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女性に増加する低温やけど。背景に湯たんぽブームとスマホ

住吉孝二

スマートフォン(スマホ)の充電中にやけどをしたという相談が急増しているとして、国民生活センターはスマホを長時間、肌に密着させないよう、呼びかけています。同センターによると、スマホの発熱や、充電端子が焼けたことに関する相談は2012年度には過去最多の523件の苦情が寄せられているそうです。そもそも、低温やけどとはどのようなものなのか、皮膚疾患の専門医の住吉孝二先生に聞きました。

■ふつうのやけどと「低温やけど」、どうちがう?

低温やけどは、ふつうのやけどとはちがうのでしょうか?

「やけどというと、熱湯や火など高温の熱によって起こると思いがちです。でも、45度前後の心地よいあたたかさでも、長時間熱源が触れていると皮膚に深いダメージを与えることがあります。これが<低温やけど>と呼ばれる症状です。通常のやけどは表面のダメージで症状がわかりますが、低温やけどの場合は初期症状だけでは重症度が判断できません。あまり痛みを感じなくても、内部の細胞組織の一部がダメージを受けていることもあります。また治るまで時間がかかる上、やけどのあとが残ってしまうケースも少なくないんです」(住吉先生)

湯たんぽや使い捨てカイロによる低温やけども、数年前から報告件数が増加しています。報告の収集・分析を行っている製品評価技術基盤機構によると、低温やけどが増えた背景には、湯たんぽブームにともなう出荷個数の増加があり、原因別内訳でもトップだそう。また、低温やけどは11月~3月に多く、発症までの時間は一般的に44度で3~4時間以上、46度で30分~1時間、50度では2~3分程度と考えられているとか。

低温やけど

「湯たんぽによる低温やけどで受診する若い人が増えはじめたのは4~5年前です。とくに若い女性に多いのは、すねや足の甲などの低温やけど。皮膚のすぐ下に骨があるような場所は、湯たんぽなどを押しつけられると血流が悪くなり、熱のダメージを受けやすくなります。また、疲れていたり、お酒を飲んでいたりするときも要注意。普段より感覚が鈍くなり、熱さに気づきにくくなるので気をつけて」(住吉先生)

■湯たんぽは寝る前に布団から出して

どうすれば、低温やけどを防げるのでしょうか。

「<体温より高温のもの>を長時間、直接肌に密着させないことが最大のポイントです。貼るタイプの使い捨てカイロは必ず衣類の上から貼り、就寝時の使用は避けましょう。湯たんぽやあんか、電気あんかで布団をあたためる場合は、早めに布団に入れ、寝る前には布団から出すようにしましょう」(住吉先生)

わかりきったことだと決めつけず、取り扱い説明書や「使用上の注意」に目を通すことも大切です。たとえば、靴用・靴下用カイロは腰に貼るカイロなどとは異なる商品。靴の中以外で使うなどすると、腰に貼るカイロなどよりも温度が高くなることがあり、やけどをする可能性があると、東京都消費生活総合センターが注意を促しています。また、スマートフォンやパソコンのように本来、暖房グッズではないけれど、充電中などに発熱をともなうものもあります。

「『気づいたら水ぶくれができていた』『肌が赤くなっている』といった場合は、なるべく早く皮膚科を受診しましょう。うちの病院にもご本人は低温やけどだと気づかないまま、来院される方がたくさんいらっしゃいます。“赤くヒリヒリする程度だから大丈夫”といった自己判断は禁物。おかしいなと感じたら、できるだけ早めに皮膚科を受診し、適切な処置を行うことをおすすめします」(住吉先生)

(取材協力:住吉孝二、文:齋藤純子+ガールズ健康ラボ)

※画像はイメージです

※この記事は 総合医学情報誌「MMJ(The Mainichi Medical Journal)」編集部による内容チェックに基づき、マイナビウーマン編集部が加筆・修正などのうえ、掲載しました(2018.07.05)

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください

※この記事は2014年03月03日に公開されたものです

住吉孝二

住吉皮膚科院長。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。順天堂大学皮膚科准教授(非常勤)、墨田区医師会立看護専門学校講師(非常勤)。皮膚疾患の専門医として、メディアなどでも活躍。
http://www.sumiyoshi-clinic.com/index.html

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