怒れないは悪い事? 怒れない人の特徴とは
怒りたいのに怒れない。そんな悩みを抱えている女性は案外多いのではないでしょうか。もともとめったに怒りを感じないというタイプならまだしも、心の中ではふつふつとこみ上げる怒りがあるのに、無理やりその怒りを抑え込んでしまっている女性もいるかもしれません。「ここは怒ってよい場面では?」と思うときについ我慢をしてしまうと、いつまで経っても気持ちが晴れませんよね。そんな「怒りたくても怒れない女性」のために、心理カウンセラーの熊谷佐知恵さんが、怒れない人の心理や怒れるようになるためのヒントなどを教えてくれました。
怒れない人の心理と特徴とは
怒れない人の特徴とその心理
怒りを覚えていたとしても怒らない、怒りの感情を感情に任せて表現しないのは、その人の意志や選択による場合も。しかし、「怒ることができない」のは、怒りを覚えたとしてもすぐに抑圧してしまうか、あるいは本来怒ってもよい場面でも怒りの感情を覚えないような場合が考えられます。怒ることのできない人の特徴や心理については、以下のようなケースがあるでしょう。
いつも受身で自分に自信がない
幼少期から親などの身近な人の理不尽な怒りを経験し続けてきた人は、成長過程で必要な自我がうまく育っていないことがあります。自己主張や自由な自己表現が許されない環境に慣れているため、怒りの感情のみならず喜怒哀楽を感じにくい傾向が。「自分がどうしたいのか? 自分でもよくわからない」という悩みを抱えていることもあるかもしれません。
怒りの感情に苦手意識がある
かつて誰かの怒りによって傷ついた経験があると、怒りの感情をトラウマのように感じがち。そのようなタイプは怒りの感情に対し、苦手意識や嫌悪感を抱きやすいのです。人の怒りの感情に苦手意識を感じてしまうとともに、自分が怒りを感じたときに「どう扱ってよいのかわからない」というような悩みを抱えてしまうことも。
怒る気にもなれない
かつては怒りを表現できていたけれど、結果的に嫌な経験をしてしまったという人。このようなタイプは「怒ってもよい結果にはならない」と身をもって学習しています。そのときの失敗や自己嫌悪があり、怒りを覚えるような場面であきらめや躊躇を覚える傾向が強いでしょう。
感受性が強くて優しい
自分の感情は自分でも把握しているものの、怒りの感情が優位になって人を攻撃するようなことはあまりないタイプ。自分が怒りを覚えたとしても、相手の立場や状況にまで気を回してしまうため、相手の気持ちを優先してしまうのです。このタイプは共感力や感情的知性が高く、その後の展開まで洞察してしまう傾向があります。表現しきれなかった感情は、悲しみとして引き受けることが多いかもしれません。
怒れないと損をする? 怒れないデメリット
「怒れないと損をする」という発想は、十分に自我が育ってきている段階とも考えられます。これまで怒れないことにより「耐える、凌ぐ、やり過ごす」ことを繰り返してきた人も、そろそろ新しい自己表現が必要と感じる段階にきたと言えるでしょう。怒りを誰かにぶつけるような表現が必ずしも正解とは限りません。しかし、怒れないことのデメリットを知っておくことは、自分や大切な何かを守るための力を身につけるためにも必要なヒントになるかもしれないのです。
人に振り回されてしまう
耐えるしかない状態というのは、自分の身を守れないということ。怒ることができないと、あなたにとって嫌なことや面倒なことを押し付けられ、したくないことが増えてしまうかもしれません。相手の思うように使われて疲れたり、人に振り回されてストレスが溜まったりしてしまいます。
人との距離ができる
イライラしていても怒らずにいると、怒りはどんどん溜まっていく一方。そんな自分をひたすら隠そうとすると、人との関係に距離を取りたいと感じる場面が増えます。そうなると、ポジティブな意味で人がもたらしてくれるチャンスも逃しやすくなってしまうでしょう。
いつまでも状況は変わらない
怒れないことで「耐える、凌ぐ、やり過ごす」を繰り返しても、その状況を変えていくことはできません。また、あなたが自分から伝えない限り、あなたの気持ちを周囲に気づいてもらうことやあなたのことを正しく理解してもらうことは難しいでしょう。怒りの衝動的なエネルギーに後押しされてあなたの感じている不満や不快な気持ちを伝えることは、このようなデメリットや問題解決の突破口にもなるのです。
怒るべきシーンとは
以下のようなときは怒るべきシーンです。我慢をする必要はないですよ。
自分の尊厳を傷つけられたとき
自分の尊厳を傷つけられたときは、怒ってもよいでしょう。尊厳を否定されるようなことに対しては、「その言い方はやめてください!」「○○したことに対して謝ってください!」などと毅然とした態度で「NO!」が言えるようになるとよいですね。
自分の権利を守るとき
自分の権利を守るために、ときには怒る必要があることも。自分の権利(お金・時間・利益など)が侵害されるようなときは「それは困ります!」としっかり伝えるべきでしょう。
自分の「本気」を伝えるとき
自分の本気度を相手に伝えるときも、怒るべきシーンのひとつ。たとえば、プロジェクトに取り組む際にやる気のない発言や仲間の士気を削ぐような発言をした人に「今の発言は取り消してください!」「ちゃんと協力してください!」と一喝するような場合です。あなたの怒りのエネルギーがその場を引き締めてくれるかもしれません。ただし、ただ怒りをぶつけることを目的にするのではなく、次からどうしてほしいのかもあわせて伝えることを心掛けてみてくださいね。
怒れるようになるには
怒れるようになる方法
大切なのは怒れるようになることを目標にするのではなく、「自分なりの考え」「価値観の基準」を育てること。あなたの中の考えや思いが一貫性を帯びて育ったとき、その怒りのエネルギーは自然と外に向かって表現されていくものです。「自分なりの考え」「価値観の基準」ができることは、他者とのちがいを感じ、自然と摩擦を起こすことにもつながります。人間関係でパワーバランスの差やストレスを感じることが増えれば、ときには理不尽さも感じることもあるでしょう。しかし、だからこそ自己愛や自己主張が形成され、自己表現ができるようになっていくのです。
本当に辛かったり苦しかったりするのは、怒りを表現できない自分をあなた自身が責めたり嫌ったりしているときなのかもしれません。ですから、怒れない自分を責めたり、無理して怒れるようになることを目標にしたりする必要はありません。「自分なりの考え」「価値観の基準」を育てるそれぞれの段階やプロセスの中で、ひとつひとつ経験を重ねていくことで自然に成長できるからです。怒れないことに焦ることなく、自分の思いや考えを育ててみてはいかがでしょうか。
怒れない自分を責めないで
怒りの感情のみならず、自分の感情や意見を表に出すのが苦手な女性は多いかもしれません。ときには何でもズバズバ言える女性を羨ましく思い、理不尽な扱いを受けても怒ることのできない自分を責めてしまうこともあるでしょう。しかし、熊谷さんの解説にあるように、ただ怒ればよいというものではありません。大事なのはその過程。怒るべき場面で怒れるようになるためには、自分の考えや価値観を日頃から育てることが重要のようです。そうして自分の軸が定まれば、「怒りたいのに怒れない」という問題は自然とクリアできるのではないでしょうか。怒れない自分を責めたり、怒ることを目標に走ったりするのではなく、自分の思いや考えを育てる過程を大切にすることで少しずつ成長していきましょう。
(文:熊谷佐知恵、構成:Kaoru Sawa)
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