納豆の美容と健康効果を管理栄養士が解説
納豆は、栄養が豊富な発酵食品として知られていますよね。健康や美容のために食べている女性もいるかもしれませんが、具体的にどんな効果があるのでしょうか。納豆に含まれる栄養や身体に与える影響、効果的な食べ方などについて、管理栄養士の園部裕美さんに教えていただきました。
<目次>
納豆って食べてる?
普段納豆を食べている人は、どれくらいいるのでしょうか。女性のみなさんにアンケート調査してみました。また、「食べている」と答えた人には、体感している効果についても教えてもらいました。(※1)
納豆を食べている人の割合
Q.普段から納豆を食べていますか?
・食べている……52.4%
・食べていない……47.6%
約半数の女性は、普段から意識して納豆を食べているようです。それでは、納豆を食べて感じている効果はあるのでしょうか。
納豆を食べて感じている効果
便秘解消
・「腸の働きがよくなる気がする、便通がよくなった」(22歳/団体・公益法人・官公庁/事務系専門職)
・「便秘解消効果。毎朝納豆を食べるようになってから、お通じがよくなりました」(28歳/団体・公益法人・官公庁/事務系専門職)
納豆を食べることで、腸の働きがよくなって便秘が解消された女性がいるようです。
肌の調子がいい
・「肌がキレイになると感じて納豆を食べている」(28歳/金融・証券/事務系専門職)
・「肌の調子がいい気がする。満腹感がある」(26歳/小売店/販売職・サービス系)
肌の調子がよくなったという女性もいました。肌が好調になるのは、女性にとってうれしい効果ですよね。
ダイエット効果
・「お腹にたまる気がするからちょっとは腹持ちがよくてダイエットにいい」(26歳/生保・損保/営業職)
・「ダイエット効果と美肌効果がある」(31歳/自動車関連/販売職・サービス系)
納豆を食べることで満腹感があり、ダイエット効果があると感じている女性もいるようです。
納豆の種類と栄養成分
納豆を食べている女性は、さまざまな効果を感じているようです。そこで、そもそも納豆とはどんな食品で、どんな栄養があるのかについて、園部さんに聞いてみました。
納豆とは
園部:大豆を納豆菌で細菌発酵させた発酵食品が「納豆」です。納豆には、大きく分けて「糸引き納豆」「五斗納豆」「寺納豆」の3種類があります。
糸引き納豆
日本で一般的に納豆と言われているのは「糸引き納豆」のことで、蒸したりゆでたりした大豆に納豆菌を加えて発酵させたものです。
五斗納豆
糸引き納豆に米麹と塩を加えて発酵させたもので、山形県米沢地方の郷土食です。
寺納豆
中国から伝わったもので、大豆から麹を作り、塩水に漬けて数カ月熟成させてから乾燥させたもの。「塩辛納豆」や「塩納豆」とも呼ばれています。
納豆の種類
園部:納豆は大豆のサイズによって大粒、中粒、小粒、極小粒、超極小粒、ひきわり(丸大豆を割ったもの)に分類されます。今回は代表的な以下の3種類について説明します。
大粒
大粒納豆は食べ応えがあり、粘り気は少なめです。粒が大きいので、大豆そのものを食べているような感じがあります。ご飯にかけるよりも、そのままおかずとして食べるほうがよいでしょう。
小粒
小粒納豆は、大豆を納豆専用に品種改良したものです。ご飯と一緒に食べやすく、粘りが強いのが特徴です。
ひきわり納豆
ひきわり納豆は、発酵してから刻むのではなく、大豆を砕いてから発酵させます。皮がないので発酵スピードが速く、粘り気も最も強いです。ソースや納豆和えなどに使いやすく、離乳食などにも応用できます。
納豆の栄養成分
園部:納豆は1パック40~50gのものが主流ですが、50gの納豆には以下の栄養素が含まれています。
たんぱく質
たんぱく質は約8g含まれています。これは体重50kgの女性が1日に摂りたいたんぱく質量の1/6です。1食分としては少し足りない量なので、卵やしらすなどのほかのたんぱく質食品と組み合わせて食べるとよいでしょう。
ビタミン
ビタミンも豊富に含まれています。特にビタミンK、ビタミンB2、ビタミンB6、葉酸、ビオチンです。ビタミンKには、血を止める、骨を丈夫にする、動脈の石灰化を防止するなどの働きがありますが、納豆はサプリメント並みにビタミンKが豊富です。またビタミンB2は、口内炎や肌荒れに効果的で、脂質の代謝を助けてくれます。
ミネラル
カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などが含まれています。食物繊維も豊富で、なんと納豆1パック(50g)中に3.4g=にんじん2.5本分も含まれています。
そのほかの有効成分
そのほかに、大豆レシチン、大豆サポニン、大豆イソフラボン、ナットウキナーゼ、ポリアミンなど有効成分も含まれています。
納豆キナーゼとは
園部:納豆に含まれる有効成分で「ナットウキナーゼ」というものが有名ですが、これは納豆菌が作り出すたんぱく質を分解する酵素のひとつで、納豆のネバネバ成分に含まれています。ナットウキナーゼには、血管にできる血栓を溶かしやすくする働きがあります。
ちなみに、ナットウキナーゼは熱に弱いという性質を持つため、ナットウキナーゼを目的として摂取する場合は、加熱せずに食べるようにしましょう。
納豆の効果と食べ方
納豆にはビタミンやミネラルのほかに、食物繊維などが豊富に含まれていることがわかりました。それでは、納豆を食べることでどんな健康効果や美容効果が得られるのでしょうか。園部さんに解説していただきました。
納豆の健康効果
園部:納豆にはさまざまな健康効果があります。以下に代表的なものをピックアップしました。
骨粗しょう症予防
納豆に含まれるビタミンKは、骨粗しょう症予防に効果的です。実際に、ビタミンK2を含む納豆は、カルシウムが骨になるのを助ける「骨形成たんぱく質」の働きを高める機能を持つことが、特定保健用食品の審査で認められています。
細胞の老化抑制
また納豆には、炎症を防いで細胞の老化を抑制する「ポリアミン」が豊富に含まれています。ポリアミンは、発酵食品やしいたけなどに多く含まれる成分です。2016年に東京工業大学の大隅良典栄誉教授がノーベル賞を受賞した「オートファジー」(身体の細胞が自己分解をして、がんや感染などから守る働き)とも関係していて、このオートファジーを促す方法のひとつとして納豆のポリアミンの摂取が挙がっているのです。(※2)(※3)
便秘予防
食物繊維と発酵の力(乳酸菌、納豆菌)で、腸内環境を正常化し、便秘予防効果が期待できます。ビタミンB2やB6などが代謝をスムーズにしてくれるので、肌荒れや髪のケアにも役立つでしょう。
納豆の健康効果まとめ
・骨の健康を高める
・前立腺がん予防、男性の更年期障害の緩和
・アンチエイジング
・ストレスに強い体づくり
・体内時計の乱れを修正
・便秘予防
・肌荒れ
・むくみ予防
・貧血予防
納豆の美容効果
園部:納豆の美容効果としては、食物繊維や発酵食品、ビタミンが豊富に含まれることから、美肌や美髪効果が期待できるでしょう。カリウムも多く含むので、足や顔のむくみ解消にも効果的です。
納豆の食べ方
園部:納豆に含まれる大豆イソフラボンの過剰摂取を防ぐため、1日2~3パックを限度にして食べるとよいでしょう。ナットウキナーゼは熱に弱いので、ナットウキナーゼの効果を期待するなら加熱しないほうがいいですが、ほかの栄養成分は加熱しても変化しません。
また、納豆は冷凍保存できます。冷凍することで納豆菌の活動が休止します。冷凍しても品質に変化はないという報告がありますが、パックのまま長期間冷凍すると、水分が飛んだり冷凍臭がついてしまうので、長くても2週間程度にしておきましょう。解凍する際は自然解凍で大丈夫です。
かき混ぜる回数に関しては、多く混ぜたほうが粘度は増しますが、だからといって成分的にうま味が増したり、栄養素が変わるということはありません。(※4)
納豆の副作用と注意点
納豆には健康や美容に効果的な成分がたくさん含まれていましたが、食べすぎてしまうとどうなるのでしょうか。納豆の副作用と注意点について解説します。
納豆の副作用
園部:納豆に含まれる栄養素に関しては、とんでもない数を食べない限り過剰になってしまうことはありません。ただし、納豆に含まれる大豆イソフラボンを摂りすぎてしまうと、更年期障害のような症状をはじめ、子宮内膜症や乳がんの発症、再発リスクを高める可能性があります。
食品安全委員会では、食品に含まれるイソフラボンの1日の安全な摂取量を70~75mgを上限としています。その上で、食品以外の特定保健用食品(サプリメントなど)から摂るイソフラボン量の上限を30mgとしています。納豆1パック(50g)には、イソフラボンが35~40mg含まれるので、1日3パック以上を食べ続けるのは避けましょう。
納豆を食べるときの注意点
園部:血液凝固薬であるワーファリン(ワルファリン)を服用している方は、納豆のビタミンKによって薬の効きに影響を与えることがあるので禁忌です。必ず医師に確認するようにして下さい。
まとめ
栄養が豊富で、日本の伝統食品である納豆は、日本人の体質に合った食材のひとつだと言えます。商品によって大豆の種類や納豆菌の種類などが違うので、いろいろな種類の納豆を食べ比べてみるのもよいでしょう。ぜひ、毎日の食卓に納豆を取り入れてみてくださいね。
(取材協力:園部裕美、文:ファナティック)
※画像はイメージです
(※1)マイナビウーマン調べ
調査日時:2017年5月2日~5月8日
調査人数:309人(22歳~34歳の女性)
(※2)
Front Plant Sci. 2015 Oct 13;6:827.
(※3)
Cell Metab. 2015 Nov 3;22(5):874-885.
(※4)
『納豆の保存中における成分変化』竹村真由美 福岡女子短大紀要 (72), 9-17, 2009-01)
※画像はイメージです
※この記事は 総合医学情報誌「MMJ(The Mainichi Medical Journal)」編集部による内容チェックに基づき、マイナビウーマン編集部が加筆・修正などのうえ、掲載しました(2018.08.17)
※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください