山本太郎さんからメッセージも。卵巣に影響する!? 放射能から身体を守る方法とは?
福島第1原発事故から丸2年、事故は「収束」したとれされ、被ばくに関する報道はめっきり減りました。しかし、実際のところはどうなのでしょう。放射能による被ばくが及ぼす女性への影響を北海道がん治療センター名誉院長の西尾正道先生におうかがいしました。 また、今年7月、参議院議員に初当選した山本太郎さんも、被ばくのリスクを訴え続けてきたひとり。「将来、命を育む可能性がある女性たちこそ身を守ってほしい」と、今回メッセージをいただきました。
「被ばく」は次世代にまで影響を及ぼす
「被ばく」というと、がんや白血病というイメージを浮かべる方が多いかもしれません。しかし、西尾先生は「チェルノブイリ原発事故後、周辺では慢性的なあらゆる病気や、次世代への影響が報告されている。年間放射線量5ミリシーベルト以上の地域で、赤ちゃんへの先天性の異常が明らかに増えています」と指摘しています。「生まれてくる子どもに障害が出るなんて」と意外に感じる人もいるかもしれません。しかし、「放射性物質は胎盤を通り抜けるほど小さいので、胎児に影響を与えてしまう」とのこと。西尾先生は影響を受けやすい場所のひとつに「卵巣」を挙げ、「卵巣内の卵子が被ばくによって傷つけられた場合、流産や奇形児の増加、ひいては不妊なども想定されます」といいます。
体の中でも、被ばくの影響を受けやすいところ
放射線を浴びた場合、体の中でも特に影響を受けやすい場所はどこなのでしょうか。西尾先生は「細胞分裂が活発なところ、増殖力や再生能力が旺盛なところ、形や機能が未分化なところ」と具体的に、部位を教えてくれました。
・骨髄(白血球や赤血球、血小板が作られている場所)
・腸管(腸の上皮が影響を受けやすく、被ばくすると吐き気や下痢といった症状を引き起こす)
・皮膚
・精巣
・卵巣(女性の場合。卵巣の中の卵子は未成熟であるため、放射線に弱い個所である)
・目の水晶体(水晶体は透明性を保つため盛んに細胞分裂しており、細胞分裂が少なくなると白内障になる)
上記のように、放射線は体のいたるところに影響を与えます。食事などで取り込んだ放射性物質が、体内に溜まり、被ばくを続けることを「内部被ばく」と呼びます。それによって遺伝子が傷つけられた場合、次世代以降への影響が想定されます。たとえば、あなた自身や子どもの世代は無事であったとしても、孫以降の世代に影響が出ることは十分考えられるのです。 「低線量被ばくの晩発性障害についてデータが少なく、言い切れる結論はありませんが、『わからないから安全』とするのではなく、『わからないから危険』と考えることも必要なのかもしれません」と西尾先生はいいます。
バランスのとれた食事など、「当たり前」のことを
「これからは土壌の汚染とともに海洋汚染が問題になる」と西尾先生はいいます。どのように健康を守ればよいのか、具体的な注意点を教えてもらいました。 「放射性物質は魚介類に取り込まれるので、魚を食べる時は要注意です。魚の骨はストロンチウムが溜まっている可能性があるので、食べないようにしたいものです(骨ごと食べる小魚は避けたほうがよいでしょう)。また、安全な食材からカルシウムを十分に取り込んでおくことが大事です。たとえストロンチウムが体内に入っても、カルシウムで満たされている状態では、吸収率が低くなるからです。当たり前のことですが、栄養バランスのとれた普段の正しい食生活が、あなたの健康を守ることにつながります」(西尾先生)。 「今は、体の不調は何もない」「子どもを産む予定はない」という人が多いかもしれません。ですが、数年後の健やかな人生のために、少し立ち止まって健康について考えてみてもよいかもしれませんね。
■西尾正道先生
函館市出身。北海道がん治療センター名誉院長。 著書に「がんセンター院長が語る 放射線健康障害の真実」「今、本当に受けたいがん治療」など専門著書多数。
(取材協力:西尾正道、文:山守麻衣)
※画像はイメージです
※この記事は 総合医学情報誌「MMJ(The Mainichi Medical Journal)」編集部による内容チェックに基づき、マイナビウーマン編集部が加筆・修正などのうえ、掲載しました(2018.06.07)
※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください
※この記事は2013年10月01日に公開されたものです