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アンダーマイニング効果とは? 意味や具体例・陥らないための方法

永瀬なみ(幸せコラムニスト・カウンセラー)

ラフな気持ちで始めたSNSなのに、いつの間にか『いいね』をもらうことが目的になっていた。そんな心理状態になるのは「アンダーマイニング効果」が原因かもしれません。今回はそんなアンダーマイニング効果と具体例、エンハンシング効果についても解説します。

「最初はやる気に満ちていたのに、気付いたらモチベーションが下がっていた……」そんな経験はありませんか? もしかすると、それは「アンダーマイニング効果」という現象が原因かもしれません。

今回は、アンダーマイニング効果の意味や具体例、防ぐ方法などを分かりやすく解説します。

仕事や趣味などに対するモチベーションが下がった理由を知りたい人は、ぜひ参考にしてみてください。

アンダーマイニング効果とは?

アンダーマイニング効果とは、報酬をもらうことで次から報酬のない状態ではやりたくなくなってしまう心理現象のこと。

「好きで始めたことなのに、いつの間にか報酬が目的になっていた」

これが、アンダーマイニング効果(undermining effect)です。

報酬とは、金銭や褒め言葉、SNSの反応などを指します。例えばSNSで以下の現象が起こるのも、アンダーマイニング効果の一種と考えられるでしょう。

「最初は情報を発信すること自体が好きで始めたSNSなのに、いつの間にか『いいね』をもらうために情報を発信するようになっていた」

一度こういった状態になると、思うように『いいね』をもらえなくなることでやる気が起きなくなってしまう恐れがあります。

では、アンダーマイニング効果が起こるのは一体なぜでしょうか?

「やる気」とは? なぜアンダーマイニング効果が起こるのか

アンダーマイニング効果が起こる理由を知るには、人の「やる気」がどこからくるのかをまず理解しなければいけません。

やる気の原因は「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」の2つ

私たちのやる気には、2つの原因があります。それは、「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」です。

外発的動機づけとは、その名の通り「自分の外側にある原因がやる気の元となっていること」です。

一方、内発的動機づけとは「内側からやる気が湧き上がること」を指します。

例えば、「お金を稼がないと生活できない」という理由は外発的動機づけです。反対に、「好きだから」という理由は内発的動機づけです。

他の理由としては、それぞれ以下のような例が挙げられます。

外発的動機づけの例

・ボーナスの査定が近いから

・上司に怒られるから

・褒められたいから

など

内発的動機づけの例

・楽しいから

・チャレンジしてみたいから

・達成感を味わいたいから

など

外発的動機づけは自分の外側に目が向いているのに対して、内発的動機づけは自分の内側に目が向いています。

また、外発的動機づけで動いた先には必ず何かしらの報酬を期待しているのに対して、内発的動機づけで動いた先には特に報酬を求めていません。

「やりたいからやるだけ。他に理由なんてない」

こんなふうに思えるのは、内発的動機づけの大きな特徴です。

内発的動機づけ+「報酬」でアンダーマイニング効果が起こる

「報酬がなくてもやりたい」と思って始めたことでも、途中で報酬をもらうと「報酬をもらえないならやりたくない」と思い始めるケースがあります。

内発的動機づけで始めたことなのに、途中で外発的動機づけが加わったことにより、最終的には外発的動機づけだけが残ってしまう。これが、アンダーマイニング効果です。

アンダーマイニング効果の実験例

もう少しかみ砕いて説明するために、心理学者のデシとレッパーが過去に行った実験結果を紹介します。

まず、大学生を2つのグループに分けてパズルを解いてもらいました。

1日目は両グループとも自由に解いてもらいますが、2日目は片方のグループにだけ「解けたら報酬を支払う」と告げます。そして3日目は、再び両グループとも自由にパズルを解いてもらいました。

すると2日目に報酬をもらえたグループのメンバーは、3日目のパズルに対するモチベーションが下がったのです。

最初はパズルを解くことが目的だったのに対して、報酬が発生すると報酬をもらうことが目的に変わってしまう。これが、アンダーマイニング効果の原因です。

アンダーマイニング効果を防ぐための対策

前述した通り、アンダーマイニング効果は報酬が加わることで起こる心理現象です。とはいえ、仕事であれば報酬があるのは当然のこと。

では仕事に関するアンダーマイニング効果を防ぐには、どのような対策が有効なのでしょうか?

結論として、アンダーマイニング効果を防ぐには内発的動機づけを意識するのがおすすめです。

例えば「どうしてこの仕事を選んだのか」や「自分は何を楽しいと思うタイプなのか」などを追究すると、内発的動機づけを意識できるでしょう。

同じ会社に勤めていても、みんなが同じ業務にやりがいを感じるわけではありません。誰かをサポートすることが好きなタイプもいれば、全てを1人で完結させたいタイプもいます。

あなたは、どんなことを仕事に求めるタイプなのでしょうか?

何をすれば、満足感を増やせるのでしょう?

そのために今できることは、何だと思いますか?

こうして自分が魅力的だと思うものを掘り下げていけば、きっとまた内発的動機づけが湧き上がってくるはずです。

やる気が徐々になくなってきた時は、アンダーマイニング効果によって内発的動機づけを見失っている可能性があります。もしかすると、最初と今では仕事への取り組み方に違いがあるのかもしれません。

結局のところ、仕事を楽しめるかどうかは自分次第です。もし「こんな仕事はしたくない」と感じているのだとしたら、ぜひその理由を追究してみてください。

自分に正直な行動を取れば、きっとまた内発的動機づけを感じられるはずですよ。

報酬によっては「エンハンシング効果」が起こる

内発的動機づけで始めたことなのに、途中で外発的動機づけが加わったことにより、最終的には外発的動機づけだけが残ってしまう。これが「アンダーマイニング効果」であると、お伝えしました。

しかし同じ外発的動機づけでも、中には内発的動機づけを高める効果を持つものがあります。それは「称賛」です。

そして、称賛(外発的動機づけ)によって内発的動機づけを高める心理効果を「エンハンシング効果」といいます。

称賛とは、簡単にいうと「褒め言葉」のこと。先ほど、褒め言葉は報酬の1つだと紹介しました。しかし同じ報酬でも、褒め言葉は唯一アンダーマイニング効果を引き起こしません。

例えば、同じ外発的動機づけでも「怒られたくないから」という理由と「褒められたいから」という理由ではモチベーションの続き方が異なります。

というのも、「怒られたくないから」という理由で起こっていたやる気は「怒られたくない」という気持ちがあるからこそ湧き出るものだからです。「怒られてもいいや」と思ったり、怒る相手そのものがいなくなったりすれば、やる気は自ずと消えていきます。

一方、褒め言葉によって湧き出たやる気は簡単に消えません。それどころか、内発的動機づけにより高まっていたやる気をさらに高める効果が、褒め言葉にはあります。

このように、途中で外発的動機づけが加わったことによって内発的動機づけをさらに高める心理効果を「エンハンシング効果」というのです。

エンハンシング効果がある褒め言葉

エンハンシング効果を期待して誰かを褒めるなら、努力や行動に対して褒めるのがおすすめです。

具体的には、こんな褒め言葉にはエンハンシング効果が期待できるでしょう。

・よく頑張ったね

・努力が実ったんだね

・ここの工夫が良かったよ

エンハンシング効果が半減する褒め言葉

逆に、能力や性格に対する褒め言葉を選ぶとエンハンシング効果は半減します。

例えば、これらは能力や性格に対する褒め言葉です。

・やればできると思ってた

・頭が良い、美人、スタイルが良い

・真面目、強い、センスがある

こういった言葉を掛けられると、自分の努力ではなく元から備わっているものを褒められたように感じます。

すると「これ以上は努力しなくても大丈夫」と思ったり、伝えた人の気持ちとは裏腹に「褒められた気がしない」と感じたりする可能性があるため、エンハンシング効果は半減するのです。

また同じ称賛でも、“言葉”ではなく賞状やトロフィーといった“賞品”を得た場合には、エンハンシング効果ではなくアンダーマイニング効果が起こります。

エンハンシング効果を得られるのは、あくまでも努力や行動に対する褒め言葉だけです。称賛なら何でも良いわけではありませんので、ぜひ覚えておいてくださいね。

「報酬には代えられない目的」を探してみよう

自分の外側ではなく内側に目を向けることで、アンダーマイニング効果に陥ることをある程度は防げます。

ただ、そもそもアンダーマイニング効果は意図せず陥ってしまうものです。そう考えると、陥ることを完全に防ぐのはやはり難しいかもしれません。

もしアンダーマイニング効果に陥っていることに気付いたら、ぜひ初心に返ってみてください。それでも報酬を目的にする気持ちから離れられない時は、また別の目的を探してみると良いでしょう。

決して報酬に代えられない目的を持てば、きっと報酬を得てもモチベーションは持続しますよ。

(永瀬 なみ)

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※画像はイメージです

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