ることができます。こうして、美術を通じてさまざまな人と交流できるのは楽しいことですし、作家さんなど、アーティスティックな世界にいる方と話をすることで、新鮮な刺激を受けることもできますよ。

初心者が美術鑑賞を始める際は、このようなアプローチをするのがお薦めとのことでした。図書館に書店、テレビ番組の鑑賞など、手軽なものばかりです。また、若林さんによると、東京の上野周辺は美術館が多いので、初心者でも先々の情報を入手しやすいとのこと。

まずはここからスタートしてみるのもいいかもしれません。

皆さんも、若林さんのアドバイスを参考に、今日から美術鑑賞を始めてみませんか?

『月刊美術』
⇒http://www.gekkanbijutsu.co.jp/

(中田ボンベ@dcp)

※この記事は2014年11月09日に公開されたものです

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