「ご指導ご鞭撻」の意味と正しい使い方【例文付き】
結婚式のスピーチなどでもよく耳にする「ご指導ご鞭撻のほど」という言葉。ビジネスシーンでも使用する機会があるフレーズですが、その意味を正しく理解できていますか? 今回は「ご指導ご鞭撻」の意味や使い方を紹介します。
結婚披露宴に出席すると、新郎や新郎の父親のあいさつで「皆さま、どうか(若い2人に)ご指導ご鞭撻をよろしくお願いいたします」という締めくくりの言葉は、必ずと言っていいほど耳にしますよね。
ビジネスシーンでも使われる表現ですが、中には、あまり意味を理解せずに使っている方もいるかもしれません。
意味をしっかり理解した上で使いこなせるよう、今回は「ご指導ご鞭撻」について紹介しますので、参考にしてみてくださいね。
「ご指導ご鞭撻」の意味とは?
ここでは「ご指導ご鞭撻」の意味について、読み方とあわせて紹介します。
「鞭撻」の読み方は「べんたつ」
「ご指導ご鞭撻」の「ご鞭撻」の読み方は「べんたつ」です。
その意味については以下で詳しく見ていきましょう。
「指導」や「支援」を求める時に使う
「ご指導ご鞭撻」、と聞いて「指導の意味は分かるけど、鞭撻って何?」と思われる方が多いかもしれません。
別のことに例えると、分かりやすいかもしれません。例えば、スポーツ選手が試合後のインタビューで「皆さん、明日からも応援よろしくお願いします!」と締めくくるシーンを見て、爽やかだな、謙虚だなと感じることはありませんか。
この「応援よろしくお願いします」に相当する言葉が、「ご鞭撻のほどよろしくお願いします」になります。
念のため、辞書で意味を確認しておきましょう。
べんたつ【鞭撻】
(1)むちでうつこと。処罰して戒めること。
(2)いましめはげますこと。督励。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)
以上のことからも、「鞭撻」には「努力するように励ます」といった意味合いがあることが分かります。
つまり、「ご指導ご鞭撻」とは、何かに対する「お導きや指南」と、「声援・支援・応援」の2種類のことを同時に表現した言葉になります。
「ご指導ご鞭撻」の使い方
「ご指導をお願いいたします」と、「ご鞭撻をお願いいたします」は、おのおの単独でも使用できますが、ビジネスでは定型文のようにセットで「ご指導ご鞭撻」と使用されることが多いです。
通常は、手紙やメールの末尾の締めくくりに、「ぜひ、これからも私のことを導いてください。そして応援もよろしくお願いします」という謙虚な気持ちと相手を敬う心を表現するために、「ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします」と用います。
もし「鞭撻」は堅苦しくて使いづらいなと思ったら、「今後ともご指導のほどをよろしくお願いいたします」と、「ご指導」だけを単独で使用しても良いでしょう。
「ご指導ご鞭撻」はどういう場面で使えるの?(例文付き)
さて、「ご指導ご鞭撻」は具体的にビジネスのどんな場面で使えるのか見てみましょう。
なお、メールなどの文面で使用する場合、「ご指導、ご鞭撻」と読点が入っても「ご指導ご鞭撻」と続けても、どちらでも構いません。
前後の文章を見て読点が多ければ「ご指導ご鞭撻」とするなど、バランスを考えて調整してみてください。
入社後、会社全体に向けたあいさつメールで
例文
・不慣れなことが多く、皆さまにはご迷惑をおかけすることもあるかと存じますが、何卒ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
プロジェクト打ち上げ時のスピーチで
例文
・このプロジェクトで多くのことを学ばせていただいて、本当にありがとうございました。今後ともご指導、ご鞭撻を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。
目上の人などに何かを教えてもらった時
例文
・この度は、○○について細かくご教示いただきまして誠にありがとうございました。今後ともご指導ご鞭撻のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
「ご指導ご鞭撻」を使う際の注意点
次に、「ご指導ご鞭撻」を使う際の注意点を紹介します。
「ご指導ご鞭撻」は、具体的な作業について指南や声援をお願いするものではなく、長い目で導き、見守ってほしいというニュアンスでも用います。
そのため、「この予算案についてご覧いただき、コメントや修正箇所がございましたらご指導ご鞭撻をお願いします」のような表現は不適切となります。
この場合は、「コメントや修正箇所がございましたらご教示ください」となります。
また、長期的な関係を見込んで使用される言葉なので、「これまでご指導ご鞭撻ありがとうございました」という言い方はしません。
職場でお世話になった人が異動や退職する際など、これまでのお礼を表現したい場合には、「これまでお導きいただき、ありがとうございました」というような言い方にするのが良いでしょう。
「ご指導ご鞭撻」の類語や言い換え表現は?
ここでは、「ご指導ご鞭撻」に意味の似た表現を紹介します。
シーンに応じて使い分けてみてください。
「ご教示」
「教示」とは、教え示すことです。
主に知識や方法を教えてほしい場面などで使うことができます。
例文
・新しくなった勤怠システムの操作手方法について、ご教示いただきたく存じます。
「ご教示」の意味と使い方は、こちらの記事をチェック。
「ご教授」
「教授」とは、学術・技芸などを教えることです。
専門的な技術や知識の教えを求める場面などで用います。
例文
・貴社の高い生産技術を、ぜひとも弊社にご教授くださいませ。
「ご教示」の意味と使い方は、こちらの記事をチェック。
「ご指南」
「指南」とは、教え示すこと・教え導くこと、という意味です。
ただ教えるだけではなく、正しい方を示す・導くというニュアンスがあるので、何か専門的なスキルや知識などの教えを請う場面で使うことができます。
例文
・ぜひ今度、歌舞伎の楽しみ方についてご指南いただけますと幸いです。
「お導き」
「お導き」は、指導という意味で、「ご指導ご鞭撻」とほぼ同じニュアンスです。
「ご指導ご鞭撻」に比べてやわらかい言い回しで、指導をお願いする場面などで用います。
例文
・未熟者で、はじめは至らぬ点も多いかと思いますが、お導きのほど、どうぞよろしくお願いいたします。
謙虚な気持ちを表現できる便利な言葉
「ご指導ご鞭撻」の意味は理解できましたか?
周囲に対して「教えてください」「見守って応援してください」という気持ちを抱き続けていれば、感謝を伝える際などに、おのずと出てくる表現なのではないでしょうか。
謙虚な気持ちと相手を敬う心を伝えられる便利なフレーズなので、ぜひ仕事の場面でも活用してみてはいかがでしょうか。
(高岡よしみ)
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