「小職」とは? 正しい意味と使い方
ビジネスシーンで目にする「小職」という言葉。読み方は、“しょうしょく”です。今回は、ビジネスマナーに詳しいライターのmacoさんが意味や使い方を解説。「女性も使える?/小生との違いは?」などの疑問に答えます。
使う人の立場やシチュエーションによっては、マナー違反になってしまうこともあるビジネス用語。
「小職」もその例外ではなく、使用するのに適した状況というものがあります。
言葉の意味と使い方をしっかり理解して、正しく使えるようにしておきましょう。今回は、「小職」について詳しく解説します。
「小職」の読み方と意味
まずは、「小職」の読み方と意味をチェックしてみましょう。
小 職(しょうしょく)
【一】[名]地位の低い官職。
【二】[代]官職についている人が自分をへりくだっていう語。小官。
(『デジタル大辞泉』より)
「官職」とは、公務員に割り当てられる職務と地位のこと。
つまり「小職」とは、ある程度の地位にいる立場の国家公務員が、自分をへりくだって表現する際に使われる言葉でした。
ただし、最近では「公務員専用の言葉」というニュアンスが弱まり、一般企業に勤めた役職を持つ人が自分を「小職」と表現するシーンも少なくありません。
「小職」の正しい使い方
ここでは、「小職」の使い方について、具体的な例文を交えて紹介します。
メールや手紙で使用するのが一般的
「小職」は、口頭で相手と直接話す際にはあまり使わず、メールや手紙などの書き言葉として用います。
【例文】
・ご不明な点がございましたら、小職までご連絡ください。
・来週の打ち合わせには、小職も参加いたします。
・小職も貴社のお力になれるよう、精進してまいります。
このように、「私」を「小職」に置き換えて使用するのが一般的です。
役職に就いている人が使うもの
「一般的には高いとされる自分の地位を謙遜する」という役割を担い、元々は国家公務員が使う言葉だった「小職」。
民間企業で使う場合も、課長や部長といった、何らかの役職に就いている人が使用します。
とはいえ、「小職を使える役職は、ここからここまで!」といった明確なルールはありません。受け取り手の感覚やシチュエーションによっては、失礼にあたる可能性もあるので注意が必要です。
女性が使ってもOK?
「小職」に似た意味を持つ「小生」という言葉があります。これは、男性が自らをへりくだって指す表現のため、「小職」も同様に性別の決まりがあるのでは? と疑問を持つ人もいるようです。
しかし、「小職」は「小生」のように男性だけを指す言葉ではありません。女性も同様に使うことができます。
一般の会社員が使うのはOK?
前述した通り、「小職」は基本的に、ある程度地位の高い人が使用する言葉です。
そのため、「へりくだる地位」のない人、つまり役職に就いていない人が自分のことを「小職」と表現するのは不適切であると考えられます。
失礼だと感じる人は少ないかもしれませんが、「ビジネスマナーを知らない人」という印象を与え、相手からの信用を落としかねないので要注意。
メールや手紙のような、後々形に残ってしまう書き言葉であるからこそ、使い方には気をつけましょう。
基本的には言い換えるのがおすすめ
今や民間企業でも使われるようになった「小職」ですが、使える人が限られている上に明確なルールがないため、適切なシーンを見極めるのが非常に難しいでしょう。
自分では正しく使用したつもりでも、相手によってはあまりいい印象を持たないこともあるため、関係性にヒビが入るリスクもゼロではありません。
ビジネスシーンで一人称を表す言葉は、「小職」以外にもたくさんあります。
「部長クラスだったら使ってもOK?」「失礼にならない?」と迷うようであれば、迷わず使える言葉に言い換えた方が、余計な心配をせずに相手とコミュニケーションが取れますよ。
類語との違い
「小生」や「当職」など、「小職」に似ている言葉はいくつかあります。それぞれの違いを明確にしておきましょう。
小生
「小生(しょうせい)」とは、男性が自分をへりくだって表現する言葉で、手紙などの文章で用いるのが一般的です。
「小職」との決定的な違いは、使用する人の立場。
「小職」は官職に就いている人が使う言葉であるのに対し、「小生」は男性であれば、どの職業に就いていても問題なく使えます。
一方で「小生」は、自分と同等もしくは目下の人に対してのみ用いることができる言葉なので、上司など目上の人相手に使ってしまうと、「偉そう」といった印象を与えてしまいかねません。
さらに、「小生」という表現は、現代ではあまり使われなくなっています。そのため、ビジネスシーンで使用すると、相手にやや古い印象を与えてしまう可能性もあります。
当職
「当職(とうしょく)」とは、一般的に弁護士・行政書士・税理士などの「士業」と呼ばれる人が用いる一人称です。
「小職」との違いは、使用できる人の職業。とはいえ、どちらも限られた職種の人しか使うことができないため、限定的な言葉だと言えるでしょう。
「当職」には「小職」のようなへりくだったニュアンスが含まれていないのも、違いの1つです。
また、「当職」には「この職業・職務・現在の職業」といった意味もあります。こちらであれば職業に関係なく使用することができます。
弊職
「弊職(へいしょく)」とは、企業や組織において、ある職業に就いている自分をへりくだって指す言葉として生まれました。
「小職」「小生」「当職」のように、使用する人の職業や性別に決まりがないため、比較的使いやすいという特徴があります。
しかし、あまり一般的な言葉ではないため、相手に違和感を与えてしまう可能性も。ビジネスシーンではなるべく使わない方がいいものとされています。
当方
「当方(とうほう)」とは、「自分の属している方」を指す言葉です。対義語は、相手側の方を指す「先方」。
「当方は一切の責任を負いかねます」「先方に確認してみます」など、ビジネスシーンで使われることが多く、よく見聞きするという人も多いのではないでしょうか。
「小職」との大きな違いは、自分個人を指す言葉ではないということ。自分を含む会社や組織全体を指して「当方」と呼びます。したがって、ニュアンスとして“私”ではなく“私ども”と表現したい時に使えるでしょう。
また「当方」はへりくだった表現ではなく、比較的フラットな場で使われるというのも、「小職」との違いの1つです。
「小職」の言い換え一覧
ビジネスメールや手紙を書く際に、「小職」という表現がふさわしいか迷ったならば、以下の3つのいずれかに言い換えるのがおすすめです。
1.私(わたし・わたくし)
2.私共(わたくしども)
3.当方
自分個人のみを強調したい場合は「私」を、自分とその組織を含めた表現にしたい場合は「私共・当方」を使いましょう。
どれもへりくだったニュアンスはないものの、どんなシーンでも失礼にはあたらない言葉なので、安心して使用することができます。
書き言葉だけではなく、話し言葉としても適切なので、非常に使い勝手がいい言葉です。
【言い換えの例文】
・何かご不明なことがありましたら、小職までご連絡ください。
→何かご不明なことがありましたら、私までご連絡ください(「私〇〇まで」と名前を記載してもOK)。
・今週の事前打ち合わせには小職も参加いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
→今週の事前打ち合わせには当方も参加いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします(複数名で参加する場合は「私共」でもOK)。
・小職も微力ながら貴社の発展に貢献できるよう、精進してまいります。
→私共も微力ながら貴社の発展に貢献できるよう、精進してまいります。
くだけた表現になりすぎず、かといって使い方に迷う表現でもないこれらの言い換えフレーズは、押さえておいて損はないでしょう。
誤った使い方に要注意!
「小職」をはじめとするやや堅めのビジネス用語は、意味や使い方をしっかりと把握していないと、失礼にあたる可能性があります。
「小職」を誤用することにより、やりとりをしている相手から「偉そうな人」「ビジネスマナーを知らない人」と相手に思われてしまうのは、避けたいですよね。
相手との信頼関係を構築するためにも、不安な場合は使いやすい言葉で言い換えるなどして、誤用のリスクを減らしましょう。
(maco)
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