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動かないはずの北極星が動いている?

夜空で星座を探す時の目印になる星の1つである「北極星」。

【宇宙空間はいったい何度?「-270℃」】

いつもほぼ真北に輝いているため、はるか昔から船乗りたちに目印としても活用されてきました。

けれども、北極星は真北に見えるということ以外、どんな星なのかを詳しくご存知の方は少ないのではないでしょうか。

そこで今回は、北極星の真の姿に迫ってみたいと思います。

北極星の正体とは

北極星といえば、理科の授業でも登場するおなじみの星ですが、そもそもいったい何者なのでしょうか。

その正体は、こぐま座の「ポラリス」です。こぐまのシッポの位置にあたるポラリスは、地球からおよそ430光年も離れたところにある2等星ですが、太陽の明るさの2,000倍以上の輝きを放っています。偶然この星が真北にあってほとんど動かないために、北極星と呼ばれているのです。

ちなみに、北極点で北極星を見ると、ほぼ真上(天の北極方向)に見えます。また、日本の北緯35度の地点では、北極星もおよそ高度35度の位置に見えます。つまり、北半球で北極星の高度を調べれば、自分がいる場所のだいたいの緯度も分かるというわけです。

ポラリスは三兄弟の星

北極星としての役割を果たすポラリスですが、実は1つの星ではなく、3兄弟の星(三重連星)になっています。

メインの星「ポラリスA」は太陽の30倍程度の大きさを持つ黄色の巨大な星で、それ以外に2つの星(「ポラリスB」と「ポラリスP」)を従えています。

これらの星はお互いに引力を及ぼし合いながら運動していますが、ポラリスAとポラリスPとの距離はおよそ20天文単位(地球~太陽間の距離の20倍)離れていますし、ポラリスAとポラリスBに至っては、2,700天文単位も離れています。

また、ポラリスAはおよそ4日という短い周期で、明るさがわずかに変化する「変光星」としても知られています。

北極星はなぜ動かない?

太陽や月、その他の星や星座についても同じ場所に留まっていることは無く、常に動いていることは皆さんもご存じだと思います。にもかかわらず、北極星に限っては常にほぼ真北にあって動かないのはなぜでしょうか。

その理由は地球の自転と深い関係があります。

地球は北極点と南極点とを一直線に結ぶ回転軸(地軸)を中心に自転しています。太陽や恒星などは、この地球の自転の影響によって、見かけ上は毎日移動しているように見えています(これを「日周運動」といいます)。北極星も数ある恒星の1つですが、たまたまこの地軸の北極側をずっと延長していった位置(天の北極)にあるため、地球がどれだけ自転してもほとんど動かないように見えるというわけです。

しかし、厳密に言えば北極星の位置は天の北極からほんの少しだけズレているため、よく見ると小さな円を描きながらわずかに動いています。

北極星は移り変わる?

常に位置が変わらない北極星ですが、長期的に見た場合にはそうとも言えません。

なぜなら、地軸は常に安定していて動かないように思われますが、およそ26,000年という長い周期でコマが回転するときのように微妙にブレています(これを「歳差(さいさ)運動」といいます)。その影響により、今の北極星は西暦2100年頃に天の北極にもっとも近づきます。

さらに、北極星そのもの(地軸の北極側の延長線上にあたる星)も、数千年という長い目で見れば、現在のポラリスから別の星へと移り変わっていきます。

たとえば、今から4,000年ほど前にはりゅう座の4等星「トゥバン」がその役割を担っていました。また将来を見ると、8,000年後にははくちょう座の1等星「デネブ」が、12,000年後には織姫としても有名なこと座の1等星「ベガ」が新たに北極星に就任することになります。

まとめ

北半球ではいつも真北に輝いている北極星。常に同じ位置に見えるため、古くから方角を知るための手段として重宝されてきました。

その正体はこぐま座のポラリスで、見える位置が変わらないのは、ちょうど地球の地軸の延長上にあるためでした。しかし、将来的には歳差運動の影響によって、はくちょう座のデネブやこと座のベガへと移り変わっていくことが分かっています。

このような感じで、宇宙は常に変化しているわけです。

(文/TERA)

著者プロフィール

TERA。小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。

※この記事は2014年02月10日に公開されたものです

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