生理前の便秘解消対策【おすすめの食べ物・過ごし方・便秘薬】
生理前の便秘解消対策とは? おすすめの食べ物や過ごし方、便秘薬について産婦人科医の窪麻由美先生に伺ってみました。
生理(月経)前にお腹が張って便秘やおならに悩まされる方は多いのではないでしょうか。それは生理前に現れる月経前症候群(PMS)と呼ばれる体の不調の一つかもしれません。
PMSがなぜ起こるのか、その原因は明らかになっていませんが、女性ホルモンが関係しているのではないかと考えられています。
ここではPMSについて紹介するとともに、その症状の一つである便秘について解説します。
生理前にお腹が張る。いつから便秘になる?
生理前に現れる月経前症候群(PMS)と呼ばれる体の不調の一つ、便秘。そもそもPMSとはどういうものでしょうか?
生理前の3~10日間、精神的な症状または身体的な症状が続き、その症状が生理の始まりとともに軽快したり消えたりするものをPMSといいます。
精神的に起こる症状としては、イライラ、抑うつ、不安、眠気、集中力の低下など。身体的に起こる症状としては、頭痛、腰痛、むくみ、お腹の痛み、乳房の張りや痛みなどがあります。そして便秘は身体的な症状の一つとして挙げられます。
3日~10日前に便秘の症状がでる
PMSによる便秘だとすると、生理の始まる3~10日前に現れ、生理が始まるとスーッと解消するケースが多いという点が特徴です。

生理中やその前後のだるさの原因とは一体何なのでしょう。また、だるさを軽減させることはできるのでしょうか?
なぜ? 生理前に便秘になる原因
PMSがなぜ起こるのかその原因はわかっていませんが、女性ホルモンの変動の時期とPMSの現れる時期が重なることから、女性ホルモンと関係しているのではないかと考えられています。
上のイラストにあるように、女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲステロンの2種類があり、生理前に増えるプロゲステロンには、腸の動きを鈍くさせたり(便が腸に長くとどまる)、体に水分を貯めこもうする(便がかたくなる)など、便秘を引き起こしやすくなる作用があります。
PMSによって下痢になることもある
ちなみに、PMSの中には下痢を引き起こす症状もあります。詳しくは下記の記事をチェックしてください。

生理周期に合わせて下痢になってしまう理由とは何なのでしょうか? また、その際に下痢止めなどの薬を飲んでもいいのでしょうか?
生理前の便秘解消対策
便秘には食事や排便の習慣などの生活習慣が関係しています。
朝はバタバタと忙しくトイレに行けなかったり、外出中にトイレへ行くのを我慢したりしていると便意を感じにくくなり便秘になりがちになってしまいます。
朝食を摂る、偏った食生活を改善する、運動不足を解消するなどを心がけ、便秘を解消しましょう。
食生活
1日3食、特に朝食をきちんと食べましょう。食物繊維が多いものが便秘に良いことはよく知られています。
食物繊維は消化されずに小腸を通って大腸まで達する成分で、整腸作用はもちろん、血糖値が上昇するのを抑えたり、血液中のコレステロールの濃度を下げたりします。
「繊維」という言葉から細い糸のようなスジ状のものをイメージしがちですが、ネバネバしたものから、水に溶けてサラサラしたものまでたくさんの種類があります。
日本人の食物繊維の摂取量は不足がちといわれているので、毎日の食事で適量を摂るようにしましょう。ただし、便秘の人が食物繊維をとりすぎると、便秘が悪化することもあるので注意が必要です。
食物繊維の多い食品には、たけのこ、緑黄色野菜、ごぼう、さつまいも、大豆、ひじき、かんぴょう、切干大根などがあります。
また、小麦よりも米やおからを含む豆類を積極的に食事に取り入れることや、腸内環境を良い状態にするためにヨーグルトなどの乳酸菌食品を摂ることが便秘解消に役立つと考えられます。
排便習慣
食事の後は便意を感じやすいので、便秘のある人は食後に意識してトイレに行くとよいでしょう。
個人差はありますが、一般的に朝食後は便がまとまって腸に送られ便意が起こりやすいといわれていますので、朝食を摂ることは大切です。朝食後は時間の余裕をもつようにして、決まった時間にトイレに行くようにするとよいでしょう。
また、便意があるにもかかわらず、忙しいなどの理由で排便を我慢することが習慣になってしまっていると、便意を感じにくくなって便秘になったり便秘が悪化したりします。
運動
ジョギングやサイクリングなど軽く汗をかく程度の運動は、胃や腸などの消化管の働きを良くすると考えられます。
また、排便をするときは腹筋や骨盤内の筋肉などさまざまな筋肉を使います。筋力を高めたり維持したりするために、日ごろから運動して便秘にならないような体づくりをするのもよいでしょう。
お腹のマッサージ
お腹をマッサージすることは、腸を刺激してその働きを良くします。1日に15分程度のマッサージを1週間に5回行うと慢性の便秘に効果があるという報告もあります[*1]。
生理前の便秘薬でおすすめのものは?
便秘を解消するために生活習慣を改善するように努力してはみたものの、一向に良くならず便秘がひどい場合は、整腸薬や便秘薬を服用するのも一つの方法です。
便秘薬には腸の運動を促進するタイプ(刺激性)と便を軟らかくするタイプ(非刺激性)の主に2種類があります。
刺激性のタイプは大腸を刺激し、ぜん動運動(腸が波打つように動く)を高めることで排便を促します。非刺激性のタイプは腸内や便の水分量を増やして排便回数を増やします。
慢性の便秘に対しては刺激性のタイプや、酸化マグネシウムの入った非刺激性のタイプが効果的です。服用する際は、必要な時だけ短期間に限って飲むようにしましょう。
便秘に効果的な漢方もある
便秘に効果のある漢方薬もあります。刺激性のタイプの便秘薬にも入っているダイオウは大黄甘草湯、桂枝加芍薬大黄湯などの漢方薬の成分にもなっています。
イライラを伴う便秘には桃核承気湯、防風通聖散、調胃承気湯が効果的です。
ただし、子宮筋腫や卵巣腫瘍などによる便秘や、消化器系の疾患からくる便秘もあるため、しつこい便秘が続くようであれば医療機関を受診しましょう。
生理前の便秘は女性ホルモンの影響も
生理の始まる1週間くらい前から現れ、生理が始まると症状が消える便秘はPMSによるものかもしれません。
自分の便秘が何日前から始まるかメモするなどして、生理と関係のある便秘なのかを確認することで、対策をとりやすくなります。
生理前の便秘には食事や運動に気を付け、生活習慣を見直すことによって胃腸の働きを改善することが大切です。
それでも便秘がなかなか良くならず、便秘が続くことでおなかが張って苦しくなったり、気持ちが悪くなったり、食欲低下(食欲不振)になることもありますので、ひどくなる前に便秘薬を服用してもよいでしょう。
ただし、病気が原因で起こる便秘もあるので、しつこい便秘が続くようであれば医療機関を受診しましょう。
(文・構成:株式会社ジーエムジェイ、監修:窪麻由美先生)
※画像はイメージです
参考文献
[*1]Lämås K, et al. Effects of abdominal massage in management of constipation–a randomized controlled trial. Int J Nurs Stud. 2009; 46(6): 759-67.
日本消火器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会 編「慢性便秘症診療ガイドライン2017」(南江堂), 2017
「病気がみえる vol.9 婦人科・乳腺外科(第4版)」(メディックメディア), 2018